緊急時に備えてリカバリDVDを作る:Mondo Rescueでお手軽バックアップ(2/3 ページ)
サーバ管理者の皆さん、バックアップはきちんと取っていますか? この連載では、Mondo Rescueというバックアップツールを使って、非常時のサービス停止時間をなるべく短くする体制を作る方法について解説します。(編集部)
単純なコピーでは問題は解決しない
OSのバックアップを取るために、膨大なファイルを丸ごとアーカイブしている方もいるでしょう。しかし、ハードディスクに障害が発生したとき、この方法でアーカイブしたファイルを単純に復旧させてもOSは起動しません。ファイルを戻す前にパーティションの作成、ファイルシステムの作成、ブートローダのインストール、ファイルシステムのラベル作成など、多くの作業が必要なのです。論理ボリュームマネージャやソフトウェアRAIDを利用している場合は、作業はより複雑になります。Linuxを熟知したエンジニアでないと復旧は難しいでしょう。
「dd」コマンドでハードディスクの中身を丸ごとコピーしている方も多いでしょう。ddコマンドを使えば、パーティションやファイルシステムの作成などの問題を気にする必要はありません。ハードディスクの内容を完全に複製し、イメージファイルの形で出力させることや、ハードディスクのデータをほかのハードディスクに複製することが可能です。
しかし、ddコマンドにも問題はあります。例えば、2TBのハードディスクを使っている場合、使用領域/未使用領域の区別なく2TBの領域を丸ごとバックアップすることになるのです。2TBのハードディスクのうち1TBも使っていないとしても、2TB分のバックアップメディアが必要になります。
バックアップメディアの容量を無駄にするだけでなく、バックアップやリカバリにかなり長い時間がかかってしまうという問題もあります。また、リカバリ時にはファイルを戻すために一時的にOSを起動しなければなりませんが、このOSにどんなものが使えるのか確かめておく必要もあります。
USB接続のハードディスクをサーバごとに用意するのもあまり現実的ではありませんし、ハードディスクはバックアップメディアとしては信頼性に欠けるところがあります。そして、RAID環境では一時的にハードディスクを追加できないことが多く、バックアップの保存先をどうするかという問題も発生します。
緊急時のサービス停止時間を短くできる
そこでご紹介したいのが、「Mondo Rescue」というオープンソースソフトウェアのバックアップツールです。Mondo Rescueは冒頭で例に挙げたようなデータのバックアップにも使えますが、その真価を発揮するのは、OSそのものや、追加でインストールしたアプリケーションをバックアップするような場面です。
Mondo Rescueを使えば、簡単な操作でOSとアプリケーションのファイルをまとめてバックアップできます。また、リカバリ時にはパーティションやファイルシステムの設定のほか、OSやアプリケーションのファイルの復旧、各種設定までを簡単な操作で処理してくれるので、ハードディスクが全損したとしても容易にバックアップ前の状態まで復旧できるのです。
頻繁に更新される各種データファイルは差分、増分のバックアップを取る必要があることは冒頭で述べたとおりです。さらに、ほとんど変更が加わることがないOSやアプリケーションのファイルはMondo Rescueでバックアップしておけば、緊急時に復旧にかかる時間を短くできるので、サービス停止時間を短くできます。
簡単にリカバリDVDを作成できる
Mondo Rescueでバックアップを実行すると、バックアップファイルとして拡張子が「.iso」のファイルができます。これはCDやDVDに書き込めるイメージファイルです。このイメージファイルはOSやアプリケーションのバックアップファイルを収めているだけでなく、コンピュータを起動させるためのLinuxカーネルも入っています。このファイルをDVDに書き込むと、DVDから起動するリカバリメディアが完成するというわけです。専用のサーバや、ストレージを用意することなく、リカバリDVDだけで簡単にリカバリ作業に取りかかることができます。
Mondo Rescueはバックアップ時に、対象となったコンピュータで動作しているLinuxカーネルを利用して専用の起動イメージを作成します。そのため、バックアップ対象となったOSが動くコンピュータであればリカバリ先を選びません。特殊なハードウェアを搭載しているコンピュータや、OSのインストール中にドライバを追加して構築したような環境では、すでに動いている環境のカーネルを使う利点が際立ちます。
さらに、Mondo Rescueはバックアップ時にコマンドやカーネルモジュール、ライブラリなどを追加できるようになっています。こうしておくと、リカバリ時にいろいろな操作が可能になります。
Mondo Rescueのほかにも、OSとアプリケーションをまとめてバックアップできるツールは存在します。そのほとんどは、リカバリ時にコンピュータを起動させるためのOSとしてそのツール独自の環境、あるいは多くのコンピュータの起動に使えそうなLinuxカーネルを利用しています。このようなツールを使うと、特殊なハードウェアを搭載しているようなコンピュータではリカバリディスクから起動することすらできないということがあるのです。
Mondo Rescueは必要なファイルを集めてファイル単位でバックアップします。ファイル単位でバックアップするので、バックアップ時にユーザーが不要と指定したファイルを除外することもできます。ファイルを指定して必要なものだけを復旧させることも可能です。そして、バックアップ時にはハードディスクの未使用領域を無視してくれるので、大容量のバックアップメディアを用意する必要もありません。
Mondo Rescueはリカバリ時にファイルシステムとパーティションの設定をし、その上にファイル単位でバックアップデータを戻していきます。これは、バックアップ元とリカバリ先でハードディスクの記録容量が変わっても、問題なくリカバリできるということです(もちろん、リカバリ先にはバックアップデータを書き込めるだけの十分な空き容量が必要です)。リカバリ時にパーティションの構成を変更したり、ファイルシステムを変えたり、ソフトウェアRAIDや論理ボリュームマネージャの構成を変更しても、その上からファイルを戻せます。
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