導入の背景
積雪地帯ならではの業務効率化への工夫が必要
大堀商会は昭和53年設立、創業35年の老舗建築企業だ。新潟県を中心に「水道設備工事」「住宅リフォーム」「業務用空調メンテナンス」の3事業を柱に展開している。創業時は空調業をメインに行っていたが、現在では住宅リフォームなども手掛ける。得意とする水回り施工の技術をベースに、下越地方ならではの住宅事情を鑑み、ユーザーの声を取り入れて売り上げを拡大している。最近では、毎年住宅建材・設備メーカーが主催するコンテストにおいて、さまざまな賞を受賞している。
大堀商会 代表取締役 大堀正幸氏(以下、大堀社長)は、「新潟県は積雪地帯なので、冬場の現場の稼働率は確実に下がります。そのため、繁忙期の業務・作業効率には人一倍気を使っていますね。ただ、新潟市内は積雪地と言っても、東北や北海道のような寒冷地ではないんです。従って、家も初めから防寒を意識したいわゆる“寒冷地仕様”で建てていない家が多く、非常に寒い。そのため、二重窓を入れるなど、防寒を意識したリフォーム需要は多いです」と下越地方の事情を説明した。
導入の経緯
繁忙期の業務効率を上げるには、Office 365の導入が最適解だった
大堀商会では、数年前よりベンダにサーバ構築などを依頼。ファイル管理、顧客管理、会計・販売システムなどをサーバ上に構築していた。
同社でシステムを担当していた営業部長の大堀信幸氏(以下、大堀部長)は、「昔から、ITによる業務の効率化に興味があったので、業務に必要なシステムを導入してきました。しかし、専任の管理者がいない点や、当時はクライアントOSがWindows XPのままだったこともあり、人が増えていくほどPCの管理が大変になり、セキュリティも心配になってきました」と当時を振り返る。
また、同社では前述のように「繁忙期の業務効率向上」が至上命題として挙がっていた。大堀社長は、「繁忙期には、外回りを行う従業員の労働時間のうち、移動時間が20〜30%も占めます。また、営業部員は移動時間に加えて、40%の時間を見積もり作成に費やしていました。この2大業務を、5%でも10%でも削減できれば、会社全体として大きく利益貢献が見込めますし、従業員の労働環境改善にもつながります。これらは非常に重要な経営課題でした」と説明する。
このような環境下で数年間が経過し、ソフトウェアやハードウェアの更新時期となったのが2011年。ベンダに見積もりを依頼したところ、とても導入出来る金額ではなかった。これを機に、大堀部長は本格的な情報収集を始める。同社の目指す「繁忙期の業務効率向上」を実現するための解として、「いま話題のクラウドや仮想化、最新のIT技術を導入すれば、もっと投資対効果や業務効率を上げられるのでは?」という意図の下、各種勉強会やセミナーなどに積極的に参加していった。
そこで出会ったのが、その後ITパートナーとして共同で取り組んでいくティーケーネットサービス 代表取締役の武田勇人氏だ。武田氏は講演でマイクロソフトの最新技術や、仮想デスクトップ、Office 365などの導入事例を紹介。最新事例に触れ感銘を受けた大堀部長は、早速武田氏に提案を依頼した。
「武田さんのデモや事例紹介を見て、『移動時間の削減』と『見積もり作成の効率化』という2つの大きな目的を達成するためには、『いつでもどこでも使える』というクラウドサービスのメリットを享受することが、重要だと分かりました。中でも、最も効果が見込めたのが『Office 365』だったのです。『Office 365』であれば、外出先からでも簡単にPowerPoint、Exel、Word、Outlookを編集できますからね。武田さんは、入れ替え期限の来ていたサーバの入れ替えプランだけでなく、その後のOffice 365やWindows Phone、仮想デスクトップなどを年間でプランして分かりやすくロードマップとして計画立案してくれましたので、安心してOffice 365への移行を決断できました。高齢の従業員も多い当社では、いきなりドカンと入れ替えると習熟が追いつきません。その点まで考慮して、少しずつ変えていく心遣いに、成功するイメージが湧きました」(大堀部長)
導入の効果
熱中症対策にLync!? グループウェアが繋ぐ現場と本社
このような経緯で、「Office 365」の導入と従来のサーバリプレースを武田氏に依頼した大堀部長。2012年4月にサーバを仮想化して台数を削減しつつ、リプレースを実施。その後、1年間かけてOffice 365、Windows Phone、仮想デスクトップ(VDI)を導入していった。
中でも特徴的なのが、Office 365に付属する「Lync Online」の使い方だ。
同社の場合、仕事柄、職人の単独作業が多い。特に空調メンテナンスでは、長時間機械室や屋上での単独作業が行われることもある。そのため夏場の熱中症対策は、企業にとって非常に重要な問題だ。そこで同社では職人全員にWindows Phoneを支給。定期的に事務所から呼び掛けることで、労務管理を行っているというのだ。この方法であれば、万が一熱中症で倒れてしまった場合でも、Lyncのステータスや応答の有無を把握していれば迅速に対応できる。
さらに作業の打ち合わせや朝礼なども、Lyncで実施。移動時間の削減と、日々のコミュニケーション不足の解消という2つの大きな問題を改善できた。
大堀社長は、「従来は5〜10分程度の朝のミーティングのために、わざわざ一度社に寄ってもらっていたんです。その点、Lyncがあれば客先でもミーティングができるので直行直帰が増え、大きく業務改善できています。移動時間を削減し、その時間をお客さまの為に使えるのは、競合との大きな差別化にもなりますからね。スマートフォンとクラウドという“いつでもどこでも使える環境”を、最大限活用していると言えると思います」と導入メリットを説明する。
同社の成功の秘訣は、やはり手厚いサポートだと大堀部長は言う。同社では、前述のようにITリテラシーがそれほど高くない従業員も多く、環境の変化には十分な配慮が必要だった。左記のように、移行に十分な時間をとっただけでなく、いわゆる“落ちこぼれをなくす”ために、Lync Onlineのデスクトップ共有機能を使った個別サポートにも力を入れた。
同社 水彩スタッフの武内裕子氏は、「この1年間でさまざまなシステムが変わりましたが、その度に対面や遠隔でサポートしてもらえたのは助かりました。VDIの導入で家からでもまったく同じ環境で仕事ができるのは、家庭を持つ者としては助かります」と説明する。
今後の展開
ITの活用度が低いリフォーム業界全体の生産性を底上げしたい
大堀商会は現在、ティーケーネットサービスと共同でOffice 365と連携した営業マンの育成を支援するアプリ「リフォーム営業支援システム」を開発中だ。このアプリは、同社のノウハウを生かし、見積もりや工程表などを標準化し、これらの工数を大幅に削減できるというものだ。これにより、見積もり作成時間の大幅な短縮だけでなく、タブレットと組み合わせた外販も目指している。
大堀社長は、「我々が身を置くリフォーム業界は、まだまだ顧客満足度の低い業界です。逆に言えば、まだまだ成長の余地がある業界なのです。IT化に関して言えば、まだまだ進んでいません。当社は幸いなことに優れたパートナーに恵まれてIT化を進め、生産性を高めることができました。わたしはこの知見を積極的に業界全体に広め、業界全体の生産性の底上げをしていきたいと思っています」と、今後の大きな夢を語った。
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