6600台の仮想マシンを収容可能、EMCがミッドレンジストレージを刷新:アクセス性能は従来の4倍に
EMCジャパンは、ミッドレンジのストレージ「VNX」シリーズを出荷開始したと発表した。アクセス速度を既存モデルの4倍に向上させた。
EMCジャパンは2013年9月5日、ミッドレンジのストレージ「VNX」シリーズを刷新し、同日出荷を開始したと発表した。フラッシュメモリ(SSD)の利用を前提に設計してSSDの高速性を最大限に引き出したという。同時に、マルチコア化が進むプロセッサに向けて各ジョブのプロセスをマルチスレッド化してコントローラの処理性能を向上させ、アクセス速度を既存モデルに比べて大幅に向上させたとしている。NFS(Network File System)によるファイル共有に関するベンチマークテスト「SPECsfs2008_nfs」の結果は58万796IOPSで、データベース管理システム(DBMS)を使ったベンチマークテストでは73万5000IOPS。これらの値は、既存のモデルのそれぞれ4倍に当たるという。
EMCジャパンのマーケティング本部で本部長を務める上原宏氏は、「ストレージ装置への需要は、より汎用的なミッドレンジに移ってきている」とし、その背景には仮想化の浸透があると指摘した。現在、データセンターでは仮想化技術の導入が進み、ストレージ装置がボトルネックになりつつある。CPUの多コア化などによってサーバは複数の仮想マシンを稼働させるのに十分な処理性能を備えるようになった一方、それら多数の仮想マシンからストレージ装置にアクセスが集中するからだ。
そのため、1台のストレージ装置当たりに格納する仮想マシン(の仮想ハードディスクファイル)の数を少なめにすることでアクセス速度の低下を防いでいるという。ただそうすると、ストレージ装置の台数が増え、管理の手間も含めてコスト高につながる。新しいVNXでは、最上位モデルの場合、6600台分の仮想マシンを格納できるという(仮想マシン1台当たり50IOPSを確保するという条件の下、同社がベンチマークテストを実施した結果)。これは、既存の最上位機種の6倍に当たる。
こうしたアクセス速度の高さを支えるのは、同社が「MCx」と呼ぶ技術である。新VNXの最上位モデル「VNX8000」は、1台のコントローラ当たり8コアのXeonプロセッサを2ソケット備え、デュアルコントローラ構成としている。このように多くのコアの性能を十分引き出すために、RAID処理やデータの入出力処理、キャッシュ処理といった各ジョブのプロセスをマルチスレッド化した。従来のVNXでは各ジョブのプロセスはシングルスレッドで、コアごとに実行するプロセスが固定されていた。そのため、使用率の低いコアがあったとしても、そのコアでほかのジョブを実行できず、プロセッサの利用効率が低かったという。
さらにコントローラの設計を、SSDの利用を前提とすることで、コントローラが性能のボトルネックにならないようにした。既存のVNXではハードディスク装置(HDD)に向けてコントローラを設計していたため、HDDよりもアクセス性能の高いSSDを利用したときに、その性能を完全には引き出せていなかったという。
ただし、SSDはHDDに比べて価格が高いため、多くの台数を導入しにくい。そこで、重複排除機能を実装して、ストレージ容量の利用効率を高め、必要とするSSDの数を少なくて済むようにした。1次ストレージに重複排除機能を実装する例はこれまであまりなかったが、その理由は、「アプリケーションの多くがDBMSだった」(米EMCのアジアパシフィック&ジャパン ユニファイドストレージディビジョンでシニアプロダクトマーケティングマネージャーを務める兼市佐江氏)という。最近では仮想化の導入が進み、特にVDI(Virtual Desktop Infrastructure)の仮想ハードディスクを多数格納する例が増えている。こうした用途では、例えばOS部分は共通であることが多く、同じデータを複数格納することになり、重複排除が効きやすい。VNXでは、8Kバイト単位で重複排除を処理し、その処理はバックグラウンドで実行するのでデータ入出力への影響はほとんどないという。
新しいVNXシリーズは、5機種からなる。最下位モデルの「VNX5400」は、最大250台のディスク装置を内蔵でき、最大容量は750Tバイト(未フォーマット時)。SANのホスト数は最大1024である。最上位モデルの「VNX8000」は、最大1500台のディスク装置を内蔵でき、最大容量は4500Tバイト(未フォーマット時)。SANのホスト数は最大8192である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 仮想テープドライブは不要に?:EMC、重複排除ストレージ「Avamar 7」が保護ストレージ「Data Domain」との連携を強化
AvamarとData Domain製品の連携が強化。多様なアプリケーションのデータを保護ストレージに効率的に格納できるラインアップを発表した。 - 企業動向:「Pivotalジャパン」設立、EMC、VMware、GE連合のPaaS製品群が本格展開へ
Cloud Foundryを活用したPaaS環境や大量データ分析向けの製品群を展開するPivotalが、日本法人を設立。日本企業のデータ活用を本格的に支援する体制を整えた。 - 企業動向:米EMCがフラッシュストレージ管理ソフトウェア開発元を買収、製品強化へ
EMCがストレージ管理ソフトウェアを買収。EMC XtremSWの機能拡張などが期待される。 - 店舗などで利用する映像素材は全て内製:ドン・キホーテ、ファイル共有基盤にストレージ製品「EMC VNXe3150」を導入
ドン・キホーテは、映像コンテンツを社内共有するためのファイルサーバとして、エントリ向けストレージ製品「EMC VNXe3150」を導入、2013年3月から本番稼働を開始した。