PureData3兄弟、誰が誰の子?/SQL2016策定の動向は? 芝野先生に聞いた:Database Watch(2013年2月版)(2/3 ページ)
いろいろ出てきたPureSystems製品群のうち、PureDataラインアップの特徴を整理しよう。後半はSQL標準策定の動向を識者に突撃取材。
PureData3兄弟、元は……誰だっけ?
あらためてPureSystemsを整理しましょう。IBMは2012年4月に新しい製品カテゴリ「エキスパート・インテグレーテッド・システム」としてIBM PureSytemsを発表しました。ハードウェアとソフトウェアが一体化した垂直統合型システムで、専門家の知見も実装しているところがウリとなっています。
ラインアップは徐々に拡大しており、現在大く分けて3つのカテゴリに分類できます。
基盤向け(IaaS)のPureFlex、アプリケーションプラットフォーム向け(PaaS)のPureApplication、そして2012年10月に仲間に加わったのがデータプラットフォーム向けのPureData。データ処理に特化しています。
PureData3兄弟、それぞれの性格と、なぜ3兄弟なのかを聞いてみた
このPureDataもさらに3つあり、トランザクション処理に注力した「for Transactions」、分析処理に注力した「for Analytics」、おおざっぱにいえばその両方を併せ持つ「for Operational Analytics」があります。
なぜこの3つに分けたのでしょうか(なお、ここでは兄弟扱いしていますが、オフィシャルの呼称ではありませんのでIBMに「PureDataの次男坊をもらおうかな」と言っても通じない可能性が高いので気をつけてくださいね)。日本IBM ソフトウェア事業 インフォメーション・ マネジメント&BA事業部 テクノロジー・エバンジェリスト中林 紀彦氏は「IBMはF1とラリーカーを一緒にはしません」と説明していました。これはどういうことかというと、最適化するにあたり、ワークロード、つまり課された仕事に応じて分けているとのことです。
特にトランザクションと分析は処理として考えると実に対照的です。トランザクション処理はランダムな読み取りや更新が発生し、狭いデータ範囲に頻繁にアクセスするのに対し、分析処理は順次読み取りが多く、広いデータ範囲に一気にアクセスします。そのためチューニングですべき方向性も正反対といっていいほどです。これらを一緒にするのは合理的ではないと考えているのでしょう。
確かにオラクルも(垂直統合型の)エンジニアドシステムにはExadataがありますが、分析向けにはExalyticsという別製品があるので、トランザクションと分析は分けるのが賢明なのかもしれませんね。
長男:for Analytics Netezzaの血を引く
3つのPureDataをもう少し見ていきましょう。冒頭に述べたように「for Analytics」は分析向けであり、中身はNetezzaをそのまま継承しています。
複雑なチューニングや運用が不要なシンプルさとペタバイト規模のデータ容量に加え、FPGAを用いているのも特徴です。データの解凍とセレクトなど負荷のかかる部分を専用のハードウェア(FPGA)で行うため、CPUの負荷を軽減し、高い性能を実現しています。ちなみに関係者に聞いたところによると、PureDataの中で最も数が出ているのがこちらだとか。それもそのはず。Netezzaそのままなので実績があるからでしょう。
次男:for Transaction DB2 pureScaleの血を引く
一方、「for Transaction」はトランザクション向けで、拡張性や高い継続可用性に注力しています。ベースにはDB2 pureScaleのテクノロジが組み込まれていますが、垂直統合型製品として見れば(Netezzaと違って)新顔です。
余談ですが、中林氏に取材した日はちょうど「for Transaction」の実物がIBMの箱崎事業所に納入された日であり、夜にはClubDB2もありました。ClubDB2開始前にはIBMの「中の人」がPureData実物の写メを参加者に披露する場面もあり、稼働するものはやはり感慨が違うようです。なお冒頭のPureData写真は箱崎事業所の受付で展示されているもので、いわば「モック」です。
三男:for Operational Analytics Smart Analytics Systemのいとこ
話を元に戻し、3兄弟の末っ子を見てみましょう。「for Operational Analytics」はオペレーショナル分析ワークロード向けに最適化されています。既存の製品としては「IBM Smart Analytics System」という分析用アプライアンスサーバに近いようです。
具体的には、例えばクレジットカード決済の不正利用を検知するシステムで使います。過去の利用動向を分析して不正を検知するためには、同時ユーザーに対応し、即座に過去のデータを分析しなくてはなりません。こうしたトランザクションと分析を併せ持つ用途に向いています。
PureSystemsの特徴として押さえておかなくてはならないのが「パターン」です。おおざっぱにイメージするならテンプレートです。目的や用途ごとにまとめられた専門家の知見やノウハウで、PureSystems Centerで公開されています。IBMだけではなく、IBMパートナーからも提供されているのが興味深いところです。2月14日には新たなパターン開発の移行も表明しています。
なおIBMは年初の記者会見で2013年ソフトウェア事業における注力分野のトップに「PureSystemsとMobile Enterpriseによる柔軟で俊敏なIT基盤の実現」を掲げています。今後どういう形で発展していくのか興味深いところです。
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