教育機関向けSaaS提供企業「Classi」に聞く、顧客満足と収益向上に不可欠なこととは「コスト最適化」と「コスト削減」の決定的な違いとは

GIGAスクール構想が進み、多くの教育組織がIT活用に乗り出している中、「個別最適な学び」を支援するサービスとして多大な支持を獲得しているのがSaaS「Classi」だ。同社が顧客満足と収益を伸ばし続けている背景には何があるのか。「コストの捉え方」を軸に価値提供の在り方を聞いた。

» 2023年09月14日 10時00分 公開
[PR/@IT]
PR

累計2300校、210万人以上が利用してきた教育プラットフォーム「Classi」

 「全国の児童・生徒1人に1台のPC/タブレット端末を配備するとともに、高速大容量の通信ネットワーク整備などにより、一人一人に最適な学びを実現する」といった文部科学省「GIGAスクール構想」が注目されて久しい。2019年の開始以降、社会のデジタル化の潮流も受けて、多くの教育組織が取り組みを進めている。

 そうした中、「子どもの無限の可能性を解き放ち、学びの形を進化させる」ことをミッションに掲げ、SaaSで「先生の授業・生徒指導」「生徒の学び・成長」を2014年から支援し続けているのがClassi(クラッシー)だ。

ALT 累計2300校、210万人以上が利用してきた教育プラットフォーム「Classi」(提供:Classi)
ALT Classi株式会社
プロダクト本部 プラットフォーム部
遠藤悠大氏

 同社が提供するSaaS「Classi」は、「コミュニケーション」「探究学習」「学習動画」「日々の学習記録」などの機能を通じて、「個別最適な学びの実現」を支援するオールインワンのプラットフォーム。パートナーとの協業により、さまざまな教育コンテンツを選択して利用できる「Classi連携サービス」も多数提供しており、利用学校数は2022年度末時点で累計2300校、利用生徒数は210万人以上に達する。まさしくGIGAスクール構想を後押しするサービスとして全国の教育現場から多大な支持を獲得している。Classi SREチーム 遠藤悠大氏はサービスの特徴をこう話す。

 「Classiは“個に応じた学び”を提供するサービスであり、生徒一人一人の学習の質と量を改善することで、その育成を支援しています。また、目視できない情報も含めて、生徒に関する情報を偏りなく収集し、一人一人の注目すべき点などを明らかにすることで、生徒指導に役立てていただいています。学校全体のICT活用を視野に入れて、先生、生徒、保護者のつながりを深められるようにサポートしている点が特徴です」

 GIGAスクール構想の対象は小中学校から高校にまで広がり、AI(人工知能)などを活用したアプローチも始まっている。Classiも2023年6月、学習に対する生徒の自律性と、AIによる個別最適な学習支援を両立した「学習トレーニング機能」をリリースするなど、教育環境の変化に応じて、機能改善や新機能開発に柔軟、迅速に取り組んでいる。

課題はいかにして「サービス品質とコストのバランス」を取るか

ALT Classi株式会社
プロダクト本部 プラットフォーム部
笠井啓太氏

 だが、教育現場でのICT活用が広がるに伴い、システム面で課題に直面するケースも増えてきた。笠井啓太氏 はこう話す。

 「1人1台の体制が広がるにつれ、教育現場ではデバイスやサービスの使いこなし方に課題を抱えるケースが増えてきました。一方、コロナ禍を受けて生徒が自宅などからサービスを利用する機会も増えたことで、コスト面も含めて、利用者が快適かつ安全、安定的に使えるサービス提供がこれまで以上に重要になってきたのです」(笠井氏)

 さらに2020年、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が発布されたタイミングで教育現場におけるデジタル化が一気に加速し、Classiへのアクセスが急増したこともサービス提供の在り方に課題を投げかけることとなった。

 「システムに負荷がかかり、『遅い』などご迷惑をおかけする事態に陥ったのです。ClassiはAmazon Web Services(以下、AWS)上に構築しているので、リソースを増強することで対処できました。また、これと並行してサービスの安定稼働、安定供給に向けた組織体制の見直しも行いました」(遠藤氏)

 具体的には、「システムエラーや遅延処理など、万が一の際に、誰が、何を担うか」といった開発チーム内の役割分担、対応フローを再整備した。これによって当面の課題は解決し、安定的なサービス提供は実現できた。だが、それまで意識していなかった課題が次第に浮き彫りになってきたという。「コスト」の問題だ。

 周知の通り、パブリックIaaS/PaaSはコストのかけ方次第でサービス品質を柔軟に調整できる。難しいのは、“事業環境の変化に合わせて”品質とコストのバランスを取り続けることだ。

 「経営層からのサービス運営コストに関する追及もあり、現状を振り返ってみたのですが、コロナ禍以前は新機能開発に主眼を置いてきたこともあり、コスト意識が低かったことを再認識するに至ったのです。『必要なときにはコストをかけてサービスの安定性を維持する』のではなく、『事業環境の変化に応じて、品質とコストを常に最適化することが重要』とあらためて認識しました」(笠井氏)

AWS×Classi ウェビナー開催

 本記事に関連して AWS では Classi の関係者をゲストとしたオンラインウェビナーを開催する。記事では語り切れなかった現場の話なども語っていく予定とのことなので興味のある読者の方は参加してみはいかがだろうか。

  >>ご登録・詳細はこちらから


AWS Cloud Financial Managementプログラムで「コスト最適化」を客観評価

 同社では、これを受けて、開発チーム、SRE(Site Reliability Engineering)チームだけではなく、ビジネスサイド、経営サイドなど、全関係者と課題を共有し、全社的に品質とコストの最適化を進めた。

 具体的には、取り組みを2022年から本格化させ、ClassiのSREチームがAWSの利用状況を可視化し、必要に応じて対策を実施した。ただ、経営サイドのコストに関する追及が精緻さ、厳しさを増す一方で、利用状況に応じた対策の定期的な見直し、成果の詳細な分析、検証まではできておらず、「事業環境の変化に応じた品質、コストの最適化」には至っていなかったという。

 その際に活用したのが、「AWS Cloud Financial Management」プログラム(以下、CFM)だった。CFMは、AWSのコスト最適化分析専門チームが独自に開発するツールを使って顧客のサービス利用状況データを収集、分析し、コスト最適化のポテンシャルや施策案について検討支援を行うサービスとなっている。

 「コスト最適化に悩んでいた折にAWSへ相談した際、CFMを紹介いただきました。CFMの実施に当たり、事前準備が不要なことも魅力でした。そこで『現状の対策以上にやれることはないか、本当に運用を最適化できているのか』を検証するために、まずは気軽な気持ちで使ってみたというのが正直なところです。結果としては『全体のコスト削減可能額は1%』。取り組みの正しさを裏付けるものとなりました」(遠藤氏)

 これにより、「やれることはやっているという自信にもつながりました」と遠藤氏は振り返る。だが、何より重要だったのは「取り組みの妥当性を検証し、今後の方針を定められたこと」だという。

 「インフラのコスト削減は取り組みだすとキリがありません。CFMによって『現状の対策が妥当であり、今後はインフラのコストチューニングを最優先とせずに、アプリケーションの中身を改善するなど、他の取り組みに力を注ぐべきであること』などを確認できました」(遠藤氏)

 もちろん、CFMのレポートはSREチームだけではなく、開発チームやビジネスサイド、経営サイドとも共有した。全関係者が数字を基に議論できるようになったことで、「SREチームが実施したコスト削減策の適正性を経営層が納得感とともに評価する」「開発チームとSREチームの共通指標とすることで機能と品質のバランスの取れた設計、開発をする」といったことが可能になった。

 「レポートが共通言語となり、全社的な方針を定める指標として機能することになったのです。しかも、レポートはAWSが客観性を持って提供する、いわば“プロのお墨付き”です。サービスに関わる全ての人が納得感を持って判断できるようになりました」(笠井氏)

 実際、エンジニアリングの経験や知識がない人に、コスト最適化の妥当性を説明するのは極めて難しい。「例えば、インフラコスト削減なら『Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)』の利用率から削減額を推定するなど、かなり細かい粒度で改善提案を作ることになる」(笠井氏)ため、どうしても削減額そのものに視野が閉じた議論になりやすい。

 「CFMのレポートは、サービス利用状況とコストの関係を適度な粒度で説明できますから、サービスや品質の在り方という“事業観点”を見失うことなく議論できます。共通言語として非常に良い役割を果たしてくれました」(笠井氏)

CFMで再認識した開発とインフラ運用の「本当の役割」

 以上のように、CFM活用はClassiに大きなメリットをもたらした。ClassiにおけるAWSの活用成熟度が高いことが客観的な評価で証明されたのはもちろん、コスト最適化にとどまらず、「新規サービス開発も含めた“リソース最適化”の観点を持ち直すことにつながりました」と遠藤氏は評価する。

 「クラウドの強みの一つは、環境変化に応じてリソースを増強/縮小できる柔軟性です。ここで重要なのは『システムの事情』ではなく、『事業の状況に応じて』変化に対応できるということでしょう。事業にとって必要なら、コストをかけてサーバを増強することも“コスト最適化”です。その点、CFMを活用すると、事業を軸にしたクラウドの使いこなしができるようになります。何を作り、何を強化すればお客さま満足とわれわれの成果につながるのか。コストと天秤(てんびん)にかけて、ちょうどよい場所を探し続けられるのがCFMだと考えます」(遠藤氏)

 「SREチームにとっても、『事業と顧客満足にどう貢献するか』という視点が重要です」と笠井氏は話す。

 「基盤インフラを担うSREチームはお客さまから遠い存在であるため、事業貢献度が低く見られがちです。ただ、『事業環境の変化に臨機応変に対応し、健全なコスト体質の下で良質なサービスを安定供給できるインフラを構築していくこと』『コスト最適化とは、コスト削減だけに傾倒する話ではないこと』といった議論が、CFMの第三者評価をきっかけにメンバー間で生まれたことは大きな収穫でした。SREチームが本質的に何に責任を持ち、何を担うべきなのかをあらためて気付かせてくれたと思います」(笠井氏)

 Classiの場合、CFMを軸にして全社的な取り組みを進めたわけだが、「全社的な取り組み」というと一般的にはハードルが高くなりがちだ。遠藤氏は「まずは、気軽に始めてみるのが最大のポイントだと思います」とアドバイスする。

 「われわれもそうでしたが、コスト最適化に向けた目星は付いていても、何から着手すべきか分からない際に使ってみると有効です。CFMで現状をつかむことで、理念や事業を前提に、取り組みの方針を立て、優先順位を付けることができます」(遠藤氏)

 事業目的が明確であり、そこにCFMが提供する“現状”を照らし合わせれば、確かに立場が異なる関係者も巻き込みやすくなるだろう。それも“ITのコスト事情”ではなく、事業目的を前提に共通言語で議論できる以上、そのコスト最適化が顧客満足に直結することは言うまでもない。

 「まだまだ先生方の負担は大きいですし、生徒が自主的に学習を進められるようにサポートを充実させていく必要があります。そうした教育現場を包括的に支援するのがClassiの役割です。今後もCFMを活用しながら、先生、生徒、保護者の皆さまをサポートしていきたいと考えています」(遠藤氏)

「コスト最適化」と「コスト削減」は、違う 〜インタビューを振り返って〜

 @IT編集部の読者調査では、アプリケーション開発・運用の課題として常に上位に入るのが「コスト削減」だ。コスト意識は重要だが、問題は事業目的と切り離された状態で「コスト削減」自体が目的化している傾向が強いことだろう。

 アプリケーションの目的は事業目的の達成、すなわち「顧客満足度を高め、利益を向上させること」にある。また、「アプリケーション=事業」である以上、本来ならコスト制約も全社視点で検討する必要がある。遠藤氏も指摘したように、それが目的達成に必要なら、各事業への投資配分を変えてでも「かけるべきコストはかける」判断もあり得る。これはまさしく「自社の価値をどう打ち出すか」という経営戦略の話であり、コスト最適化とコスト削減の決定的な違いだ。

 Classiのように全関係者が議論できる“共通言語”があれば、長らく指摘されてきた「経営とITの分断」も解消に向かうことだろう。開発者も、運用者も「マニュアル通りに手を動かす」人材ではなく、事業目的のために機能要件、非機能要件を主体的に発案する人材へと変わっていくはずだ。本事例を参考に、まずは自社の共通言語を取り入れてみてはいかがだろう。事業を圧迫している“本当の課題”に気付けるかもしれない。



ウェビナー:コスト削減ってどこまでやればいいんですか?〜エンジニアと非エンジニアのコミュニケーション〜

 コスト削減は様々な立場の人にとって課題であろうかと思います。しかし、同じ「コスト削減」でも立場や役割によってイメージすることが異なり、コミュニケーションが難しいと感じることはないでしょうか?

 本ウェビナーでは、コストを第三者的に評価する AWS のサービスを活用してコスト削減に取り組むエンジニアとレポートを受ける事業側のコミュニケーションの実際のところを記事には描かれなかった裏話も交えて深掘りしたいと思います。

 コスト削減を進めるエンジニアと技術の詳細はわからないがコストを削減したいと願う事業側のすれ違いでお困りの皆様、是非ご参加の上参考にしてください。

  • 開催日:2023年10月13日(金)
  • 開催時間:16:00 〜 17:00

  >>ご登録・詳細はこちらから


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2023年9月28日

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。