基本設計で作るべき「論理データモデル」の考え方:ゼロからのデータモデリング入門(6)(1/3 ページ)
第5回「システム企画に役立つ概念データモデル作成の基本」では、3つのデータモデルのうちシステム企画の段階で作成する「概念データモデル」についてお話ししました。今回は、開発フェイズの基本設計、詳細設計で行うデータベース設計(データモデリング)の流れをお話ししてから、基本設計で作成する「論理データモデル」にフォーカスして解説します。
データモデリング作業の大きな流れ
システム企画段階で作成した「概念データモデル」は、ビジネス活動を販売、製造などの機能分野単位で大きくとらえ、ER図で表現したものでした。データの視点で俯瞰(ふかん)的にビジネス活動をとらえることにより、企業が管理すべきデータが明確になります。販売機能分野における、販売計画から販売管理までなど、ビジネス活動のつながりも、データの視点で可視化することでシステム化対象範囲を確定することができました。次はこの「概念データモデル」をベースにデータモデリングを行っていきます。
一般的にデータモデリングは、論理データベース設計、物理データベース設計、データベース適用設計という流れで進めます。それぞれの設計段階で行うことを簡単に述べると、「データ整理」「データ調節」「データ実装準備」になります。
- 論理データベース設計(データ整理):
管理対象となるデータを洗い出し、整理して「論理データモデル」を作成します。 - 物理データベース設計(データ調節):
論理データモデルを元に実装を考慮して「物理データモデル」を作成します。 - データベース適用設計(データ実装準備):
実装する前に、データベースシステムとしてのファイル構成やパラメータ定義などのデータベース・ソフトウェアに特化した適用設計を行います。
表1に、データモデリング工程で行う流れと作業を細分化したものをまとめました。
No | 大工程 | No | 工程 | 内容 |
---|---|---|---|---|
1 | 準備段階 | 1.1 | 役割定義 | データモデル実施するためには、「業務担当者」、「データモデリング担当者」、「データベース実装担当者」、「システム開発担当者」が必要であり、各担当の役割を定義する |
1.2 | 方針の定義 | ・情報共有方法の決定 ・データ標準化方針の決定 |
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1.3 | データを捕捉する | ・データを収集する | ||
2 | 論理データベース設計 | 2.1 | データを整理する | ・データを正規化する ・データを最適化する ・データを一般化する ・データの安定性を検証する |
3 | 物理データベース設計 | 3.1 | データを調節する | ・処理効率を設計する ・テーブルを設計する ・制約を設計する ・ビューを設計する ・データセキュリティを設計する ・インデックスを設計する ・データ領域を設計する |
4 | データベース実装準備 | 4.1 | データの実装準備をする | ・RDBMS固有の設計をする ・データベースを生成する |
論理データベース設計実施準備
論理データベース設計の前に、役割の定義、方針の定義、データの捕捉という3つの作業が必要になります。これらを実施しないことにはデータ整理がスムーズに進みません。
1.役割の定義
論理データベース設計を実施する上で必要となるのが「業務ルールが分かること」「必要なデータが分かること」「業務上分かりやすい名称の定義ができること」です。これらを実現するためには「業務が分かる人のアサイン」「対象データの所在が分かる人のアサイン」などが必要です。
2.方針の定義
論理データベース設計を実施する際に課題となるのが名称の標準化です。例えば同じデータを指しているのに「顧客」「取引先」「得意先」など異なった名称で表現されている場合があります。論理データベース設計は同じようなデータを整理・統合していく作業なので、ここで標準化の方針を決めておかなければなりません。
3.データの捕捉
概念データモデルで確定したシステム化対象範囲に対して、データ項目、テーブル定義書、画面設計書、画面イメージなどからデータの捕捉を行います。さらに、論理データベース設計を効率的に行うために、ここで収集したデータ項目をあらかじめ業務単位(マーケティング、販売、製造といった業務機能単位)に分類しておきます。
【参考】インフォーマルデータの捕捉
インフォーマルデータとは、ユーザーがExcelなどを利用して独自に作成して利用しているデータ(予実対比を行う上での予算データなど)を指します。これらは属人化しているため、システム化対象からの捕捉だけでは漏れることがあります。インフォーマルデータは、業務のプロであるユーザーにヒアリングして捕捉する必要があります。
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