DXの本質へさらに一歩踏み出すなら欠かせないコンテナ活用 将来を見据えて企業がとるべき選択肢とは日本IBM×日本マイクロソフトのタッグが支援

企業のIT環境のクラウド志向は加速しているものの、マルチクラウド化やオンプレ回帰など、取れる選択肢が増え続けている。クラウド化のメリットを最大限に発揮するためにはどうすべきなのだろうか。顧客のクラウドネイティブ化を支援している日本IBMの佐藤卓由氏と日本マイクロソフトの藤井仁志氏が対談した。

» 2023年04月18日 10時00分 公開
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 企業のクラウド化は進んでいるものの、マルチクラウド化やオンプレ回帰もあり、複雑さが高まっている。またクラウド化はできたもののIaaSにリフトしただけで、クラウドネイティブ化へのシフトは道半ばのところも多い。よりクラウドのメリットを生かし、中長期的な視野で考えるとコンテナ化は不可避だ。そうした中、日本IBMと日本マイクロソフトが「Red Hat OpenShift」(以下、OpenShift)を通じて顧客のクラウドネイティブ化を支援している。背景にはどのような考えがあるのか。取り組みをリードする両者に話を聞いた。

リフト止まりにオンプレ回帰、どこもクラウドネイティブ化で模索している

――現状のクラウド活用状況について、どうご覧になっていますか

日本IBM 佐藤氏 日本IBMが関わる案件ですと大規模組織におけるモダナイゼーションがニーズとして大きいです。レガシーなシステムをお持ちの場合、完全に新規で作り替えたり、一部マイグレーションしたりと、さまざまなバリエーションがあります。お客さまはモダナイゼーションを通じてビジネスを変革したい、アジリティを実現したいという要望をお持ちです。そのためクラウドネイティブ技術の採用が注目されています。

日本IBMの佐藤卓由氏(IBMコンサルティング事業本部 ハイブリッド・クラウド・サービス事業部 OpenShift & Middleware パートナー)

――クラウドサービスを提供している日本マイクロソフトとしてはどうご覧になりますか

日本マイクロソフト 藤井氏 市場全体を見ると、現在では約7割のお客さまが何らかの形でクラウドを使っています。クラウド活用は伸びていますが、今後の経済など不透明な要素を考えるとスローダウンも見えてきています。興味深いのは、最近、「Microsoft Azure」(以下、Azure)の競合となるのがクラウドサービスではなく、オンプレミスのソリューションであるケースを目にすることです。大きな移行案件などになると、お客さまがリスクを考慮した結果、オンプレミスも選択肢として挙がってくるためです。

 Azureに焦点を当てると大きく成長しているのが製造業です。コスト削減という文脈だけではなく、今後データ駆動型マネジメントに進むにはIoTのデータも一元的に扱えるようデータ集積や分析基盤をオンプレミスよりクラウドに置くほうが有利です。さらに、日本の製造業が今後プロダクトをサービス化し、グローバル展開することも見越して競争力を高めていくためにもクラウドネイティブ技術の活用による俊敏性の強化が必要だと考えています。

――企業がクラウド活用やアプリケーション開発で抱えている課題にはどのようなものがありますか? また、コンテナやAPIの利用についてはどうでしょうか。「DX白書 2023」によると、日本におけるマイクロサービスやAPIの活用は米国の3分の1程度のようです

日本IBM 佐藤氏 従来のアプリケーション開発はベンダー任せが多く、使用する技術も「どれでもいいです」というスタンスのお客さまが多く見られました。しかしクラウドを活用してコスト削減したいとなると、自分たちでグリップする領域が増えていきます。こうした要望に対して、日本IBMとしては可搬性が高いコンテナを活用してほしいと考えています。ただし、ここで課題となるのが人材です。

 事業会社の従業員がいきなりクラウドネイティブ技術を使いこなせるかというと難しく、限界があります。使いこなしで苦労するお客さまのために、日本IBMでは人的な支援をしています。また、「デジタルサービス・プラットフォーム」(DSP)としてCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を実現するためのソリューションをメニュー化して提供しています。

日本マイクロソフト 藤井氏 確かに、新しいシステムをコンテナやクラウドネイティブで作ろうという機運や事例はあります。A/Bテストしやすいなど使い勝手がいいですし、アジリティを高めるためにも有効です。ただ、クラウドネイティブが企業インフラで主流になるかというと、まだチャレンジの克服が必要です。人材はもちろん、大規模環境での運用、安定したシステムの構築方法などのノウハウ蓄積が必要です。

人材不足に阻まれつつも、新しい流れに乗るにはコンテナは1つの解となる

――これまでのお話をお伺いするとクラウドとオンプレを併用し、適材適所でクラウドネイティブ技術を含めて利用する企業が多いかと思います。ただ、それでは管理が複雑になるのではないでしょうか

日本IBM 佐藤氏 そう思います。少し前まではメインはオンプレミスで、部分的にクラウドを追加するケースが多くみられました。既存の運用監視の枠組みにクラウドを追加したいので「(既存の運用基盤に)とにかくつなげてください」とする要望が多かったです。そこから徐々にクラウドの割合が増えてきて、時にはオンプレ回帰もあり、監視をいかに統合するかが課題になってきています。

 マルチクラウドやハイブリッドクラウドが混在する現状では、運用監視の完全な解はまだありません。多くの企業が模索しているのではないでしょうか。1つの限定的な解として挙げられるのは、アプリケーションのインフラをコンテナで共通化していくことです。

クラウドネイティブを構成する要素(提供:日本IBM)

――藤井さんは現状のクラウド活用の課題についてどうご覧になりますか?

日本マイクロソフトの藤井仁志氏(クラウドソリューション事業本部 インテリジェントクラウド統括本部 統括本部長 業務執行役員)

日本マイクロソフト 藤井氏 人材不足は重大な課題です。従業員が新しい技術を習得できるようにするには、スキルアップやリスキリングのための時間を確保することが前提となります。そのためには今の仕事を効率化し、時間の余力を生み出すことが大事です。マイクロソフトでは「Do more with less」を提唱していますが、より少ない労力でより多くのことを成し遂げられるように生産性を高めていくためのさまざまなソリューションを提案させていただいています。

 単純にIaaSへリフトしただけだと運用の仕事はあまり減りません。もう一段踏み込んでPaaSを活用する。あるいは業務を見直し簡素にすることで、何らかのSaaSがぴたりとはまるかもしれません。将来的に不要としたい業務なら過度に工数をかけないという選択もありです。大事なのは、システム環境全体のポートフォリオの現状を踏まえつつその将来をお客さまと議論しながら、より効率的なシステムへと作り替えることです。

 マイクロソフトでは新しい技術取得に役立つ「エンタープライズ スキル イニシアチブ」(ESI)プログラムも提供しています。広範にカバーしていますので、人材のスキルアップにご活用していただきたいです。

 また、オンプレとクラウドが混在する中、セキュリティも含めて全体ガバナンスの効率をいかに高めるかも重要な課題です。最初から3〜5年後を見越してデザインし、段階的に進めていく必要があります。短期的に見ればIaaSが安くて、現行維持の観点では安全と思えるかもしれませんが、3年先を考えたら可搬性があるコンテナの方がメリットあるかもしれません。目先だけ考えるとテクノロジーの可能性を狭めてしまいます。

――クラウドがサイロ化して管理が複雑になる中、コンテナ活用が1つの活路として見いだされています。とはいえKubernetesをローカルで運用するのは難しい。そこでOpenShiftが注目されています。概要と利点を教えてください

日本IBM 佐藤氏 OpenShiftはエンタープライズ対応のKubernetesコンテナ・プラットフォームで、オンプレミスでは高いシェアがあります。提供しているRed Hatがオープンソースソフトウェア(OSS)に強いこともあり、品質がよく、CI/CDや運用機能など多くをインテグレートでき、広く使われています。一般的に複数のOSSを組み合わせるとバージョンが混在して管理が難しくなります。一方、OpenShiftだと1つのパッケージなのでそのまま使えますし、縛りが弱く、かつ包括的でサポートもあるのがメリットです。

 このOpenShiftをMicrosoft Azureのクラウドでも使えるのが「Microsoft Azure Red Hat OpenShift」(ARO)です。OpenShiftが持つオンプレミスの強さをクラウドでも使えるのが特長で、特にカスタムアプリケーション領域で効果を発揮します。

OpenShiftで提供される各種サービス(提供:日本IBM)

コンテナ・プラットフォームでデファクトとなるOpenShiftをAzureで

――AROを活用して企業はどのようにコンテナ化を進めていけますか?

日本マイクロソフト 藤井氏 企業ではまず、コンテナ化する段階があり、次にコンテナを大規模展開できるように整備するという段階があります。クラウドネイティブが当然の業界ではコンテナ化の段階へ進んでいますが、それをスケールさせて企業全体の基盤とする2段階目は多くの企業では、これからの段階です。

 大規模展開ではKubernetesが選択肢となりますが、Kubernetesの自社管理は難しい場合が多く、それを回避するにはフルマネージドサービスの利用がお勧めです。AROはRed Hatとマイクロソフトの両社で統合されたサポートエクスペリエンスと、共同設計、運用、サポート体制を提供します。オンプレミスも含めOpenShiftをお使いのお客さまがこれまで培ったコンテナのノウハウをAzure上でPaaSとしてお使いいただけます。自社の環境や要望に応じて、オンプレミスもAzureも選べるなど多くの選択肢を提供できます。

――企業はAROを使うことでどのようなメリットを享受できますか

日本マイクロソフト 藤井氏 ITは人の仕事をコードで置き換え、コンピュータで処理するものです。これまでは一度作れば長く使えましたが、変化が激しい今ではビジネスプロセスもどんどん変化させていかなくてはなりません。アーキテクチャを変えずに現在の資産をクラウドに移行するだけですと、コスト削減文脈では正しいアプローチと思いますが、アジリティを高めるという文脈ではそれだけでは不十分です。

 そのため、アジリティを高めるために、将来を見越した技術選択としてコンテナを活用するという決断が出てきて然(しか)るべきです。できないなら変化を恐れていることでもあり、変化をしないリスクも生まれてきます。コンテナの良さにはリソースの効率的な運用、セキュリティ、ガバナンスがあり、Kubernetesだとより大規模にこれらの管理が可能となります。特にAROは組織として共通のクラスタ基盤を用意し、その上に利用組織ごとにテナントを払い出して利用する場合に、リソース効率や管理効率が高いサービスとなります。

――AROはどのような企業で使われているのでしょうか

日本IBM 佐藤氏 大手総合化学メーカーさまが自社の人材育成やDXをする中で、AROを採用いただいて日本IBMが支援したことがあります。日本IBMがアジャイル開発から支援しており、本番環境に展開する時に、将来拡張できるプラットフォームとしてAROが選択されました。

――IBMとマイクロソフトが組むことで互いにどんなメリットがありますか?

日本IBM 佐藤氏 お客さまのIT資産には10〜20年前に作られ、地道に成長を続けているものも多くあります。そうしたものをモダナイゼーションするのはとても大事で、日本IBMが強く支援しているところです。お客さまにとって日本マイクロソフトのWindowsやMicrosoft Officeはなじみがあり、そのブランド力でAzure利用も広がっています。お客さまのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく上で、マイクロソフトと直接組むことで、モダナイゼーションやマイグレーションを有利に進めていけると思っています。

日本マイクロソフト 藤井氏 これまでITは基幹系と情報系を分けて考えがちでしたが、これからのDXは全社で取り組んでいかなくてはなりません。そこをつなぐ日本マイクロソフトの考え方として、「デジタル フィードバック ループ」があり、データを軸にしながら、それらをつなぐソリューションとして「Microsoft Power Apps」も登場し、全社をつなぐ体制がそろったと思っています。今後はデータを業務にとけこませるため、クラウドの要素技術をどう組み合わせていくかが鍵になると考えています。その際、幅広い業務のナレッジをお持ちで、戦略、業務、テクノロジーの全方位でコンサルティングサービスも提供されている日本IBMとご一緒することで、お客さまにより多くの価値を提供できると考えています。

デジタル フィードバック ループの概念図(提供:日本マイクロソフト)

――最後にクラウド活用を考える経営者やシステム担当者に向けてメッセージをお願いします

日本マイクロソフト 藤井氏 日本の競争力を高めるためにはデジタル化からDXへ、より本質的には業務を刷新するところまで踏み込んでいく必要があります。私たちの表現なら「Do more with less」、より少ないリソースで多くのことを成し遂げていくようにモメンタム(方向性、勢い)をつけていかなくてはなりません。現状デジタル化やコスト削減で足踏みしているお客さまと一緒にチャレンジしていきたいと思います。

 具体的に、さらにもう一歩進めていくためにアジャイルやDevSecOpsのような考え方や、コンテナのような新しいプラットフォームが必要となります。技術やノウハウは蓄積が進んでいますし、海外を含めて事例は出てきていますので、日本のITに関わる皆さまには次の一歩を踏み出していただきたいです。

日本IBM 佐藤氏 日本企業は現場主義が強いところがあり、現場で部分的な最適化がなされたり、現場で細かい要件が出たりして動きが鈍ることもあります。欧米がトップダウンでスピーディーに進めて行けるのを見ると、ITの進展はトップのディレクションや実行力が問われてくるのではないでしょうか。とはいえ、今までのスタイルや慣習もあるかと思いますので、弊社や日本マイクロソフトにご相談ください。お客さまにおけるDXや変革とはどういうものか、どのように進めていけるか、一緒に考えさせていただければと考えています。

Microsoft、Microsoft Azureは、Microsoft Corporationの米国およびその他の国における商標です。
IBM、IBM ロゴ、ibm.comは、世界の多くの国で登録されたInternational Business Machines Corp.の商標です。他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点でのIBMの商標リストについては、http://www.ibm.com/legal/copytrade.shtml(US)をご覧ください。
Red HatおよびOpenShiftは、米国およびその他の国におけるRed Hat社またはその関連会社の商標または登録商標です。

Java on Azure Day 2023
〜OpenAIなど最新技術でここまでできる!Java開発/運用の今と未来〜

リンク:https://aka.ms/joad2023/ibm

開催日:2023年4月26日

主催:日本マイクロソフト株式会社

世界はデジタルスペースへ、かつてないほど速く移行しています。一方で、DXを推進する人材や時間は不足しており、”Do more with less”、より少ないリソースでより多くを実現させることが重要です。本イベントでは、昨今、特に勢いを増す「Java on Azure」をテーマに、今押さえておくべきさまざまなサービスや最新の開発手法についてデモンストレーションを交えながらご紹介するとともに、ユーザー企業やパートナー企業の導入・活用事例を通して、Javaのクラウド活用方法を包括的に学ぶことができます。また、最近話題となっているGitHub CopilotやChatGPTを用いた開発生産性の向上を含めて、AIを活用したJava開発者のさまざまな可能性についてもご紹介します。

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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社、日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年4月29日

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