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IPv4とIPv6のデュアルスタック環境を構築しようWindows Server 2012 ×「ちょっとだけ連携」でネットワーク管理を便利に(6)(1/3 ページ)

今回からは、IPv6導入時のWindowsとネットワークデバイスの関係について、4回に分けて確認します。まず、ベースとなる環境を構築するため、IPv6の有効化やIPv6アドレスの割り当てなどを行います。

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 今回からは、IPv6導入時のWindowsとネットワークデバイスの関係について、4回に分けて確認します。

 本稿では、最初にベースとなる環境を構築するため、IPv6の有効化やIPv6アドレスの割り当てなどを行います。

IPv6の概要

 最初に、本稿で構築する環境に関連するIPv6のキーワードを確認しましょう(IPv6を初めから学習する場合は、連載記事「これから始めるIPv6」で分かりやすく説明しています)。

 IPv6を利用するには、コンピュータやネットワークデバイスに、IPv6アドレスを割り当てる必要があります。IPv6で使用するユニキャスト通信用のIPアドレスは、利用可能な範囲(スコープ)によって、図1の種類があります。


図1 IPv6で使用するユニキャスト通信用のアドレス

(1)グローバルアドレスは、通常はISPから取得します。インターネットでも、プライベートネットワークでも利用できます。

(2)ユニークローカルアドレスは、IPv4のプライベートアドレスに相当するアドレスで、必要に応じて割り当てることができます。

(3)リンクローカルアドレスは、IPv6が有効化されたインターフェイスに、自動的に構成されます。近隣探索プロトコルや、アドレスの自動設定などに利用されます。

(4)(1)〜(3)以外に文書で例示するためのアドレスとして「2001:db8::/32」がRFC3849で定義されています。

 IPv6アドレスの長さは128ビットです。これを16ビットずつ8つに分割し、「:(コロン)」で区切って16進数で表記します。また、図1のfe80::/10や2001:db8::/32など、IPv6アドレスの末尾についている「/」以降を「プレフィックス」といいます。IPv6では、プレフィックスを使って図2のようにネットワークアドレスや、アドレス範囲を表しています。


図2 IPv6のプレフィックス

 また、IPv6アドレスは長いため、図3のように省略して表記できます。


図3 IPv6アドレスの省略表記

 デフォルトの状態では、ネットワークデバイスはIPv4が有効、IPv6が無効化された状態です。一方、WindowsはIPv4とIPv6の両方がデフォルトで有効化されています。Windowsでipconfigコマンドを実行すると、以下のようにユニキャストIPv4アドレス(10.1.2.101)とユニキャストリンクローカルIPv6アドレス(fe80::8413:db4:fb70:c3d0)が表示されます(画面1)。


画面1 ユニキャストIPv4アドレスとユニキャストリンクローカルIPv6アドレスが表示される

 リンクローカルアドレスは図1にもあるように、同一サブネット内での通信用に、IPv6が有効化されたインターフェイスに自動的に割り当てられます。リンクローカルアドレスだけではサブネット間通信が行えないため、本稿ではユニークローカルユニキャストアドレスをネットワークデバイス、Windows Server、Windowsクライアントに割り当てて、IPv6でサブネット間の通信が行えるようにします。

 ユニークローカルユニキャストアドレスは、IPv4のプライベートIPアドレスに相当するもので、RFC4193で定義されています。もちろんグローバルユニキャストアドレスでも社内で通信はできますが、ISPの変更などによってグローバルアドレスは変わることがあります。このためISPに依存しないアドレスが必要な場合は、ユニークローカルアドレスを使用します。

 ユニークローカルユニキャストアドレスの構造は、図4の通りです。


図4 ユニークローカルユニキャストアドレスの構造
フィールド 意味
プレフィックス ユニークローカルアドレスでは、「1111110」を使用します。
L 0は予約されているため、1を指定します。1はプレフィックスがローカルに割り当てられることを表します。このフィールドの値を1にした場合、ユニークローカルアドレスはFD00::/8になります。
グローバルID 任意の値を設定できます。IPv4のプライベートアドレスは、異なる組織(例えばA社とB社)での重複が考慮されていませんでした。このため、同じプライベートIPアドレスを使用する組織が合併したときに、IPアドレスの変更が必要でした。ユニークローカルアドレスではこの点を考慮し、なるべくアドレスが重複しないように、グローバルIDにはMACアドレスとNTPサーバーから取得した日時などを元にランダムな値を作成し、これをグローバルIDとして使用することで組織間の重複をなるべく回避することが推奨されています。kameプロジェクトのサイト「Generate Unique Local Address」でグローバルIDを求めることもできます。
サブネットID 組織内の、各サブネットに割り当てます。プレフィックスからサブネットIDまでが、ネットワークプレフィックス(ネットワークアドレス)です。
インターフェイスID IPv4アドレスのホストアドレスに相当します。IPアドレスは、ホスト単位ではなくネットワークインターフェイス単位で必要なため、IPv6で正確な呼び方になりました。

 次ページからは、これらの概要を踏まえて、ネットワークデバイスにIPv6を実装する方法を、シスコのISRルータやレイヤ2スイッチを使って確認しましょう。

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