Oracle、DB2、SQL Serverの運用管理を比較する:RDBMSアーキテクチャの深層(6)(4/4 ページ)
本連載はOracleを使ったデータベースシステムの開発・運用管理にある程度の知識を持つ読者を対象に、Oracle以外の商用RDBMSであるMicrosoft SQL ServerとIBM DB2とのアーキテクチャの違いを明らかにし、マルチベンダに対応できるデータベースシステムの設計・開発・運用ノウハウを紹介していく。(編集局)
バックアップ・リカバリ管理
バックアップ・リカバリについて、第3回「OracleとSQL Server、導入・構築・運用の違いとは?」でOracleとSQL Serverについて比較しました。本稿ではさらにDB2を含めて各製品を比較し、バックアップ・リカバリの基本となる部分について解説していきます。
まずバックアップ・リカバリの概念を図7に示します。
バックアップにはどのような構成要素があるのでしょうか? ここでバックアップの種類、単位、バックアップツールについて、各RDBMSを比較してみました(表2)。
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サポートされているバックアップの種類に呼び方の違いはありますが、実質的な相違はありません。バックアップツールも各製品に付属しています。ただバックアップの単位が少し異なっています。OracleとSQL Serverはバックアップ単位としてデータファイルがありますが、DB2ではバックアップ単位とはなっていません。これはDB2がデータベースや表スペースの内容をバックアップユーティリティによって出力するためです。OracleやSQL Serverではデータベースがオンライン状態でもバックアップモードにすることで、OSコマンドによるデータファイルのコピーが可能となります。
また、今回扱う対象からは外れますが、堅牢性が求められるシステムで採用されるバックアップ方法として、ディスクのミラー分割によるバックアップもあります。これはOSやハードウェアが提供するコピー機能を利用したものです。
図8に示したバックアップ方法はOracle、DB2、SQL Serverで使用されますが、大きな違いがあります。Oracleでは、オンライン状態でもオンラインバックアップモードにすることで表領域の更新はログに書き込まれるため、ミラー分割によるバックアップが可能です。SQL Serverでは、オンライン状態でのバックアップ中でもデータファイルに対し更新が可能であり、バックアップモードに変更しなくても構いません。しかしDB2もオンライン状態でバックアップは可能ですが、ディスクへの書き込みは停止し、その間の更新はログバッファに書き込まれ、COMMITはディスクへの書き込み停止を解除するまで待ち状態となります。ただしログバッファに空きがある場合(空きがある限り)、更新トランザクションの発行が可能です。
Point
- Oracleはさまざまなバックアップ方法が利用でき、OSコマンドによるファイルコピーをサポートしている。
- DB2はデータファイルでのバックアップではなく、データベース、表スペースのバックアップとなる。
今回のまとめ
最終回となる今回は、Oracle、SQL Server、DB2のユーザー管理、データファイル管理、バックアップ・リカバリ管理について基礎的な内容を踏まえて比較しました。Oracleをよく利用されている方にとっては、SQL ServerやDB2の運用管理の違いに少し戸惑いを感じるかもしれませんが、この違いを理解することは非常に重要です。この基礎的な内容を把握することで、製品の選択やシステム管理方法を決定、実行する際に、よりよい判断を下せるようになるでしょう。
連載の終わりに
本連載に執筆した6回の記事では、Oracle、SQL Server、DB2のパフォーマンス・チューニング、ロッキング・アルゴリズム、運用管理の違いなど、さまざまな視点から比較を行ってきました。その中で、常に心掛けてきたのは、「現場の視点」です。マニュアルや解説本には記載されない「開発の現場の視点」「RDBMSの実使用者という視点」から、少しでもそれぞれの特性を表現できれば、また、少しでも読者の方々に各RDBMS製品の特性を理解していただき、RDBMSの選定・特性に合わせた設計・開発・管理を行ううえでの一助になれば幸いです。長い間ご愛読いただき、本当にありがとうございました。(連載完結)
アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ株式会社
代表取締役社長 安間 裕
著者紹介
アクセンチュアから生まれた、企業改革のためのシステム開発を手掛けるエンジニア集団。安間裕が代表取締役社長を務める。楠智裕は現在通信事業者向け大規模基幹システムプロジェクトでDBAを担当し、データベースに精通したシステム・アナリスト。
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