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» 2023年07月25日 10時00分 公開

伴走型SI企業との連携で業務アプリ内製と社員スキル向上に成功 伊藤忠丸紅鉄鋼が取り組むBPRノーコードツールでITスキルを向上し、デジタル化の遅れを挽回

DXの一環でシステムの内製化に取り組む企業が増えている。中でもノーコード/ローコードツール「kintone」を活用して業務改善と社員のスキル向上を両立しているのが伊藤忠丸紅鉄鋼だ。伴走型SI企業との連携で成果を挙げている同社の道のりを通じて、組織へのデジタルツール浸透のポイントを学ぶ。

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IT化が遅れる鉄鋼業界 事業会社との情報共有に課題

 2001年に設立された伊藤忠丸紅鉄鋼は、丸紅と伊藤忠商事の鉄鋼製品分野を統合した鉄鋼専門商社。「鉄鋼流通のプロ」として、鉄鋼製品などの輸出入や販売、加工、サプライチェーンマネジメント、鉄鋼関連業界への投資を展開している。国内外の関連事業会社は100を超え、世界全域にまたがる幅広い領域のネットワークとビジネス基盤を強みとしている企業だ。

 「鉄鋼業界はIT化、デジタル化が遅れている業界です。30〜40年前のシステムも稼働している状況で、このままではいけないと、クラウド化やSaaSの活用を進めています」と語るのは、伊藤忠丸紅鉄鋼 IT推進部 ITソリューションチーム長代行の宮﨑良太氏。

 同社では2021年度からCDO(Chief Digital Officer 最高デジタル責任者)を設置し、ペーパーレス、ローコード対応、自動化やRPA(ロボティックプロセスオートメーション)化、社員へのIT教育などといった柱でDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を急いでいる。中でもITソリューションチームは、業務改善のためにさまざまなシステム導入を担っている。

 同社の社員数は単体で961人、連結で1万463人(2023年4月)。ビジネス基盤を強固にするには、激しい変化により迅速に対応できる組織となることが望まれるが、グループ内の情報収集やコミュニケーションには課題があった。

 「当時、経営層からもBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)やペーパーレス推進のメッセージがありました。グループ全体のコミュニケーションは、アンケートのためのスプレッドシートを電子メールで送るといったもので、手分けして入力、集計するため、手間がかかっていました」(宮﨑氏)

伊藤忠丸紅鉄鋼 IT推進部 ITソリューションチーム長代行 宮﨑良太氏

 事業会社を含めたグループの意見を集めるアンケートには、項目が100件を超えるものもあった。電子メールに添付したスプレッドシートに記入・返信をメンバーに促し、回収したシートを集計するといった作業は、大きな負担になるとともに、遅延やミスも生じていた。

 他にも、紙の申請書による業務フローの改善や、スプレッドシートで管理している台帳の整理による効率化も求めていた。宮﨑氏はこれらの課題解消のためには業務アプリ構築ツールが必要だと考え、そのためのクラウドサービスの導入検討を2018年ごろ始めた。

現場主体でアプリの内製化を行うために、kintoneを選択

 宮﨑氏は、業務アプリ構築ツールに求めるのは拡張性と汎用(はんよう)性だとし「グループ会社には多様な業務があります。小さく始めて大きく広げられることと、さまざまな要件に対応できることを重視しました」と振り返る。

 その背景には1つの反省があった。過去に別のノーコード/ローコードツールを外部のSI企業に依頼して導入を試みたが、うまく定着しなかったのだ。社内のメンバーのITスキル向上も考え、自分たちで簡単に作れることを目指していたが、それがかなわなかったという。

 「SIベンダー主体で構築したのですが、使い勝手があまり良くありませんでした。多様なグループ会社の現場の実態には合わないと思い、導入を見送りました」(宮﨑氏)

 そして候補に挙がったのがサイボウズの「kintone(キントーン)」だ。その使いやすさから、宮﨑氏はじめIT推進部メンバーの印象は良く、トライアルを始めた。

 「他のツールも評価しましたが、一番簡単で汎用性があったのはkintoneでした。現場主体で使うことを考えるとやはり『簡単』というのは重要な要件で、kintoneはその条件を満たしていました。これなら現場の方が自身の判断でアプリを設計することができ、アプリが現場の作業と乖離(かいり)することがないと判断しました」(宮﨑氏)

 ただし、当初kintoneの導入を相談したベンダーは、依頼に対する反応が遅く、何か新しいアプリを作るにも時間がかかっていた。

 宮﨑氏は「せっかくのノーコード/ローコードツールなのに、社外のベンダー主体で取り組んでしまいました。社内のメンバーのスキル向上を考えると、家庭教師のように何でも相談できる『kintone先生』のような存在がいいと考え、サイボウズに相談したところ、コムチュアの紹介を受けました」と語った。

 コムチュアは伊藤忠丸紅鉄鋼が利用する基幹システムとkintoneとのデータ連携の仕組みを構築した実績や、開発支援・サポートの経験もある。コムチュアの担当者も、伊藤忠丸紅鉄鋼が求めるBPRによるDX推進に賛同し、2018年夏ごろから「kintone先生」として、伴走型のシステムインテグレーション(SI)をスタートした。

社内の規定を決め、サンプルアプリの応用でアプリ内製を促進

 kintoneは手軽に業務アプリが作れるツールで、社内のITスキル向上が期待できる。

 従来型のSIはユーザー企業が企画や要件定義を行い、開発はSIベンダーが行うというケースが大半だったが、ノーコードで開発が容易、アジャイルに修正も可能なkintoneはユーザー企業による内製開発が可能。ユーザー企業が主体的に開発し、SIベンダーが付き添いながらアドバイスをしたり、相談に乗ったりする伴走型の取り組みと相性がいいのだ。

 ただ、もちろん、一定の統制も必要だ。同社は伴走パートナーであるコムチュアに相談しながら、自社のポリシーに沿った運用ルールを策定していった。

 運用ルールの1つは、社内で使うアプリ作成には申請を必要としたことだ。簡易的にアプリを作成できるkintoneの特性を生かしながらも、カスタマイズにより属人化されたシステムとなることを防ぎ、サービスのアップグレード時にも影響が出ないようにした。標準機能やプラグインを利用するルールも設けた。

 伴走パートナーによるアプリ作成支援は、当初7つの部門でテスト的にスタートしたものの、kintoneに対する周知が不十分だったためうまく進行しなかった。そこでkintoneの社内周知を図る業務改善セミナーなどの説明会を開催したところ、業務改善をしたいという問い合わせが増加した。

 問い合わせに対してkintone先生(伴走パートナーのメンバー)は、詳しい業務内容をヒアリングしてサンプルアプリを提供。それを社員が応用したアプリを作り、またkintone先生が評価し、社員が改善するといったサイクルが生まれ、業務アプリの内製が徐々に浸透していった。

 2023年6月現在、伊藤忠丸紅鉄鋼の社員が作ったkintoneアプリは500を超え、そのうち社内で利用が認められたものは200ほどとなっている。紙で行っていた申請業務のデジタル化アプリや、商談データの蓄積・共有、業務を可視化してタスクの優先度や進捗(しんちょく)を確認できるアプリ、ナレッジの共有や問い合わせ対応のアプリ、財務会計に関連したアプリなどが運用されている。

 電子メールにスプレッドシートを添付して行っていたグループ内のアンケートもkintoneアプリに移行し、グループ内のコミュニケーションや情報共有に関する課題が改善した。

 「年間、複数件のアンケートを行っていますが、その入力や集計の手間が全くなくなり、かなり工数を削減しました。以前はスプレッドシートであるため、自由に入力して、名寄せに苦労をしていましたが、それもなくなり、全体の精度も向上しました。アンケートを入力する方も、前年を複製できるので手間が減りました」(宮﨑氏)

「BPRカップ」を開催し、組織のITスキル向上に役立てる

 システム内製化が徐々に進んでいる伊藤忠丸紅鉄鋼では、ITスキル向上やBPR推進のための社内教育の取り組みも強化している。それを担うのが、2023年に新設されたデジタル戦略室。同室でkintoneの利用促進などを担当する菅谷賢吾氏は、「従来は経営企画部IT戦略チームという組織で、2022年度から、本部ごとに代表組織を選出してもらい、上長とインフルエンサーとなる社員を育成する研修を半期に1回行ってきました。現場の業務の課題を見つけて、各種ツールを活用する検討を支援しています」と語った。

伊藤忠丸紅鉄鋼 デジタル戦略室 菅谷賢吾氏

 その一環で、「BPRカップ」という社内コンテストを2022年に開催した。社内から部門の異なる10チームが、kintoneなどの業務アプリ構築ツールを使って業務改善能力を競い合うイベントだ。

 まずBPRの基礎や各種デジタルツールを用いたソリューションを学び、その後は参加者主体で実業務を改善し、その実績を競い合う。菅谷氏は「ポイントは組織で競い合うことです。費用対効果が高いものや他の部署と連携できるものなど、業務改善が大きな評価軸になります。上司も参加することでチーム全体への波及効果も狙っています」と説明した。

 2022年のBPRカップで評価を得たアプリは、kintoneを使った顧客管理アプリだ。顧客との商談の引き合い情報や、面談、社内検討の履歴を共有し、見積もり提出につなげるまで一気通貫で行うものだ。

 その成果について菅谷氏は、「構築したチームの試算では、年間800時間の削減効果があるとしています。新しいツールなので、実際の業務での利用において最初は抵抗する動きもありましたが、使っていくうちに『もう以前のスプレッドシート管理には戻れない』となりました。個人のPCに埋もれた情報が共有されることは大きな効果ですね」と述べた。BPRカップは、ベンダー任せにせず、自分たちでアプリを構築する人材教育の成果が分かるため、経営陣にも好評で、2023年も実施予定だという。

 伊藤忠丸紅鉄鋼は伴走型SIを社内のスキル向上にもつながると評価し、これを継続していく予定だ。菅谷氏は「自分たちのやりたいことをうまく言語化できないことがあるのですが、伴走パートナーはそれをくみ取ってアドバイスいただけるので非常に助かります」とコメントした。

 kintoneの利用が浸透した今後は、それをユーザー側のインタフェースとしながら、基幹システムやBI(ビジネスインテリジェンス)ツールをはじめ、さまざまなシステムとのデータ連携を促進していきたいとしている。今後の展望について宮﨑氏は「連携するアプリを増やしながらBPRを促進していきたいです」と語った。

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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年8月15日

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