社会全体でデジタル化が進む中、IT開発、運用は「ビジネス展開」とほぼ同義になり、ビジネスを支えるインフラ運用にもいっそうのスピードと効率が求められている。「ビジネスを届けて成長させる」という本来の目的を達成するために、インフラをどう見直せばよいのか。
社会全体でデジタル化が進む中、IT開発、運用は「ビジネス展開」とほぼ同義になり、ビジネスを支えるインフラ運用にもいっそうのスピードと効率が求められている。本稿では、複雑化するITインフラを見直すポイントや、クラウド活用の現状をテーマに開催されたセミナーの模様をお伝えする。
セミナーには調査・コンサルティング会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)の入谷光浩氏(シニア・アナリスト)と、日本情報通信の灘波誠二氏(クラウド事業本部コンサルティング営業部 部長)、田部井貞治氏(クラウド事業本部クラウドサービス部 グループ長)、アイティメディアの内野宏信(DX編集統括部 統括編集長)が登壇した。
@ITが2024年2〜3月に実施した読者調査の結果、『運用管理で最も重視しているアクション』は、「コスト削減」(24.5%)や「セキュリティ」(15.8%)が上位を占めた。一方、「エンドユーザーの満足度」(6.5%)や「インフラ整備のスピードアップ」(5.9%)は限定的だった。
『システムの存在する場所』は、「オンプレミス(従来型の物理環境)」が63.7%と大多数を占め、「パブリッククラウド(IaaS)」は28.8%にとどまった。「オンプレミス(仮想化された環境)」は29.4%だった。『パブリッククラウドの課題』は、「ランニングコストが高い」「セキュリティの不安」「トラブルに自社で対応できない不安」が上位を占めた。このランキングは、2023年と比較してほぼ同じであり、10年以上、大きな変化は見られない。
「クラウド活用の成熟度はあまり伸びていない印象です。『注目しているもの・検討しているもの』の設問では、AI(人工知能)技術を用いた自動化、効率化が初登場でトップ。現場の窮状が透けて見えるようです」(内野)
ITRも、クラウドの利活用に関する調査を継続している。入谷氏は「黎明(れいめい)期から回答の傾向はあまり変わっていない」と指摘する。
「運用面では、やるべきことが増えすぎて『オンプレミスだけの時の方がましだった』と言われることすらあります。オンプレミスとクラウドとではプロセスやツールも変わってしまうので、人手不足が加速し、ミスも増えてしまう。大きな障害にはならなくとも、ちょっとした誤りでヒヤッとすることが増えていると聞きます。そうしたことが、この調査結果にも出ているように感じます」(入谷氏)
入谷氏はオンプレミスとクラウドの使い分けについて「データ」「プロセス」「パフォーマンス」「運用」「コスト」という5つのポイントが重要だとする一方、コストばかりが注目され、データやセキュリティの観点が軽視されているとも指摘した。
「オンプレミスの最大のメリットは、機密性の高いデータを強固に管理できること。クラウドはパフォーマンスが非常に優れているので、複数の環境からのデータアクセスや多数のプロセス処理が得意です。運用面やコスト面でもそれぞれ優れた点があります。大まかにまとめると、オンプレミスはSoR(System of Record)、クラウドはSoE(System of Engagement)という使い分けが重要です」(入谷氏)
SoR/SoEを起点とした使い分けについて灘波氏は「SoRは、企業が長年培ってきたプログラムやデータ資産といった企業の価値そのもので、しっかり守って継承していくことが重要です。お客さまとの接点になるSoEでは、最新のテクノロジーを積極的に活用したいというニーズがあります。これらの融合を支援することが、私たちのミッションであると捉えています」と述べる。
具体的な例としては、モノリシックなアプリケーションは、資産継承を重視したサーバ「IBM Power」やサーバOS「IBM i」を活用しながら資産として維持しつつ、ハードウェアやインタフェースは新しい技術へ刷新していく。
「アプリケーションを維持することは重要ですが、OSやハードウェアを『塩漬け』にしていてはリスクになります。IBM Power/IBM iは継承性に優れており、きちんとサポートできる環境に移行できます。モダナイズを考えていても、現状分析のステップで止まってしまうことが少なくありません。IBM Power/IBM iなら、複雑なアプローチなしにOSや基盤を刷新できます」(田部井氏)
今あるものを変えようとする際、全面的に変えてしまおうと考えるケースも少なくないだろう。検討する上では、継承を意識しながら段階を踏んでいくことが重要になるという。
「『10年、20年稼働してきたシステムはクラウド移行しなければ』という極端な結論になりがちです。たとえハードウェアが老朽化したとしても、その中のプロセスやロジックは企業にとって最も重要ですし、それが現時点で最新のものかもしれません。それらを考慮した上で、今後のIT戦略を考えることが不可欠です」(入谷氏)
ITRが10年以上にわたって調査してきた結果によると、クラウドへの移行実施率は10年間でわずか9ポイントの増加(17%→26%)にとどまり、予定のままで実施に踏み切れない企業も少なくないという。
灘波氏は「重要であるが故に守らなければならない、外部からの攻撃を受けるわけにはいかないといった観点が現在も重視されていることを裏付けるものだ」と分析する。
「クラウド移行の取り組みとして、COBOLのアプリケーションをJavaにリライトする例があります。しかし、最も重要なビジネスロジックやデータを変えるわけではありません。果たして、プログラムだけ変えることに意味はあるのでしょうか。最も重要なプログラム、ロジック、データは継承し、新しいものを使いたいときにはAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を活用して融合していくような工夫が重要なのだと、調査結果を見て強く感じています」(灘波氏)
では、企業に適した、オンプレミスとクラウドとの使い分け、「真のハイブリッドクラウド」を目指すには何が必要なのか。どのようなロードマップが適切なのか。
「私たちが推奨しているのは、企業の中核となるSoRを資産継承性に優れたIBM Power/IBM iでしっかり維持しつつ、SoE側で新しい技術を応用したユーザーインタフェース(UI)や多種多様なサービスを活用する方法です。極めて価値の高い資産であるSoRは変える必要がなく、一方で変化の激しいユーザーニーズをSoE側でスピーディーかつ低コストに対応できるのです」(灘波氏)
企業によっては、既存のシステムがブラックボックス化してしまっていることもあるだろう。日本情報通信は、多様な技術、ツールを活用したIT資産の可視化も支援していると説明する。
「IBM iはOSの中にデータベースを組み込んでいるので、両者の親和性が非常に高く、OSを含めて維持できるのは大きなメリットです。データ資産の可視化がしやすく、解析も容易で、活用も推進しやすいと考えています。IBM Power/IBM iをお薦めしたいもう一つの理由として、ロードマップがかなり先まで提示されている点があります。私たちもこのロードマップとともにサービスを構築、提供しています。安心して使い続けることができる基盤です」(田部井氏)
日本情報通信は、オンプレ(インフラ)提供からソフトウェアやサービス、システムの開発まで幅広く、顧客の課題解決を支援するサービスを提供している。IBM iを活用した「Power Cloudサービス」は、オンプレミスによる資産の継承の重要性やクラウドリフト/シフトの適用方法の両方の視点で顧客を支援する。同社はハウジングサービスも提供しているため、周辺システムも含めて環境を移行できる。統合的な運用を支援するMSP(マネージドサービスプロバイダー)サービスにも注目したい。
「日本情報通信のサービスは、オンプレ/クラウドのメリットを享受しながら資産を継承しつつ、新しいビジネスの展開も支援してくれる最適なサービスだと感じます」(入谷氏)
経営に貢献するインフラと運用に変えていくためにも、まずは日本情報通信に相談してみてはいかがだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年6月24日