企業向けLinuxとして幅広く採用されている「CentOS Linux」(CentOS)。現在サポートされている「CentOS Linux 7」のサポートが2024年6月30日に終了(EOL)するため、CentOSを使い続けるか移行先はどうするかと頭を悩ませている担当者も多いだろう。そんな中、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)互換のOSである「AlmaLinux」と「MIRACLE LINUX」の合流が注目を集めている。
コミュニティーベースで開発されているAlmaLinuxとサイバートラストが提供するMIRACLE LINUXの合流はユーザーにどんなメリットをもたらすのか。
サイバートラストの合流でAlmaLinuxがどう変わるのか。ポイントは3つある。
1つ目は、MIRACLE LINUXを20年以上提供してきたサイバートラストの知見がAlmaLinuxに還元されることだ。日本のAlmaLinuxユーザーの声はサイバートラストを通じて、ボードメンバーレベルで共有される。すると「日本の商習慣にあった機能を追加してほしい、改善してほしい」といった声がAlmaLinuxに届きやすくなる。
2つ目は、AlmaLinux独自のツールやプロジェクトの成果物が利用しやすくなることだ。CentOSからの移行ツール「ELevate」、AlmaLinuxのSBOM(ソフトウェア部品表)、OVAL(脆弱性管理用の情報)など、プロジェクトの成果物を利用するときにサイバートラストの支援が受けられる。
3つ目は、システム運用まで含めた「+α」のサービスが利用できることだ。最大16年間、脆弱(ぜいじゃく)性対応を保証し、日本語による障害解析、技術問い合わせに対応する「AlmaLinux Standardサポート」や、サーバ無停止でのKernelアップデート機能などさまざまなサービスを利用できる。
サイバートラストは「国内企業が安定、安心に利用できるLinux OSを提供したい」と考えている。今回の“合流”もその実現に向けた取り組みの一つだ。CentOS後継OSの候補は市場に幾つかあるが、重要なのは「RHEL互換性」「安定性」「移行のしやすさ」「サポート期間」などのポイントを網羅していることだ。
AlmaLinuxはRHEL互換OSとしてアプリケーションレベルで互換性を確保しており、開発コミュニティーの活動も活発で、安定性に心配はない。今回の協業で、国内企業であるサイバートラストの関わりが深くなることで日本語ドキュメントの整備も進み、日本の開発者が参加しやすい「SIG」(Special Interest Groups)の立ち上げにも期待できる。また、CentOSからの移行ツールが利用できるため、移行のしやすさについても問題ないだろう。最も気になるサポートも最大16年と長期間、国内のLinuxエンジニアが日本語で担当する。
特に注目したいのは、CentOSが提供していない多様な便利機能を利用できる点だ。OSの再起動をせずにカーネルのパッチ適用を可能にする「AlmaLinuxライブパッチサービス」、ライブパッチを活用して「FIPS 140-3」に準拠する「AlmaLinux FIPS 140-3 対応サービス」などの仕組みを迅速に提供する。
サイバートラストの眞柄泰利氏(代表取締役会長)は「協業によって、長期的に安心して利用できるRHEL互換OSを提供できるようになった。将来的にセキュリティやコンプライアンスを強化するユーザーにも最適な提案が可能になった」と話す。
協業の発表以降、ユーザー企業やパートナー企業からの多くの問い合わせが寄せられており、ライブパッチやFIPS対応への関心の高さを改めて感じているという。
サイバートラストとThe AlmaLinux OS Foundationを立ち上げたCloudLinuxは、セキュリティやコンプライアンス、Linuxの長期運用に関して「共通するビジョンを持っていた」という。その両社がタッグを組み、AlmaLinuxとして知見やノウハウ、経験を統合することで、ユーザーは強固なサポートを素早く受けられる。また、将来にわたって安心して利用できるLinux環境を手に入れられるだろう。
The AlmaLinux OS Foundationのbenny Vasquez氏(議長)は「日本のLinuxエコシステムを向上させ、その潜在能力を最大限に引き出す機会を提供する」と語り、CloudLinuxのIgor Seletskiy氏(CEO)は「われわれのミッションにおいて重要なマイルストーンだ。日本の企業のデータと顧客の保護を支援する」と大きな期待を寄せる。
「RHELの後追い」ではなく「将来的に戦えるOS」として、サイバートラストのAlmaLinuxサービスから目が離せない。
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