IPv4とIPv6のデュアルスタック環境を構築しよう:Windows Server 2012 ×「ちょっとだけ連携」でネットワーク管理を便利に(6)(2/3 ページ)
今回からは、IPv6導入時のWindowsとネットワークデバイスの関係について、4回に分けて確認します。まず、ベースとなる環境を構築するため、IPv6の有効化やIPv6アドレスの割り当てなどを行います。
ネットワークデバイスのIPv6設定
これまでに構築したIPv4ネットワークでIPv6を有効化し、図5のようなデュアルスタック環境を構築します。IPv6アドレスにはユニークローカルユニキャストアドレス、fdf4:1b39:8777::/48を使います。
本稿で使用するfdf4:1b39:8777::/48は、前ページで説明したkameプロジェクトのサイト「Generate Unique Local Address」で計算したグローバルIDを使用しています。
割り当て対象 | IPv6アドレス(手動で構成) |
---|---|
ルータまたはレイヤ3スイッチのクライアントコンピュータ側インターフェイスのIPアドレス | fdf4:1b39:8777:1::1/64 |
レイヤ2スイッチL2SW1のIPアドレス | fdf4:1b39:8777:1::2/64 |
ルータまたはレイヤ3スイッチのサーバ側インターフェイスのIPアドレス | fdf4:1b39:8777:2::1/64 |
レイヤ2スイッチL2SW2のIPアドレス | fdf4:1b39:8777:2::2/64 |
図5のネットワークの物理トポロジは、以下を想定しています。
- ルータを使用している場合……http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1212/17/news007.html
- レイヤ3スイッチを使用している場合……http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1212/17/news007_2.html
IPv6アドレスの割り当て方法には、自動と手動があります。本稿では、ネットワークデバイスには手動、Windowsには自動でアドレスを割り当てます。
ルータ、レイヤ3スイッチのIPv6設定
シスコISRルータやCatalystスイッチにIPv6アドレスを手動で割り当てる場合、以下のパターンがあります。
(1)128ビットをすべて手動で指定する
(2)fdf4:1b39:8777:1::/64など、ネットワークプレフィックスを指定し、インターフェイスIDはMACアドレスから自動生成する(EUI-64、図6)
(2)のEUI-64は、EUI-48(MACアドレス)を拡張したアドレス体系です。図6のように、MACアドレスの7ビット目を反転させ、24ビット目以降に「FFFE」という値を挿入して64ビットのインターフェイスIDを自動生成します。
実際にインターフェイスにこれらの方法を使ってIPv6アドレスを手動で割り当てるには、ipv6 addressコマンドを使用します。
(config-if)# ipv6 address IPv6アドレス/プレフィックス長 [eui-64]
インターフェイスにIPv6アドレスを割り当てます。eui-64オプションを指定する場合は、インターフェイスIDは指定せずに、ネットワークプレフィックス(ネットワークアドレス)のみを指定します。
例1)(config-if)# ipv6 address ipv6 address fdf4:1b39:8777:1::1/64
例2)(config-if)# ipv6 address ipv6 address fdf4:1b39:8777:1::/64 eui-64
実際にルータやレイヤ3スイッチにIPv6アドレスを割り当ててみましょう。本稿ではEUI-64は使わずに、手動でインターフェイスIDまで指定します。
最初に、ルータの例を紹介します。今回想定しているネットワークでは、ルータの2つのポートは、FastEther net 0/0がクライアント側サブネットに、FastEther net 0/1がサーバ側サブネットに接続されています。
Router1#configure terminal
Router1(config)#ipv6 unicast-routing
IPv6はデフォルトでは無効化されているため、最初に有効化します。
Router1(config)#interface FastEthernet 0/0
Router1(config-if)#ipv6 address fdf4:1b39:8777:1::1/64
クライアント側サブネットに接続されているインターフェイスにIPアドレスを割り当てます。この例では、プレフィックスが/64なので、「fdf4:1b39:8777:1」がネットワークプレフィックス、「::1(0000:0000:0000:0001)」がインターフェイスIDを表しています。
Router1(config-if)#interface FastEthernet 0/1
Router1(config-if)#ipv6 address fdf4:1b39:8777:2::1/64
サーバ側サブネットに接続されているインターフェイスにIPアドレスを割り当てます。
Router1(config-if)#end
Router1#show ipv6 interface brief
IPv6アドレスの割り当て状態を確認します。
FastEthernet0/0 [up/up]
FE80::227:DFF:FEA7:1A98
FDF4:1B39:8777:1::1
FastEthernet0/1 [up/up]
FE80::227:DFF:FEA7:1A99
FDF4:1B39:8777:2::1
FastEthernet0/0と0/1に、ユニークローカルユニキャストアドレスが割り当てられています。また、IPv6が有効化され、通信ができる状態になったので、リンクローカルユニキャストアドレスも自動的に割り当てられていることが確認できます。
レイヤ3スイッチの場合も同様のコマンドを使用します。ただし、今回想定しているネットワークでは、物理インターフェイスではなく、VLANの仮想インターフェイスにIPv6アドレスを割り当てる必要があります。
L3SW1#configure terminal
L3SW1(config)#ipv6 unicast-routing
L3SW1(config)#interface vlan10
L3SW1(config-if)#ipv6 address fdf4:1b39:8777:1::1/64
L3SW1(config-if)#interface vlan 20
L3SW1(config-if)#ipv6 address fdf4:1b39:8777:2::1/64
L3SW1(config-if)#end
この例では、クライアント側サブネットがVLAN10、サーバ側サブネットがVLAN20とし、IPv6アドレスを割り当てています。
L3SW1#show ipv6 interface brief
IPv6アドレスの割り当て状態を確認します。
Vlan1 [administratively down/down]
unassigned
Vlan10 [up/up]
FE80::2237:6FF:FEBC:C241
FDF4:1B39:8777:1::1
Vlan20 [up/up]
FE80::2237:6FF:FEBC:C242
FDF4:1B39:8777:2::1
(以下省略)
VLAN10とVLAN20の仮想インターフェイスにIPv6のユニークローカルユニキャストアドレスが割り当てられていることが確認できます。また、自動的にリンクローカルアドレスが割り当てられていることも確認できます。
IPv6アドレスは自動設定を行うのが基本ですが、ネットワークデバイスやサーバなど、手動設定を行いたいものもあります。この場合、デフォルトゲートウェイのIPv6アドレスやDNSサーバーのIPアドレスなども手動で入力する必要があります。
IPv6では、デフォルトゲートウェイのIPアドレスには、レイヤ3デバイスのリンクローカルアドレスを指定します。このため、あらかじめ、レイヤ3デバイスのリンクローカルアドレスを手動で分かりやすい値に設定しておくと、手動でアドレス設定を行うコンピューターのデフォルトゲートウェイ設定がしやすくなります。
以下に、ルータの例を紹介します。
Router1#configure terminal
Router1(config)#interface FastEthernet 0/0
Router1(config-if)#ipv6 address fe80::1 link-local
Router1(config-if)#interface FastEthernet 0/1
Router1(config-if)#ipv6 address fe80::1 link-local
Router1(config-if)#end
この例では、クライアント側サブネットに接続されたインターフェイス(FastEthernet 0/0)と、サーバ側サブネットに接続されたインターフェイス(FastEthernet 0/1)に、fe80::1というリンクローカルアドレスを割り当てています。リンクローカルは、ローカルサブネット内でしか使用されないため、同じアドレスを設定しても、重複とは見なされません。
Router1#show ipv6 interface brief
FastEthernet0/0 [up/up]
FE80::1
FDF4:1B39:8777:1::1
FastEthernet0/1 [up/up]
FE80::1
FDF4:1B39:8777:2::1
リンクローカルアドレスが手動設定した値に変更されたことが確認できます。
レイヤ3スイッチの場合は、VLANの仮想インターフェイスに設定を行います。
L3SW1#configure terminal
Enter configuration commands, one per line. End with CNTL/Z.
L3SW1(config)#interface vlan 10
L3SW1(config-if)#ipv6 address fe80::1 link-local
L3SW1(config-if)# interface vlan 20
L3SW1(config-if)#ipv6 address fe80::1 link-local
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