サイロ化、属人化を解消し、ユーザー満足度を向上させるのに必要なこと NTTデータグループに聞く、「経営貢献に資する運用管理」の要件国内12万人の従業員に安心で快適なITサービスを提供

ビジネスニーズに応えるスピードが重視され、ITサービスの開発ばかりが脚光を浴びてきたが、エンドユーザーが快適かつ安定的に使えなければ、むしろビジネスを遅滞させてしまう。単なる保守ではない「経営貢献に資する運用」へと変革するには何が必要なのか。

» 2024年01月23日 10時00分 公開
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国内12万人の従業員=顧客にITサービスを提供

 社会全体でデジタル化が進展し、ITサービスの開発、運用は「ビジネス展開」とほぼ同義になって久しい。特にニーズに応える「スピード」が差別化要件となる中、クラウドの浸透も手伝い、いかに速く開発、提供するかが企業に注目されてきた。

 だが近年は課題も生じている。いかに速くITサービスを開発、提供したところで、エンドユーザーが安定的かつ快適に使えなければ意味がない。それができなければ業務効率が低下し、ビジネスが遅滞することもあり得る。問題が起きた際の迅速な対処、問題が起きないようにするプロセス/仕組み、エンドユーザーの要望をくみ取る力などがなければITサービスは成立しないのだ。

 ただ、システムのサイロ化、運用の属人化に悩んでいる例も多い中、安定運用とエンドユーザー満足を両立させることは難しい。しかし事業に影響を与える以上、放置するわけにもいかない――多くの企業に共通するこの難題に、メンバー一丸となって取り組んだのがNTTデータグループの情報システム部門であるITマネジメント室(以下、ITM)だ。NTTデータグループの井林真吾氏(コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 部長)はこう話す。

NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 部長 井林真吾氏 NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 部長 井林真吾氏

 「われわれのお客さまはNTTデータグループ全体、国内12万人の従業員(ビジネスパートナー含む)です。従来は安定重視のシステム運用に取り組んできましたが、業務のデジタル化が進む中、事業貢献する上では、サービス提供のスピード、品質などエンドユーザーである顧客に対してどう価値向上を図っていくかが課題となっていました」(井林氏)

 これを端的に示す数字がある。「ヘルプデスクで適切な対応ができたかどうか」を示す回答順守率だ。2018年時点の回答順守率は61%。実際「回答が遅い」「ラリーが多い」といった声が多く寄せられていたという。NTTデータグループの杉山英輔氏(コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長代理)はこう話す。

NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長代理 杉山英輔氏 NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長代理 杉山英輔氏

 「そこで取り組んだのがITM自身の変革です。IT運用を通じて従業員により良い体験価値を提供するにはどうすればいいか。顧客の潜在的な声をキャッチアップしながらプロアクティブにITサービスを提供できるようになるためには何をすべきなのか。われわれ自身の在り方を根本的に見直すことにしたのです」(杉山氏)

 ITMは2019年に変革の構想を固め、さまざまな施策を繰り出してきた。結果として、運用業務の効率、従業員満足度は大きく上がり、一つの指標であった回答順守率は2021年時点で95.5%に達したという。ITMはIT運用をどう変えてきたのだろうか。

「開発と運用の分断」から露呈した運用課題

 ITMは約900人で構成され、システム基盤/ITサービスの開発、運用、ヘルプデスク業務、ITサービスマネジメント業務、内部統制/SOX法対応業務などを担っている。このうちヘルプデスクは約40人、バックエンドを含めたITサービス運用チームは約90人という構成だ。プロジェクト開始以前の2018年まで、ITサービス運用に複数の課題が存在し、特に「開発と運用の連携」に問題を抱えていた。NTTデータグループの長谷川秀之氏(コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長)はこう話す。

NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長 長谷川秀之氏 NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長 長谷川秀之氏

 「従来は開発が納期優先で作ったものをそのまま運用が引き受ける体制で、サービスの安定提供を“運用でカバー”する状態が続いていました。顧客ニーズに迅速かつ安定的に応えるためには、運用設計を考慮に入れた開発が求められます。開発とのコミュニケーションに基づく運用主導での開発ができていなかったのです」(長谷川氏)

 2019年には問題も起きた。システムトラブルが発生した際、変更管理が徹底されていなかったため迅速に復旧できなかったのだ。NTTデータグループの三輪慶文氏(コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長代理)は「これを受けて、ITILなど基本に立ち戻ることを徹底しつつ、運用の在り方を根本から見つめ直しました。これにより大きく4つの課題があることが分かりました」と振り返る。

NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長代理 三輪慶文氏 NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム管理担当 課長代理 三輪慶文氏

 1つ目は各種監視ツールの情報がサイロ化しており、統合管理、可視化する仕組みが整備されていなかったこと。2つ目は多くの手作業が発生し、複数の運用業務が属人化していたこと。3つ目は問い合わせや問題対応の進捗(しんちょく)状況が分かりにくく、顧客にとって不便な状況が続いていたこと。運用部門として改善の手掛かりを得る仕組みも不十分だった。

 「そして4つ目は、運用を通じた事業貢献ができていなかったことです。運用ノウハウ、ナレッジを関係者で共有し、プロアクティブにニーズに応え、ビジネスを後押しすることが肝要だと考えました」(三輪氏)

サービス提供の在り方を変える「3つの指標」

 そこで取り組んだのが、「NTTデータグループ国内従業員のデジタル主体の働き方の促進」を目指し、ITサービスでそれを支えるITM自身のDXを推進することだった。プロジェクトは「ITMNow」と名付けられた。ITMが推進のための手段として選んだ、人、システム、プロセスをつなぐ一元的なクラウドプラットフォーム「ServiceNow」に由来する。

 ServiceNowはITワークフロー、従業員ワークフロー、個別業務ワークフローなど、各種ワークフローを管理するSaaS群と、それらを一元管理する「Nowプラットフォーム」で構成されるクラウドサービスだ。企業活動における各種業務のプロセス/データを単一のプラットフォーム上で統合管理できる他、必要な機能をローコード開発できる特徴を持ち、各種業務の可視化、標準化、自動化を組織全体で効率的に実現できる。

 2019年のプロジェクト開始当時、NTTデータグループ全体でもServiceNowの利用促進を図る機運があったこともあり、ITMでは既存の運用管理ツールの統合管理ツールとして「ServiceNow IT Service Management」と「ServiceNow IT Operations Management」を導入。インシデント管理、問題管理、変更管理、構成管理、資産管理、イベント管理などのデジタル化、一元化に乗り出した。とはいえ、“ツールありき”で推進したわけではない。

 「まず3つの指標で目標を定め、デジタル成熟度の向上を目指しました。素早い対応と安定的な業務遂行により『変化に対する迅速な対応』を目指すVelocity、データを活用した意思決定支援により『サービスレベルの向上』を目指すIntelligence、利用者満足度向上と運用ノウハウによる事業貢献で『従業員体験の向上』を目指すExperience――このそれぞれにレベル1〜4の成熟度を定義して取り組みを進めたのです」(杉山氏)

エンドユーザー満足度向上に向けた「ITM自身のDX」のコンセプト(提供:NTTデータグループ) エンドユーザー満足度向上に向けた「ITM自身のDX」のコンセプト(提供:NTTデータグループ)

 一般に、運用変革と言っても「何から着手すればいいか分からない」といった事態になりやすい。井林氏は「具体的な目標、アクションを定めた上で、安定運用、改善、変革をバランス良く実施することが肝要と考えます」と話す。

定義した成熟度を達成するための具体的なアクションも定めた(提供:NTTデータグループ) 定義した成熟度を達成するための具体的なアクションも定めた(提供:NTTデータグループ)

 「そのためには、エンドユーザーと密接なコミュニケーションが図れること、情報の一元化と可視化、リアルタイムな把握、各種自動化を実現する手段が必要でした。これらによって運用業務を標準化、自動化するとともに、エンドユーザー視点を持った運用環境を整備できると考えたのです。つまり『運用をこう変えよう』という目的意識の下、取り組みを明確化し、手段としてテクノロジーを突っ込んでいった。ServiceNowは求める要件を満たしていたのです」(井林氏)

標準機能を使い倒す、エンドユーザー視点を持つ

 2023年12月現在、回答順守率をはじめ運用は日々効率化、高度化されているという。ただ、同社にしても方針と手段だけで変革に乗り出せたわけではない。どう周囲を巻き込むかがプロジェクト推進のポイントになったという。

 その一つが「組織トップの巻き込み」だ。予算獲得においてはトップの問題意識に合わせて説明することを心掛けた。

 「組織トップは常に『今のままでいい』とは考えていません。変化しないことはリスクであることを前提に、フェイルファースト/スモールスタートで検証させてほしい旨を訴えました。とはいえ、われわれITMも“コスト部門”であることは事実。そこで『ServiceNowを使うことによるコスト削減効果』を一つの裏付けとしました」(井林氏)

 これは2つ目のポイント「グローバルスタンダードを取り入れること」につながっている。ITMNowの取り組みでは、ServiceNowの標準機能に業務を合わせる方針とした。

 「従来はツールをカスタマイズしていましたが、サイロ化、属人化などの弊害につながっていました。そこでOOTB(Out of the Box:カスタマイズされていない状態)のサービスを検証しながら、皆で運用業務を変える方針を立てました。独自領域と標準化すべき領域を切り分けて、極力ベストプラクティスを取り入れることにしたのです」(長谷川氏)

NTTデータ先端技術 基盤ソリューション事業本部 マネージドサービス事業部 サービスデリバリー担当 三木壮馬氏 NTTデータ先端技術 基盤ソリューション事業本部 マネージドサービス事業部 サービスデリバリー担当 三木壮馬氏

 OOTBであるだけに、グローバルでの事例が豊富な他、コスト削減効果も見積もりやすい。これが組織トップへの説明にも一役買った形だ。一方、現場スタッフの巻き込みについては、「ITM室の目指す姿」を最初に設定し、井林氏が号令をかけた。

 そこで重視したのが3つ目のポイント、「エンドユーザー視点を持つこと」だ。具体的には運用担当者にもITMNowの機能開発への参画を促した。ローコード開発できる特徴を生かし、開発、運用人材がそれぞれの立場でより良い機能を考案、実現する環境作りを促進した。NTTデータ先端技術の三木壮馬氏(基盤ソリューション事業本部 マネージドサービス事業部 サービスデリバリー担当)はこう話す。

 「最も大事なことは、エンドユーザーが業務を快適かつ安心して遂行できるかどうか。開発する機能が本当に必要なのか、どのような機能をどう作れば最適か、異なる視点の者同士でコミュニケーションを取りつつ開発する文化を醸成した形です」(三木氏)

NTTデータSMS 法人第一事業部 ITMサービス部 第一ITM運用担当 根本良美氏 NTTデータSMS 法人第一事業部 ITMサービス部 第一ITM運用担当 根本良美氏

 こうした文化は社の中核を担っていく若手人材にもしっかりと受け継がれている。NTTデータSMSの根本良美氏(法人第一事業部 ITMサービス部 第一ITM運用担当)とNTTデータグループの若杉亜以氏(コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム開発担当)はこう話す。

 「ヘルプデスク機能など従業員が利用するITMNowを、より便利に使ってもらうことを意識して開発しています。ITMNowはサービスに不明点がある際に問い合わせをするなど私たち自身もユーザーとなるサービスです。ユーザー目線を持って開発しているからこそ、より良いものにつながっていると考えています」(根本氏)


NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム開発担当 若杉亜以氏 NTTデータグループ コーポレート統括本部 ITマネジメント室 DX推進部 システム開発担当 若杉亜以氏

 「新卒入社してすぐ開発に携わることになりましたが、同期入社の他部門の友人に『ITMNowいいよね、使っているよ』との言葉をかけてもらい、開発のモチベーションが非常に高まりました」(若杉氏)

 NTTデータグループにおいてITMNowプロジェクト推進のきっかけとなったのが「開発と運用の分断」だったように、開発、運用ともに「自部門の効率やKPI」に視野が閉じ、事業貢献が限定的になる例は非常に多い。だが同社のように「何のために」「誰のために」という視点を全員が持つことができれば「何をすべきか」が定まり、組織と人の動き、モチベーションは大きく変わってくる。ServiceNowを活用した“サービス提供者としての活動基盤”は既に確立されているといえるだろう。井林氏は「今、運用管理に求められている役割」をこう展望する。

 「顧客の課題を自らの課題と捉え、解決に向けてチャレンジを継続することが重要です。そのためにはまず第一歩を踏み出すこと、そしてどのような価値を提供すべきかを考え続けること。足を踏み出せば共にチャレンジする仲間は増えていきます。われわれも常にエンドユーザー視点を持ち、“経営に資する運用”を追求、体現していきたく考えています」(井林氏)

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 ServiceNow導入の詳細な経緯は、別記事にて紹介する。

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提供:ServiceNow Japan合同会社、株式会社NTTデータ
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月14日

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