長く使い続けられるローコード/ノーコード開発ツールを選ぶ4つのポイントつないで終わりではなく、次のアクションにつなげる

ローコード/ノーコード開発ツールを試す企業が増えている。始めるときは「簡単な処理だけでいい」と思っていても、例えば3年後には「幅広く本格的な用途で使いたい」となることがある。では、長く使い続けられるツールをどのように選べばいいのか。4つの選択ポイントを紹介する。

» 2023年09月15日 10時00分 公開
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 ローコード/ノーコードのアプリケーション開発ツールが大きな注目を集めている。だが、自社にとって最適な製品を選ぶことは、簡単なようで難しい。実際、企業の中には、1、2年ほどツールを使い続けた結果、当初の選択が正しくなかったことに気付き、ツールを選択し直すところも出てきている。

 ローコード/ノーコードは、開発エンジニアではない社員が気軽にアプリケーションを開発するという文脈で語られることが多い。ただその一方で、開発エンジニアが本格的な社内データアプリケーションを機動的に開発するためにローコード/ノーコード開発ツールを採用するというケースも増えている。それぞれでニーズや要件が異なるため、ツール選択の難易度は上がっている。

 また、ビジネス環境が急速に変わる昨今では、時がたつにつれてツールに対するニーズが大きく変化するのは当然のことだ。しかし、環境やニーズが変化するたびにツールを見直すのは企業にとって大きな負担になる。ツールの再選択に時間がかかるだけでなく、新たなツールについて学んだり、既存のアプリケーション資産を移行したりすることがDX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせになることも十分考えられる。

 そうした中、「3年後も使い続けられるツールを使おう」と提案するのが、データ連携に携わり30周年を迎えたセゾン情報システムズで執行役員、CTO(最高技術責任者)を務める有馬三郎氏だ。

 「アプリ開発やデータ管理を容易にするという観点だけでみると『ツールは何でもいい』という考えも成り立ってしまいます。実際、誰でも簡単にアプリ開発ができるツールは多数存在しています。ただ、数年後に導入当初と同じように使い続けられるかどうかは分かりません。企業によっては、使い続けるうちに求められる機能が不足し、結果としてツールを選択し直さなければならないケースもあります。利用が進んだタイミングでツールの入れ替えをしなければならないのは大きな負担です。中、長期的に利用する場合、利用シーンに応じて適切な機能を備えたツールを選択することが重要なのです」(有馬氏)

 始めは簡単な処理から、だけれども3年後は本格的な用途で使いたい、そんな時でも使い続けられるプロフェッショナルなノーコード開発ツールの実践的な選択基準とは何だろうか。

クラウドの進展とともに重要になったアプリ開発における「データ連携」

画像 セゾン情報システムズの有馬三郎氏

 大前提として考えたいのは、1つのツールで全ての利用シーンに対応するは非常に難しいということだ。

 基幹システムについては「オンプレミスでカッチリと、強固な形で作りたい」というニーズが根強い。ただ、こうしたアプリケーションの開発でも、ETL(データの抽出、変換、書き出し」)の機能をノーコードで対応できれば開発効率や保守性を向上させられる。しかしその上で、システム開発工程をきちんと踏んでいけるような支援機能も必要だ。

 一方で、アジャイル的にアプリケーションを開発、運用し、ビジネスの現場を直接変えていきたいというニーズもある。こちらについては、役に立つアプリケーションを作ろうとすればするほど、複数のSaaS(Software as a Service)とのデータのやりとり(連携や統合など)で複雑な処理が求められるようになる。

 「データ関連の処理という観点でいえば『ループ処理』『条件分岐』『変数の扱い』『例外処理』を当たり前にできるかどうかは重要です。こうした機能は、ツールによって細かな差があります。例えば、ループ処理はできるが、その中で条件分岐させたり変数を取り扱ったりすることはできないといったこともあります。このような違いに注意してツールを選択する必要があります。ツールのPoC(概念実証)ではデータ量に着目しがちですが、『動作させたい処理ロジックを、正しく、ノーコードで定義できるかどうか』も大事なポイントです」(有馬氏)

画像 データ関連の処理でおさえておきたい4つの機能

 これらの大前提を踏まえた上で、有馬氏は3年後も使い続けられるツールの選択ポイントを4つ挙げる。それは「開発環境と本番環境を切り分けできるか」「ワークフローを分かりやすく書くことができるか」「共通化の機能を持っているか」「高速処理が可能か」だ。

 「オンプレミスとクラウドをまたがってさまざまなデータやシステムを連携させていくと、システムはより複雑になり、環境を管理することが難しくなっていきます。4つのポイントを踏まえることで、ツールの利用が進んでから直面しがちな課題を避け、効率や生産性を維持しながら、機敏に柔軟にサービス開発を発展させていくことができるようになります」(有馬氏)

中期的なツール活用で欠かせない4つのポイント

選択ポイント1:開発環境と本番環境をスムーズに切り替えられるか

 1つ目は「開発環境と本番環境の切り替えやすさ」だ。有馬氏はこう説明する。

 「開発環境と本番環境を切り替えられる機能がないと、データ連携フローのためのスクリプトを開発用、本番用で別々に作る必要があります。開発と本番を切り替えられれば、修正を開発モードで行って十分にテストし、問題がないと確認できた時点で本番モードに移行できます。最近では、サービスの連携先に合わせてスクリプトが複雑化しており、改修の工数が増えています。切り替え機能なしには、本番環境に影響を与えないようにこうしたスクリプトを改修することが極めて困難です」(有馬氏)

選択ポイント2:見やすいワークフローを書けるツールか

 2つ目の「ワークフローを分かりやすく書くことができるかどうか」も、将来的な運用性を高めるものだ。

 「ノーコード開発ツールでデータの連携や処理を記述する場合、アイコンをドラッグ&ドロップし、その間を線で結んでフローを構築できます。その際に一直線しか描けず、ループ処理や条件分岐をビジュアルに表現できないツールもあります。アプリケーションが稼働し始めてからも修正を入れることは当然ありますが、見返したときに、書いた本人でも自分で何を書いたか分からなくなることがあり得ます。以前書いた内容が即座に把握できるように、ワークフローをどれだけ分かりやすく描けるかが非常に重要です」(有馬氏)

選択ポイント3:処理の共通化は可能か

 3つ目のポイントである「共通化の機能を持っているか」については将来的な負債を増やさないためにも重要な要素となる。有馬氏はこう説明する。

 「ローコード/ノーコード開発ツールは属人化しやすい面があります。これを避けるために必要なのが共通化の機能です。例えば、データベースにアクセスする際には、書き込む量やトランザクションのコミット単位、エラーハンドリングなどを考慮する必要があります。それらをIT部門などが共通処理として作成しておき、これをユーザーが呼び出して使うようにすることで安全性や性能を担保できるようになります。アプリケーションを何十、何百と作った後でデータベースの構成を変えなくてはならなくなった場合にも、共通処理を修正すれば済みます。アプリケーション1つ1つに手を入れなくてもよくなります」(有馬氏)

選択ポイント4:増え続けるデータ量への対応方法はあるか

 4つ目は「パフォーマンスの劣化を防ぎ、ユーザーにとって使いやすいシステムを維持する方法があるかどうか」だ。

 「利用しているうちに、並列で動く処理が増え、データ量も増えていき、パフォーマンスが劣化しやすくなります。大容量データを効率良く処理したり、並列処理を素早く実行したりできる仕組みが重要です」(有馬氏)

つないで終わりではなく、次のアクションにつなげていくことが重要

 セゾン情報システムズでは、こうした4つのポイントを踏まえた“プロフェッショナル”なノーコード開発ツールとして「DataSpider Servista」と「HULFT Square」を提供している。DataSpider Servistaは主にオンプレミスの業務システムや基幹システムにおいてETLを中心としたデータ連携を実現するプラットフォームで、HULFT Squareは主に複数のSaaS間でのAPIによる連携を実現するデータ連携プラットフォーム(iPaaS)製品だ。

画像 HULFT Squareの概要図

 「これらの製品を使うことで、アプリケーション開発で課題になりやすいサイロ化や属人化、性能劣化、運用負荷などの課題にも対応できるようになります。具体的には、開発環境と本番環境の切り分けについては『種別』や『プロファイル』という機能を使って実現します。また、ワークフロー作成においては、画面上で縦横自在にスクロールして柔軟にアイコンを配置することで使いやすさを高めています。さらに、属人化を防ぐための共通化機能として、定義の一元管理やグローバルスキーマ、チーム開発機能などを備えています。高速処理ではパラレルストリーミング処理を自動適用するスマートコンパイラ、大容量データの結合処理、集計処理、ソート処理を高速化する『マルチストリームコンバータ』を提供しています」(有馬氏)

 クラウド、特にSaaSの利用が急速に高まる中、アプリケーション開発やデータ活用の在り方も大きく変化している。例えば、データについては、これまではオンプレミスのデータウェアハウス(DWH)にデータを蓄積して活用することが一般的だったが、近年では、クラウド上にDWHを構築し、オンプレミスの基幹システムからクラウドのDWHにデータを蓄積するケースも増えてきている。

 「SaaS間連携やオンプレミスとクラウドとの連携のニーズは今後ますます増えていきます。ローコード/ノーコード開発ツールに対しても、オンプレミスのデータをきっちりとDWHに集めること、マルチクラウドでデータの流れを確実に管理すること、SaaSとしなやかにデータをやりとりすること、データを活用し継続的なアクションにつなげることが求められています。DataSpider ServistaとHULFT Squareは、こうした新しいニーズに応えられる製品です」(有馬氏)

 例えば、オンプレミスのデータとクラウドDWHの連携は、多様な文字コードへの対応や、ユーザーの詳細な認証、認可などが求められる。また、マルチクラウドにおけるデータ管理では、エラーハンドリングや運用監視が欠かせない。SaaSでのやりとりではAPIマネジメントや接続先の変化への追随、オンプレミスとの接続がカギとなる。さらに、継続的なビジネスアクションにつなげるにはデータをSaaSに戻す「Reverse ETL」のような仕組みで、トライアル&エラーを柔軟に行っていく仕組みが重要だ。

画像

 「データをつないで終わり、集めて終わりではなく、内製化しながら、次のアクションにつなげていくことが重要です。ローコード/ノーコード開発ツールを正しく選択し、継続的に活用することで、ビジネスや組織文化の変革、DXにつなげてほしいと思います」(有馬氏)

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提供:株式会社セゾン情報システムズ
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年9月29日

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