今改めて考える、「日本流DXの勝ち筋」とSIerがもたらす未来

» 2024年03月29日 10時00分 公開
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 社会全体でデジタル化が進展し、ビジネスの在り方も変わりつつある。ITを活用し業務効率化を図る企業も増えたが、デジタルの力で競争力を高めている企業は限定的だ。DX(デジタルトランスフォーメーション)が日本企業にとって有効な一手につながらない真因は何なのだろうか。

 本稿では多数のDXプロジェクトをリードし続けているNECのCDO(最高デジタル責任者)、吉崎敏文氏(Corporate Senior EVP※ 兼 CDO 兼 デジタルプラットフォームビジネスユニット長)にインタビュー。デジタルプラットフォームビジネスユニットによるDX支援の取り組みと、吉崎氏が率いてきたNEC自身の変革から「企業価値向上のドライバー」を今改めて見定める。

(※2024年4月1日就任予定)

「日本流」の勝ち筋は、経営理念に基づく「カイゼン」

──日本の国際競争力低下が叫ばれて久しい中、吉崎さんは現状をどう見ていますか?

吉崎氏 日本は欧米諸国に比べるとまだデジタル発展途上であり、デジタルを活用した企業の革新は道半ばと考えます。そして改善すべきポイントの一つは、ITがビジネスや組織の隅々にまで浸透していないこと。それが「失われた30年」を生んだと思っています。一方、強みは、いったん物事が決まるとインプリメンテーションや展開が速いこと。例えば、コロナ禍でハンコがなくなったことは象徴的な出来事の一つでしょう。また、近年は「ESG(環境、社会、ガバナンス)経営」などが重視されていますが、日本では昔から“三方良し”という世界に誇れるビジネス文化があります。そう考えると、今は企業が大きく変わるチャンスなのです。「本質的な問題を見つけ、改善していく」ことが重要です。

──全てを変えるのではなく、強み、課題を見極めて取り組むことが大切なのですね。

吉崎氏 継続すべきことは継続し、グローバルから見て変えた方がいいことは変える。そこでキーになるのが日本の「カイゼン」の考え方です。ただし私の言う「カイゼン」は、従来のTQCの改善活動ではなく、目的を明確にしたカイゼンで現場での改革を進め、その上でパーパスや経営理念に沿ったトップダウンの取り組みにつなげていくことです。それこそが日本流の勝ち筋です。DXにも通じますが、新しいことだけにフォーカスするのではなく、やるべきことをしっかりやり、その上で変革につなげる。まず「D」(デジタライゼーション)をやり、その結果「X」(トランスフォーメーション)になればよいのです。

──そうしたカイゼンの障害になりがちなことは何でしょうか?

吉崎氏 「何をするのか」という本質が抜け、目的を誤ることです。カイゼン自体が目的になり、ただの作業になってしまわないことが重要です。例えば、カイゼンで得た「20%削減」という数字を見たら「それが何のための削減か」を皆が考えられるようにする。会社全体で「作業ではなく、変革に向けた取り組みなんだ」と理解し、その部分だけの20%削減ではなく、全体の真の生産性につながっているのかどうか、常に意識して動く必要があります。それがないと会社は変わりません。

──本当のゴールが共有されず、取り組みが部門個別最適に陥ってしまう例は多く見受けられます。

吉崎氏 部門個別最適が成り立つのは、かつてのように市場や人口が右肩上がりのときです。現在のように経営環境変化が激しい中では、全社を挙げてビジネス価値を創出していかなければなりません。何のためのデジタル化なのかを明確にし、全体最適に向けて動くことが重要です。

ALT NEC Corporate Senior EVP※ 兼 CDO 兼 デジタルプラットフォームビジネスユニット長 吉崎敏文氏(※2024年4月1日就任予定)

デジタルプラットフォームビジネスユニットの成り立ちとNEC Digital Platform

──NECのデジタルプラットフォームビジネスユニット(以下、DPBU)の役割を教えてください。

吉崎氏 NECの組織は、パブリック、エンタープライズ、テレコムサービスなど、インダストリーごとにお客さまを担当する縦串組織と、製品/サービス、コーポレート、研究開発などを担当する横串組織で構成されます。DPBUは、DXに関わる製品/サービスを横串で横断的に統括しています。

 グローバル企業は、世界中で均質なサービスを提供するために標準化、共通化を進め、ガバナンスを効かせる傾向があります。一方、日本企業は良くも悪くも縦割りで部門個別最適になりがちですが、今後予想される人口減と需要減という社会環境下では競争力の維持がより厳しくなります。そこでNECは全社横断の横軸組織(DPBU)を立ち上げました。DPBUはサイロ化された組織をつなぎ、全体最適を進める役割を担っています。

 私がDPBUの担当になった当初は1400人でスタートしましたが、現在はハードウェアからネットワーク、ソフトウェア、サービスまで扱うようになり、コンサルティング、アライアンス、デリバリー、マーケティングなどを合わせて3万3000人超のメンバーになりました。グローバルで見てもITの上流、中流、下流に対応する全てを機能的に集めた大規模な1つの事業ユニットは珍しいと思います。

 組織の規模が大きければそれだけ最適化の効果は大きくなります。われわれの取り組みはまだ道半ばですが、これが成功すればグローバル展開できるモデルになると考えています。日本の企業にも参考になるはずで、そこまで皆で頑張りたいと考えています。

──これまでにどんな取り組みを行ってきたのですか。

吉崎氏 「ビジネス」「テクノロジー」「コンピテンシー(人材)」を3つのPrincipleとして、「売り方」「売り物」「売る人」を変える取り組みを実践してきました。

 その中で「売る人」については、私がDPBUの担当当初、NECには上流の戦略コンサルタントはいませんでした。DXの実現には、経営視点から戦略構想に落とし込むことが肝要です。そこで、社外からも人材を集め、社内の営業、SEやPMなどのエンジニアをコンバートし、現在500人となるコンサルチームを新たに作りました。そこでは社外の知見を基にNEC独自のコンサル人材育成メソッドを組み立て、リスキリングプログラムも整備しています。

 「売り物」については、NECは技術力を強みにした会社ですから、優れた技術者がたくさんいます。お客さまの要望を聞いて安全安心な製品を作るのは得意技です。

 しかし、NECのエンジニアはお客さまからの要望を基に、とにかく自分で開発してしまう傾向にあります。社内の各部門が、それぞれの市場分野で似たような機能を持つ製品を、別の製品として作る。例えば、顔認証システムは5つのチームが開発していましたが、それらの6〜7割はほぼ共通の仕組みや機能だったのです。

 そこで部門を越えて横串で共通部品を提供するプラットフォームを作りました。それが「NEC Digital Platform」の原点です。いま、NEC Digital Platformは各マーケットを担当するBUにお客さまのDXを支援するためのサービスや機能を提供するとともに、コンサルティングを含めたビジネスを推進する提供価値の総称にもなっています。

ALT DX推進に必要な3つの要素(提供:NEC)

シナジーを生むロジカルでプラクティカルな協業が必要

──顧客満足を見据えて縦割り組織に横串を通すというのは非常に難しいと思いますが、スモールスタートして成功モデルを作り、徐々に拡大させてきているのですね。

吉崎氏 そうです。最初はソフトウェア製品の一部からスタートし、3つのPrincipleを活用して変革のためのフレームワークを整備しました。それをソフトウェア製品全体へと拡大し、ハードウェア製品、ネットワーク製品へと広げ、組織全体の変革につなげてきました。

 もちろん、こうした変革には困難もあります。DXの最初の取り組みの中で、(長年、自社を支えてきた)既存事業のメンバーと意見が食い違う場面もありました。実際、既存事業に変化を求めるDXは、社内に不信感も募ります。そこで気を付けたのは、既存事業と成長事業の加速をセットで進めることでした。具体的には、ビジネス、テクノロジー、コンピテンシーという3つのPrincipleを、成長事業だけではなく既存事業にも同じように適用しました。

 また、同じことを言い続けることも重要です。「All Hands Meeting」や「MeetUP」という対話の機会を作り、現場の声を聞くようにしました。情報も、人事などの機密情報以外は全てオープンにしました。毎週月曜日の朝には、現場のマネジャーから役員までが同じ情報を共有します。5年間の取り組みの中で、このやり方は変わっていませんし、これからも変えるつもりはありません。

──それでも伝統的な大企業ほどマインドセットの変革は困難に思えます。

吉崎氏 着任当初、NECには積極的に発言する文化が必要だと感じ、「言ったことをきちんとフィードバックする機会を作ろう」と思いました。社内ブログで定期的に意見を発信しながら、社員も気軽に意見をフィードバックできるようにしています。情報は自ら発信しないと集まってきません。私だけでなく、皆がフィードバックしてお互いに心に火を付け合わないと変わらないのです。

──一方、内製化が注目される中で、SIerの在り方、ユーザー企業との関係性も問われ続けています。吉崎さんはどうお考えですか。

吉崎氏 まず、ユーザー企業とそれを支援するパートナーという視点では、ユーザー企業にはどんどん内製化を進めてほしいと思っています。その中で、SIerは「お客さまができないこと」を提供する。例えば、顔認証や生成AI(人工知能)など最新テクノロジーやその活用ノウハウ、活用基盤を提供するなどです。これから求められるのは協業です。あらゆる所で分業、協業する必要があります。

 一方、単純な工数積み上げの請負だけを続けていたらSIerはダメになります。人口減の時代に、それで成長し続けることは極めて難しいからです。

──SIerは今後どのような方向に進めばよいとお考えですか。

吉崎氏 製品やサービスのコモディティ化に伴う共通化、自動化がカギと考えています。ハードウェアやソフトウェア、最近ではAIもコモディティ化が進んでいます。これらはデリバリーを共通化、自動化することで、迅速かつ効率的に提供できますから、そこでわれわれの価値を示せます。そもそもユーザー企業よりも業務知識が圧倒的に少ない中で、SIerが全面的にシステム開発を支援することは簡単ではありません。ユーザー企業との協業を見据えながら、SIの仕組みをどう共通化、自動化、自律化していくかを定義できるSIerが生き残っていくのではないでしょうか。

 NECの場合、システム構築、運用の自動化を実現する「Exastro IT Automation」という自社開発のオープンソースソフトウェアがありますが、これをNEC Digital Platformに採用しており、よりスピーディーに価値を提供できるよう、継続的にサービス提供基盤の強化に取り組んでいます。また、お客さまにより良い価値を提供するために、サービス提供のリードタイムを減らす取り組みを進める中で、NECのAI「cotomi」を開発プロセスに組み込む活動も行っています。要件定義から開発、テスト、運用といったプロセスの中で業務にAIを活用できる余地はたくさんあります。SIの本質は専門性です。専門性に磨きをかけることが重要です。

──日本企業の競争力強化に向けた支援体制は着々と整っているのですね。

吉崎氏 競争力を高めるには、しっかりとシナジーを生むロジカルでプラクティカルな協業、いわば「高度化された協業」が必要だと思っています。そのために何ができる会社なのか、NECのアイデンティティーと自分たちができるケイパビリティを示していきたい。それが私のチャレンジであり、お客さまや市場の成長のためにNECと一緒に挑戦する仲間を見つけることにつながれば幸いです。

ALT NEC Digital Platform(提供:NEC)

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提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年5月16日

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