クラウド、DX時代におけるIT運用管理には何が求められるのか。そのヒントを与えてくれるイベント「Hinemos Solution Seminar 2023」が開催された。イベントの内容はオンデマンドで配信中だ。
クラウド活用やDXの取り組みが進む中、IT運用管理の在り方も大きく変わりつつある。IT運用管理といえば、従来は「完成したシステムをいかに安定的にトラブルなく運用するか」が重要だった。システムの可用性を高め、トラブルの芽を素早く見つけ、もし復旧が必要な事態になった場合は、速やかに障害対応に当たる。そういった動きが運用担当者には求められた。
しかし、クラウド活用や「DX」(デジタルトランスフォーメーション)推進などが注目される「クラウド、DX時代」において、運用担当者に求められる役割は拡大している。IT運用管理のノウハウを基にした事業運営の支援はもちろん、既存のITシステムの運用管理にかかるコストを削減し、新たな技術への投資の原資にすること、運用で得られた知見やデータを活用した新たなビジネス価値を創出することなども含まれる。
では、クラウド、DX時代のIT運用管理において欠かせないものとは何なのか。そのヒントを与えてくれるのが「Hinemos Solution Seminar 2023」だ。
現在のITシステムは、オンプレミスやクラウド、仮想化といったように、さまざまな要素が組み合わさった複雑な環境で構成されているが、「Hinemos」はそれらの複合環境をまるで1つのコンピュータのように運用管理できるソフトウェアだ。
本イベントではHinemosの役割と、「クラウド、DX時代のIT運用管理」をテーマに、さまざまな機能やサービス、事例が紹介された。
本稿ではこのイベントの見どころを、ダイジェストで紹介する。
Hinemosとはどのような製品で、ユーザーにどのようなメリットをもたらすものなのか。NTTデータ先端技術の澤井 健氏(ソフトウェアソリューション事業本部 デジタルソリューション事業部)は、講演「詳細解説!Hinemosの全体像」にてその概要を説明している。
統合運用管理ソフトウェアであるHinemosはOSS(オープンソースソフトウェア)だ。開発元はNTTデータ先端技術。Ver.1.0がリリースされたのは2005年8月で、その後、継続的にバージョンアップを続けている。最新版であるVer.7.0(2022年3月リリース)では、累計ダウンロード数は90万を超えており、既に1000を超えるシステムで利用されているという。
澤井氏は、Hinemosの特徴として「全機能ワンパッケージ」「日本製 & グローバル対応」「オペレーター向けの簡単な操作感」「仮想化、クラウド対応」の4つを挙げる。
「運用管理市場は『単機能ツール』で提供される製品が多いのですが、Hinemosは統合運用管理に必要な機能をワンパッケージで提供します。ワンパッケージですのでライセンス費用、機能間連携などに関する懸念も払拭(ふっしょく)できます。日本製ですので日本語表示、日本語によるサポートは当然として、海外展開に向けた英語表示や英語のサポートも完備しています。また、Hinemosはオペレーターが運用、操作することを前提に設計されています。海外製品の中には操作難易度が高く、運用を維持することが困難なものもありますが、Hinemosであれば作り込みをしなくても、GUIで直感的に操作可能です。加えて、機能やライセンス費用ともにクラウドに対応しています」
Hinemosを導入する効果は3つある。「システム管理の統合」「運用自動化、効率化」「運用コスト削減」だ。
「ハイブリッドクラウド環境におけるITシステムの全レイヤーを一元管理できます。また、ジョブ、ワークフロー管理とAIを組み合わせることでさまざまな運用業務を自動化でき、『予防保守』も実現可能です。ある調査では『IT関連コストの45%が運用管理コスト』という話もありますが、サブスクリプションとして安価に利用できるHinemosを使い、運用を定型化、自動化することで、そのコストを大幅に削減できます」(澤井氏)
クラウド、DX時代において欠かせない「クラウド管理」「ミッションクリティカル」「インシデントダッシュボード」「メッセージフィルタ」「セキュリティオプション」などの機能も見逃せない。澤井氏は各機能の詳細を説明しつつ、「クラウドの特徴を生かしつつ、オンプレミス同様の運用を可能にします。自動化やアラート、セキュリティ対応など、新しいニーズや要求に対応できる機能を提供できるように進化を遂げています」と述べている。
Hinemosが提供する多彩な機能の中でも、中核的な機能となるのがジョブ管理だ。NTTデータ先端技術の近松綾乃氏(ソフトウェアソリューション事業本部 デジタルソリューション事業部)は「Hinemosに移行してみませんか?〜多彩なジョブ管理の機能と製品移行サービスをご紹介〜」と題して、Hinemosのジョブ機能と、他運用管理製品からの移行サービスについて解説している。
ITシステムを効率良く管理するためには「自社のシステムに適した運用管理製品かどうか」が重要だ。システム規模が大きくなったり、特性の異なるシステムが追加されたりした場合、運用管理に必要な機能は変化する。ときには、新しい製品に乗り換える必要もあるだろう。
近松氏は「運用管理製品の見直しは計画的なもの以外にも、さまざまなタイミングで必要になります。製品の見直しで製品移行を検討する際は、よくある4つの課題『ライセンス体系』『技術要件』『運用要件』『移行コスト』を検討することが重要です」と指摘している。
「『製品のライセンス費用が高額で運用費用削減が図れない』『動的で柔軟な構成変更ができない』といった課題が生まれることがあります。また『ジョブ管理要件まで満たせる製品の選択肢がない』『クラウド環境上で動作要件や冗長化要件を満たせる製品がない』といったことも多いようです。さらに、利用するツールが増えることで運用管理を一元化できず、問題発生時のオペレーションや対応作業が複雑化してしまうという課題もあります。また、既に存在するジョブ定義の資産が活用できないと、ジョブの再開発コストがかかること、既存踏襲を踏まえた運用移行設計とそれを扱う運用者の育成が難しいことを考慮することも重要です」(近松氏)
こうした4つの課題を解消するのが、Hinemosだ。例えば、ライセンス料は定額でCPUコア数に依存しない。そのため、リソースを変更しても費用に影響しない。製品導入後に配置設計を変更したとしても、安心してスケールアップやスケールアウトができる。
「Hinemosは、管理対象数、ジョブ数、CPUコア数の変更でも費用は定額です。ジョブ管理はクラウド環境に対応しており、可用性構成も組めます。運用要件についても、ワンパッケージで提供し、シンプルな運用管理を実現します。さらに、移行サービスにより、ジョブ定義と運用オペレーションの移行を、低コストで実現します」(近松氏)
クラウド、DX時代に求められるIT運用管理で特に重要なのが、サービスを利用するユーザーの体験だ。システム面から見ると「ITサービスマネジメントの在り方をどう変えていくか」がポイントになる。
NTTデータ先端技術の壁谷 奈津紀氏(ソフトウェアソリューション事業本部 デジタルソリューション事業部 )の講演「ITサービスマネジメントとは――イベント管理・インシデント管理をHinemosで始めよう」では、Hinemosを使ったイベント管理、インシデント管理の詳細を解説している。
壁谷氏はITサービスマネジメントを「ITサービス(価値)を提供し続ける、絶えず改善し続ける営み」と表現する。「だからこそ、ベストプラクティスである『ITIL』を活用しながら、できること、必要なことから始めていくことがポイントだ」と指摘している。
「日々起こるトラブル、クレーム、問い合わせの対応は、ユーザー体験に直結します。インシデントはサービスの中断、品質低下と同義であり、将来的に引き起こす可能性のあるものも含めて管理することが重要です。それに向けて、まずはイベントとインシデントの管理から、日々のトラブルを整理することを勧めます」(壁谷氏)
ここでいうイベント管理とは、全ての事象をモニタリングし、通常運用を監視、異常を検知する取り組みのこと。インシデント管理は可能な限り迅速復旧し、ユーザー影響を最小限にする取り組みのことだ。
「運用で何とかカバーしようとすると、途中で頓挫したり形骸化したりする可能性があります。現場に合った、無理なく続けられる仕組みが必要です。Hinemosは、サブスクリプションで提供するソフトウェアを組み合わせて、ITサービスマネジメントを実現します。イベント管理からインシデント管理までを完結させることができます」(壁谷氏)
利用するのは「Hinemosメッセージフィルタ」「Hinemosインシデントダッシュボード」の機能だ。メッセージフィルタで対応すべき本質的なイベントを抽出し、インシデントダッシュボードで「記録」と「共有」をおこない迅速復旧するという流れだ。
「インシデントの起票から調査、対応、クローズまでの管理を軽量かつ使い慣れた『Excelライク』なUI(User Interface)で実現できます。記録と共有をスムーズに実現し、組織的なインシデント管理をサポートします」(壁谷氏)
壁谷氏はこれ以外にも、Hinemosをクラウドプラットフォーム「ServiceNow」と連携させ、ITサービス運用において重要な構成管理データベース(CMDB)の集約を中心に、ワークフロー、インシデント管理ができるサービスも紹介している。
本稿で紹介した講演はほんの一部だ。他にも、注目セッションがめじろ押しとなっており、キーノートでは、基幹システムを刷新した東京海上日動ファシリティーズの事例を、インフォテックの三浦大典氏(インフラソリューショングループ マネージャー)が紹介している。
その他、「Hinemosサブスクリプションのススメ」「HinemosとAPMでIT運用DX」「新メニュー!Hinemos セキュリティオプション」「AWSにおけるHinemosミッションクリティカル機能の動作解説」「AIOpsで運用効率化の実現を!」といったテーマの講演もある。
それぞれの講演タイトルにもあるように「APM」(Application Performance Management)連携、セキュリティ、「Amazon Web Services」をはじめとするパブリッククラウドとの連携、「AIOps」(Artificial Intelligence for IT Operations)など、クラウド、DX時代には、新しいIT運用管理が求められている。
イベントのオンデマンド配信を視聴することで、運用管理製品の見直しはもちろん、提供される機能をフル活用するコツやビジネスに貢献できるヒントがつかめるはずだ。DXをどこから推進すべきかに悩んでいる人はこの機会を、抱えている課題の解決に役立ててほしい。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年5月26日