インテルの最新第6世代Xeonプロセッサーは何が違う? AI時代に獲得した新たな進化とは電力効率も性能も追及

さまざまな企業がAI技術の活用に前向きとなっている中で、その土台となるプロセッサにも注目が集まっている。近年では処理性能だけでなく、消費電力についても関心が高まっている。

» 2024年09月03日 10時00分 公開
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 AI(人工知能)技術が急速な発展を遂げ、近年では生成AIが企業のみならず一般消費者の間でもブームになっている。ITの発展が社会にインパクトを与え、それを支えるコンピューティングの重要性も高まっているわけだが、同時にさまざまな課題も顕在化しつつある。その端的な例が電力消費量の増大だ。

 国立研究開発法人 科学技術振興機構によれば、2018年時点では世界各国のデータセンターによる消費電力は年間190TWhとの試算だったが、2030年には15倍程度の年間3000TWhまで増加するという予測がされている。国内では、燃料価格の高騰により法人向けの電気料金も値上げ傾向が続いている。消費電力の増加と電気料金値上げはITシステムの運用コストを増大させている。

※出典:科学技術振興機構ウェブサイト(https://www.jst.go.jp/lcs/proposals/fy2020-pp-03.html

 一方で、AIをはじめとする新たなコンピューティングへのニーズの高まりを受け、これまで以上に膨大な演算能力が必要とされている。そのため、演算性能を高めつつ電力消費量を抑制する高効率化技術がこれまで以上に重要となっている。

 そうした状況を受けて、インテルが発表した新世代のサーバ向けプロセッサ「インテル® Xeon® 6 プロセッサー」では、前世代までとは一線を画す電力効率を実現する新モデルが追加された。

ワークロードの多様化と最適化

 プロセッサの進化は、ムーアの法則として知られる半導体製造における微細化技術の進展によるところが大きかったが、現在では回路のサイズが原子のサイズに迫るところまで来ており、物理的にこれ以上の微細化は困難という段階に至っている。現在も微細化技術の進化は続いているものの研究開発は難しくなっており、半導体製造技術に加えて新たに性能を向上させる手法として最適化技術の重要性が高まっている。全方位であらゆる性能を向上させるのは困難だが、必要な部分に特化して最適化することで狙った性能を向上させる可能性があるためだ。

 現在は、生成AIなどを活用するユーザー企業から、AI処理を高速実行できる高性能なプロセッサのニーズが高まる傾向にある。しかし、AI処理に必要な電力は一般的に他のアプリケーションよりも多く、このままでは電力消費量が発電量を上回ってしまう懸念まで生じるほどの事態になっている。

 コンピューティングに対するニーズは何もAI処理だけに限るものではない。社会の急速なデジタルシフトに伴い、オンラインショッピングをはじめとして日常生活のさまざまな場面でインターネットを通じたサービスが提供、取引されるようになった。こうした処理では、複雑な演算処理を高速に実行する性能よりも、大量に届くリクエストを迅速に処理し続ける能力が求められる。

処理性能特化か、消費電力も効率化するか

 近年ではプロセッサの設計技術も進化しており、処理内容の特性に応じて最適化されたプロセッサを用意することでニーズに過不足なく応えることができる効率的なコンピューティングが実現できるようになってきた。

 こうした技術開発の動向を形にしたのが、インテルが提供する2種類のプロセッサだ。同社は現在、演算性能特化型の「Pコア」(Performance-cores)と電力効率を高めた「Eコア」(Efficient-cores)の2つを開発して、さまざまなワークロードに対して最適化できるようにしている。

 インテル 技術本部 技術部長の渡邉恭助氏は両者の違いについて「コアの性能に振ったものがPコア、電力効率を高めてより高密度化しようとしたのがEコアのコンセプトです」と紹介する。

ALT インテル 渡邉恭助氏

 2021年に発表した「第12世代インテル® Core プロセッサー・ファミリー」ではPコアとEコアを1つのプロセッサに組み込むハイブリッドアーキテクチャを採用してユーザーに提供した。そして最新世代となる「インテル® Xeon® 6 プロセッサー」(以下、Xeon® 6)では、同一プラットフォームでのPコア搭載モデルとEコア搭載モデルをそれぞれ用意している。Xeon®の進化の歴史上でも特筆すべき新たな展開と位置付けられるだろう。


ALT

 より詳しくPコアとEコアの機能を比較すると、例えばコアに内蔵されるキャッシュメモリの構成が違う。一部の演算器を省略するなどの工夫によりEコアのサイズはPコアよりも小さく、同じスペース内により多くのコアを集積することが可能だ。一方で1クロック当たりの演算数やデータキャッシュの容量ではPコアに軍配が上がる。

 ユースケース別に見ると、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)やAIなどの負荷の重い演算処理にはPコアが適する。コア当たりの演算負荷がさほど重くないコンシューマサービスやクラウドネイティブアプリケーションなどでは、同時処理が可能なトランザクション数が増えるため、コア数が多いEコアの方が有利になる。

ALT PコアとEコアの主なユースケースの違い(提供:インテル)

 Xeon® 6には、6700シリーズおよび6900シリーズの2種類のプラットフォームがある。両者の違いはプロセッサの物理的なサイズおよび想定される最大消費電力量だ。6700シリーズと6900シリーズのいずれもPコアのモデルとEコアのモデルがあるが、プラットフォームは共通化されている。同一のマザーボード/BIOSでプロセッサだけの差し替えが可能となっているため、コスト負担を軽減できる。

 Xeon® 6は、最初に6700シリーズのEコア搭載モデル「インテル® Xeon® 6 プロセッサー 6700Eシリーズ」を発表しており、2024年第3四半期に6900シリーズのPコア搭載モデル「インテル® Xeon® 6 プロセッサー 6900Pシリーズ」、次いで2025年第1四半期に「インテル® Xeon® 6 プロセッサー 6900Eシリーズ」や「同6700Pシリーズ」などを発表する予定となっている。

ALT 6700シリーズと6900シリーズの概要(提供:インテル)

6700Eシリーズの魅力は電力効率だけではない

 Xeon® 6の全体像が分かったところで、最初に発売された製品である6700Eシリーズの詳細を見ていこう。前述の通り、Eコアが採用されたXeon®プロセッサとしては初の製品であり、特に電力効率に関しては従来のXeon®から大幅に向上している。パフォーマンスの高さも見逃せないポイントだ。一般的なベンチマークテストでは、搭載するコア数の増加によって、Pコア相当の性能を持つ従来製品よりもパフォーマンス面で上回ることもある。

 サーバの更新サイクルは、減価償却のルールやメーカーのサポート期間などの影響から3〜6年程度になっているのが一般的だ。そこで、ユーザー企業が近々買い換えを検討するであろう製品として、2019年に発表された「第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー」と比較してみよう。

 「SPECint」「SPECfp」といった汎用(はんよう)的なベンチマークテストで、パフォーマンスは約3倍以上、電力効率(ワット当たりのパフォーマンス)でも2倍以上という高スコアを達成しており、サーバを更新することで大きなメリットが得られることが分かる。「従来と同様の性能でいいのであれば、サーバの更新によってラック数が3分の1に削減できることになります。削減したスペースにAI処理用のノードを設置するという運用も可能となるでしょう」(渡邉氏)

ALT 生成AIで画像を生成した際の第2世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー(左)とXeon® 6処理性能を比較(提供:インテル)

 さらに、前世代となる「第5世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー」との比較でも、一般的なベンチマークで同等以上のパフォーマンスを、1.2倍以上の電力効率で達成するという結果を出している。「Eコアは元々性能を追求したコアではないので性能面では厳しいと思われる方もいらっしゃると思いますが、コア数の差が起因して、実はPコアベースの第5世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーと比べても遜色ない性能を達成しています。一部を除いて多くのベンチマークで上回っているという結果になっています」と渡邉氏は語った。

 HPCや一部のAI処理など、とにかく演算性能が必要というワークロードに関しては6900Pシリーズの使用を想定しており、ワークロードの特性に応じてそれぞれ最適化されたプロセッサを選択可能になったという点がXeon® 6のポイントだ。

Xeon® 6が企業にもたらす新たな選択肢

 急速な進化を続けるAI技術に乗り遅れないようにするため、さまざまな企業がこれまで以上のコンピューティングパワーを確保しようと動き出している。しかし地球環境の観点からはエネルギーや資源の無尽蔵な消費はできないということも明らかだ。電力料金についての見通しが不透明な中ではランニングコストへの配慮も欠かせない。

 こうした中、サーバ分野でも従来のように処理性能だけを追求するのではなく、消費電力にも目を向けた選択肢が生まれたことは、企業にとって歓迎すべき状況だろう。「近年では、AIなど一部のユースケースを除いて処理性能は既に十分という企業の声も珍しくありません。そうした企業にとってEコアはランニングコストも抑えることが可能で、歓迎する声を頂いています」と渡邉氏は語る。

 Webサーバなどのワークロードでは従来のサーバに比べて大幅な効率向上が見込まれるため、企業全体で見た場合の環境負荷や運用コストを軽減できる可能性がある。この機会に従来のIT機器の構成を見直し、ワークロードに対して適切な機器が割り当てられているのか、その効率はどの程度か、という点を改めて検討してみてはいかがだろうか。

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提供:インテル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年11月2日

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