SAPジャパンは11月27日、インメモリデータベース「SAP HANA」の最新サービスパック「SPS5」を発表した。HANAは、2010年のリリース以来半年毎にサービスパックを提供しており、SP4は6月にリリースされている。同社 リアルタイムコンピューティング事業本部長 馬場渉氏はSPS5の最大の特徴として「アプリケーション開発環境の拡張」を挙げた。
HANAを取り巻く環境整備が好調の一因
SAPは2012年の上期好調な業績を発表しており、そのけん引役の1つがHANAだ。HANAはワールドワイドの年間売上高が3.2億ユーロに達し、日本の採用社数も50社を超えたと言う。「HANAが売れているというだけでなく、当社が従来弱かった金融や小売業への導入が増えているのが特徴だ。日本では特に小売業に好調で、先日も他社からの乗り換え案件が成立した。HANA登場前後でこれらの業界には70%の売上増となっている」(馬場氏)。
馬場氏はHANAが売れている背景として、「HANAを取り囲む環境やマインドの変化もある。いま、SAPでは“design thinking”を提唱し、さまざまな場面で活用している。例えば、従来のアプリケーションベンダの営業は、家電メーカーに対して『部品点数が2割減る』ことをウリに販売していたが、HANAの場合にはさらにその先の『部品点数が減ることで価格が下がり、消費者が喜ぶ』という、いままでよりも一歩先を顧客と共に考えてHANAの導入を進めている」と説明した。
そのほか、オンライン教材を120本用意することでHANA技術者を1000人育成したり、Amazon web servicesとの連携による「SAP HANA One」、スタートアップ企業20社が出店している「SAP HANA Marketplace」の開店など、HANAを取り巻く環境整備が整ってきている点も大きいとした。
ビッグデータ分析だけでなく、開発環境も包含して高速化
今回発表された「HANA SPS5」で追加された新機能は主に「エンジンの拡張」「プラットフォーム統合とオープン性」「開発環境の拡張」「データセンターオペレーション」の4分野。馬場氏は「特に『開発環境の拡張』と『データセンターオペレーション』が特徴だ」と強調した。
開発環境の拡張では、アプリケーション開発環境をHANAに内包した。具体的には、HANAのDBMS内にアプリケーションサーバを搭載し、JavaScript、SQLScript、HTML5、JSONなどを使用したアプリケーションをHANA上で直接開発できるようになったという。HANAの検索や可視化のためのブラウザや、iOS向け開発ツールキットなども用意した。
馬場氏は、「いままでは『HANA≒ビッグデータ』という用途が多く、それ以外は目立っていなかった。また、『HANAは速いけど、アプリケーション開発環境が遅いので、開発ライフサイクル全体の高速化で見るといま一歩』という顧客の声もあった。実際、英バーバーリーからはそのような要望を貰っている。今回、開発環境をHANAに包含し、開発環境も高速化したことで、ライフサイクル全体がかなり高速化し、ビッグデータ以外の用途も増加していくはずだ」と説明した。
データセンターオペレーションでは、ミッションクリティカル用途に耐え得る機能拡張がされた。具体的には、外部バックアップツールとの連携や、他データセンターへのフェイルオーバーオプション、セキュリティ強化のための拡張や監査ログなどだ。
「SAPは、ERPにおけるミッションクリティカル分野の経験から、ミッションクリティカルに必要な条件は十分に理解している。その条件を満たすための機能を今回実装した。これらの機能で、ミッションクリティカル用途にも十分に耐え得ると考えている」(馬場氏)
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