仮想化基盤共通化、DR対応DC運営を自社で実践
ネットワンシステムズは自社データセンターの基盤を刷新、運用効率化、リソース効率化とともに、運用ノウハウの蓄積に向けたプロジェクトを推進している。
ネットワンシステムズは2013年2月4日、自社データセンターのリニューアルについて発表した。今回の発表は同社東京地区データセンターの仮想化環境を、ネットワークファブリック機器などを活用した全社共通の仮想化環境基盤に変更するものだ。
ネットワンシステムズでは、2009年以降、自社システムの物理サーバをデータセンターに統合するプロジェクトを進めている。2011年までのサーバ集約により、一定の効果はあったものの、仮想化環境の基盤そのものが共通化していないことから、リソース配分のムダや運用体制のムダ、パフォーマンス監視面での課題などが残っていたという。いずれも、サーバ集約とは別に個々の業務システムの仮想化環境そのものが「サイロ」化していたことに原因があるという。
今回、これら課題を解決し、かつ、サーバ仮想化による運用プロセス効率化のノウハウを獲得することを目的に、データセンター間連携を視野に入れた自社環境の共通仮想基盤への移行を決定したという。業務の効率化も視野に、2013年5月に予定している同社オフィス移転を機に、仮想デスクトップ環境のユーザー数も現在の1000件から3000件に増やす予定だ。
「現段階でも仮想デスクトップ環境を提供するサーバとファイルサーバ間のネットワーク帯域が想定以上にひっ迫している一方で、業務ポータルなどは負荷に余裕がある状況だが、仮想マシン間の個別の通信負荷については特定が難しい状況だった」(ネットワンシステムズ システム企画グループ システム企画本部 プラットフォーム部 サービス開発チーム 古森 浩一氏)
以前の環境では、物理スイッチ側でネットワーク負荷を見ていたが、これでは、物理マシン間の通信は把握できてもその上に乗るどの仮想マシンであるかが特定しにくく、また、スイッチを介さない仮想マシン間の通信の状況が掌握できないという問題があったという。
仮想サーバ管理の基盤としてはVMware ESX 5.1環境で統一し、ネットワークトラフィックについてもVMware側のツールで統合管理することで可視化する。ネットワーク、サーバ、ストレージなどの構成設計を共通化し、特定システム以外の領域でも運用担当者が保守できる体制を整えていくという。
イーサネットファブリック製品ごとの特性、使いどころが見えた
今回の刷新では、運用ノウハウ蓄積も兼ね、イーサネットファブリック機器を2種類使用している。1つはシスコNexux 7000シリーズ、もう1つはBrocade VDX 6700シリーズだ。古森氏によると、2製品は異なるアプローチの製品であることから、両者の適用シーンが明確になったという。
「シスコの提供するイーサネットファブリック機器は、旧来のスパニングツリー型のネットワークとの互換性を重視している。このため、ある程度、ネットワークの知識があるユーザーが適切に設定して利用する場面に適している。一方の、ブロケードの提供するイーサネットファブリック機器は、煩雑さを排除して純粋にイーサネットファブリック環境を簡便にできるよな作りになっている。運用シーンでは両者を目的に合わせて使い分けられると考える」(古森氏)
この他、ストレージ設計ではEMC VNX 5700の持つFAST VP機能(ストレージの自動階層化機能)について、「自動階層化により、ストレージ設計そのものにかかる時間が削減できた」と高く評価した。
仮想マシン管理環境を統合するためには、仮想化ソフトウェアや管理ツール、仮想マシンが持つハードウェアのバージョン、ファイルシステムのバージョンなどを共通化する必要がある。これについても、今回のプロジェクトによってどの順序でバージョンアップを行うべきか、データ移行ツールには何が使えるか、事前準備工数と効率を検討する際の指標となるノウハウを得られたとしている。
現段階では、東京DCと大阪DCでは、Active/Standby構成を採用、ネットワークはレイヤ2接続で、ストレージはストレージ側のデータコピー機能で同期しているが、将来的には通信回線を見直して、東京−大阪間のActive/Active構成での運用を検討するとしている。
これら、データセンターの基盤整備は、同社のデモ施設「ソリューション・ブリーフィング・センター」で提示している内容に即している。同社では、データセンター基盤刷新プロジェクトを通じて、実運用向けのノウハウ蓄積と顧客への提供を進めたいとしている。
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