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Windows Azureはエンタープライズにもクラウドボーンにも“最適解”を提供する【特別鼎談】国内DC開設に見えるマイクロソフトの本気度

東日本と西日本の2か所にデータセンターを開設して、一気に勝負に出る――。マイクロソフトは、日本市場でのWindows Azureに本気で取り組む構えだ。これまでWindows Serverを利用してきたエンタープライズと、クラウドボーンのネット系ビジネスの両市場に向け、マイクロソフトはどのような“最適解”を提供していくのか。日本マイクロソフトの藤本浩司氏と砂金信一郎氏に、Publickey編集長の新野淳一氏が話を聞いた。

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当初からの構想が「クラウドOS」として結実

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日本マイクロソフト株式会社 サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 マネージャー 藤本浩司 氏

新野氏 多くの企業が待ち望んでいたWindows Azureの国内データセンター(DC)が、東日本と西日本に間もなくオープンします。このタイミングで一つ確認しておきたいのですが、“ベンダクラウド”は当初から予定されていたのでしょうか。始まった頃は、「Windows Azureこそ唯一のWindowsクラウド」という位置付けだったと記憶しているのですが。

藤本氏 実際には数年前から進めていたのですが、昨年秋のマイクロソフトカンファレンス2013で発表した「クラウドOS」ビジョンで完成形になったと考えていただければよいでしょう。

砂金氏 レイ・オジーがクラウド開発をスタートさせた時から、Windows Serverをサービスとして外部提供している「ホスター」の方々にもいずれは使っていただくことになっていました。たまたま、最初のユーザーがマイクロソフトであったということです。

新野氏 これまで、Windows AzureとWindows Serverのベーステクノロジーは同じではあるものの、構築されるクラウドは別のものでした。今後は、両者が統合されていき、より緊密な連携がとれるようになるのでしょうか。

藤本氏 そうです。Windows Server 2012からわずか1年でWindows Server 2012 R2をリリースできたということは「クラウドOS」ビジョンによって、クラウド用に開発した機能をそれだけ素早くWindows Serverに組み込めるようになったということです。また、現時点ではほとんどのアプリケーションがHyper-Vに対応していますから、オンプレミスの業務システムについてもクラウドに“バトンを渡せる”ようになっています。

新野氏 クラウドとオンプレミス間の連携が深まり、一般企業がプライベートクラウドを簡単に構築できるようになると、ハイパーバイザを含めた管理ツール、具体的にはSystem Center 2012 R2の役割がさらに重要になってきますね。

藤本氏 Windows AzureとWindows Server用の管理ツールとして、マイクロソフトではSystem Centerがベストだと考えており、お客さまにもそのように説明しています。ただし、われわれはAPI(Application Programming Interface)をきちんと公開しており、それをサポートしている管理ツールなら問題なくお使いいただけます。

砂金氏 Windows AzureのAPIに対応したものであれば、クラウドの世界で標準的な管理ツールも自由に使っていただけます。また、シェルスクリプトによる作業の自動化も可能です。こうした柔軟さが、ネット系ビジネスのように最初からクラウドありきの“Cloud-born”(クラウドボーン)のお客さまには歓迎されているようです。

マイクロソフトはクラウドでも日本市場に“賭ける”

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日本マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 エマージングテクノロジー推進部 部長 砂金信一郎 氏

新野氏 当初は唯一のWindowsクラウドだったものが、ホスターにも提供され、APIも公開される――。そうなると、どのように差別化するかがビジネス上のテーマになるのではないでしょうか。顧客には、マイクロソフトのWindows Azureにするか、ホスターのパートナークラウドにするかの選択肢が生じるわけですから。

藤本氏 マイクロソフトは、Windows AzureとWindows Serverという2つのプラットフォームを開発し、それを世の中に広げていくことが使命であると考えています。唯一自負できるのは、クラウドアーキテクチャを自ら作れる数少ないソフトウェア企業の1社であるということ。競合との差別化や損得勘定ではなく、Windows Azureという素晴らしいクラウドのアーキテクチャを使っていただくことがわれわれの活動の一番重要な部分なのです。

砂金氏 「こわくて一歩が踏み出せない」という企業の背中をそっと押してあげ、これまでマイクロソフトと接点のなかったクラウドボーン企業にビジネス&テクノロジーを示す――。Windows Azureは、そういうクラウドです。パートナークラウドと一緒にやることで“いいこと”はたくさんあります。懸念材料はまったく思いつきません。

新野氏 ここで、Windows Azureの価値を再確認したいと思います。パートナー企業のホスターが同じようなクラウドを提供できるようになった今、マイクロソフトは顧客にどのような価値を訴求されるのでしょうか。

藤本氏 いろいろとありますが、まず、日本国内にWindows Azureのデータセンターが開設されるということ。データの置き場所と回線レイテンシ(遅延)の2つの問題が解決することも大きなトピックですが、マイクロソフトがそこまで“日本市場にベット(賭け)する”という点が最も重要です。また、サポートについてもこれまで同様、国内でしっかりとやっていきます。一方、パートナークラウドにも共通した価値としては、お客さまが今お使いのWindows Serverベースのソフトウェア資産をそのまま使っていただけること、2015年7月15日(日本時間)にサポートが終了するWindows Server 2003の移行先の一つとして選んでいただけることも挙げられます。

砂金氏 単品テクノロジーの優劣にとどまらず、お客さまの“やりたいこと”に応えられるソリューションを提案できるかどうかが問われていると思います。Windows Server、SQL Server、SharePoint Serverといったサーバーソフトウェアとの組み合わせも重要ですし、デバイス&サービスの企業になるという経営方針との整合性も考えなければなりません。

開発、運用の両面でスキルの移行は容易に

新野氏 Windows AzureとWindows Serverの「クラウドOS」ビジョンは、企業の情報システム部門にもデベロッパーにも大きなインパクトがありそうです。

藤本氏 情報システム部門の方々に申し上げたいのは、Windows ServerのAPIはまったく変えていないということです。Windows Server 2012 R2にはWindows Azureで実装した新機能を追加しましたが、ベースとなるAPIはそのままですから、ソフトウェア開発方法を変える必要はないということを理解していただきたいです。

砂金氏 ひとくくりに企業と言いましても、トラディショナルなエンタープライズとクラウドボーンのスタートアップビジネスは同じではありません。ですが、Windows Azureはどちらのビジネスにも価値を提供できますし、マイクロソフトも両方のビジネスを引き合わせるハブとしての役割を十分にこなせます。

新野氏 デベロッパーには、IaaS(Infrastructure as a Service)としてのWindows Azure仮想マシンによってWindows ServerとWindows Azureの境界線が消失したことが歓迎されるのではないかと思います。開発にせよ、運用にせよ、スキルトランスファーはかなり楽になりました。

砂金氏 おっしゃる通りです。これまでのスキルセットをそのまま生かしたいという方は、Hyper-VのVHDをIaaSに移植すれば動作します。しかし、本稼働を始めてからの監視や運用を楽にしたいのなら、もっとPaaS(Platform as a Service)寄りの構成にした方がよいでしょう。お客さまのワークロードに合わせてどちらの使い方もできることが、Windows Azureならではの強みです。

新野氏 Windows Azure仮想マシンの登場以後、オープンソースとの相性も良くなりました。以前はWordPressを動作させるのに、かなりトリッキーな使い方をしなければなりませんでした。

砂金氏 現在では、Hyper-V上でLAMP(Linux、Apache、MySQL、Perl/PHP/Python)スタックが完全に動作します。パフォーマンスも価格性能比も他のパブリッククラウドと同等かそれ以上ですから、強い競争力があると思っています。OSS(Open Source Software)コミュニティに対するマイクロソフトのスタンスも大きく変わりました。ASP.NETなどはOSSコミュニティに寄贈してコミュニティメンバーの皆さんと育て上げようとしていますし、2012年4月には「Microsoft Open Technologies」というオープン標準規格や相互運用性などに取り組む組織も立ち上げました。

新野氏 Windows Azure上でOSSをビジネスに利用している事例はあるのでしょうか。公表されているものはほとんどないようですが。

砂金氏 実際にはWindows AzureのLinuxで稼働している商用サービスがたくさんありますが、もう“当たり前”の使い方になったしまった感があり、導入事例として発表されているものがほとんどないのです。CentOSはそのまま動きますし、MySQLはWindows Azure テーブルストレージかMicrosoft SQL Databaseに置き換え可能、PHPやRubyからもちゃんとアクセスできますから、LinuxやOSSのスキルセットはそのまま活用していただけます。

ロックインのない、本当にオープンなクラウドの普及を

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Publickey編集長 新野淳一 氏

新野氏 パブリッククラウドとしてのWindows Azureは、すでに居並ぶライバルと同じ高みに到達し、これから抜き去ろうとしているように見えます。そのためのアピールのポイントはどこですか。

砂金氏 おそらく、ワークロードごとに異なる訴求をしていくことになるでしょう。業務システムの世界では、Windows Serverベースのソフトウェア資産をそのまま使っていただけるという優位性が必勝パターンでしょうか。コンテンツビジネス向けには、動画の暗号化と配信を得意とする「Windows Azure メディアサービス」、iOSやAndroidを含むモバイルデバイス向けの認証やプッシュ配信には「Windows Azure モバイルサービス」というBaaS(Backend as a Service)を売り込んでいくつもりです。ID統合管理には、「Windows Azure Active Directory」(WAAD)もお勧めしたいですね。

藤本氏 先ほども申し上げましたが、今年前半には日本国内の2か所にWindows Azureのデータセンターを開設します。これでデータの置き場所と回線レイテンシという2つの懸案を解消できますし、日本市場に対するマイクロソフトの“本気度”も感じ取っていただけるのではないでしょうか。また、オンプレミス環境に置いたストレージとWindows Azureをセキュアにつなげて、データ階層化をクラウドまで容易に拡張する「StorSimple Cloud-integrated Storage」(StorSimple CiS)も広めていきたいと考えています。

砂金氏 Windows Azureの最大の強みは、エンタープライズの世界にもクラウドボーンの世界にも一つで対応できることだと思います。クラウドボーン系の新規ビジネスであっても、長期的に使うものであれば、Webの寄せ集めテクノロジーで構築するよりも、体系的なソフトウェア資産を活用できるWindowsの方がはるかに効率的です。それでいて、ベンダロックインのない、本当にオープンなクラウドOSを広めていきたいと思います。

新野氏 ありがとうございました。


提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月16日

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