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See new world――振り返るとセキュリティ・ダークナイトはいるよ(後編)セキュリティ・ダークナイト(18)(1/3 ページ)

セキュリティ・ダークナイトの視点で振り返る特集、後編はアノニマスやハクティビストへ突撃取材したことを振り返ります。

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“アノニマス”裏話

 次にアノニマスの話を取り上げよう。番外編「本当のAnonymousが知りたいの」(2011年6月22日公開)は連載の中でも思い入れの強い記事だ。

 当時、アノニマスたちによってPSNに対する大量アクセスを行う抗議「OpSONY」が実施され、その後に続くように、PSNからの個人情報漏えいが発生した(いまだ犯人は不明の事件)。かなりの大量の情報漏えいで、ソニーが詳細な記者会見を行ったことを記憶している方も多いのではないだろうか。

筆者注:

 この事件についてアノニマスが犯人であるということを主張する方もいるが、正しくは不明である。アノニマスが犯人かもしれないし、アノニマスが犯人ではないかもしれない。アノニマス犯人説はおそらく侵害を受けたサーバー内に攻撃者が作成したと思われる 「We are Legion.」と書かれた「Anonymous」という名前のファイルが存在してたという報道によるものだろうと筆者は考えている。


 こうしたことから、アノニマスという名前が一人歩きする形となった。当時、日本においてはまだアノニマスというものに対して馴染みがなく、海の物とも山の物とも分からないような状態だったこともあり、メディアを含めさまざまな情報が錯綜する形となった。いまやおなじみとなった「国際的ハッカー集団」という表現が使われ始めたのも、そういった理由からだろう。

 しかし、筆者はそのような状況を見て正しい情報が報道されていないのではないか、と疑問を持った。というのも筆者は2010年頃からアノニマスに興味を持ち、過去にさかのぼって調査をしていたからだ。

 筆者の調査では、アノニマスは「国際的ハッカー集団」ではなく、アノニマスの一部がそのような要素を含んだ側面を持っているという認識だった。言い換えると、ハッキングという手段を用いた抗議をする集団も存在する「国際的抗議共同体」というものである。実際に特定の事象に抗議する際に、リアルな世界でデモを行ったという実績も多数ある。大規模なものでは、宗教団体であるサイエントロジーに対する抗議があり、全世界で数千人規模のものもあった。日本では2012年7月7日に東京・渋谷で掃除による抗議が行われたことも記憶に新しい。

【関連記事】

アノニマス、渋谷にあらわる 第1回清掃オフに50人超

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1207/07/news007.html


 情報を収集するだけでは物足りず、筆者は自分の目と耳で見聞きしたいと思い、日本で会うことのできるアノニマスで平和的抗議を行っている人物を探し、接触することに成功したのである。そして実際に会い、インタビューを行った。

 この記事を公開したときにどのようにして会うに至ったのか。という質問を多数いただいた。記事には書かなかったので、こちらでその流れを紹介させていただこう。

 まず筆者は、アノニマスの過去の活動を調べる中で、日本で活動していると思われるメンバーがいないかも同時に調査していた。そこからTwitterアカウントを見つけ、すかさずフォローしたのである。筆者は普段からセキュリティやハクティビスト関連のつぶやきもしていたため、先方もこちらをフォローしてくれた。

 そして間もなく、筆者はダイレクトメッセージを送った。Twitterでは140文字という制限があるため、まずは自己紹介と、実際に会ってインタビューをさせていただきたいという旨を送る。そして可能であればメールでのやり取りをするために筆者のメールアドレスを書いたテキストを作成、暗号化しそのURLを伝えた。それを読んでくれた先方は早速、連絡をくれたのである。先方のプライバシーに関する詮索(せんさく)せず、配慮するという約束で、カメラのある場所や筆者の前ではマスクを常時着用しても構わないことも伝えた。こうしてインタビューは実現に至ったのだ。

 先方と話した内容は記事の通りだが、このインタビューを通じて、彼らの行動原理や思想、日本人にはあまりないような感覚。海外で起きている事件など、筆者はたくさんのことを学べたように思う。

 いまは何でもネットで調べることができる時代だ。実際に触れたことのないもの、行ったことのない土地のことを手に取るようにチェックできる。しかし、直接触れたり、双方向にやり取りすることでしか見えてこないものもある。それを身をもって知ることができたと思う。少し前であればメディアから報じられる情報が全てだったが、いまでは自分が行動を起こせばあらゆる情報に触れることができ、発信もできるということも改めて痛感することができた。

 やはり、情報は一方的に得ようとするだけでは限界がある。よい情報は、行動、発信するところに集まると筆者は信じている。本件については「本当のアノニマスが知りたいの・2」(2014年1月27日公開)も併せてお読みいただければ幸いである。

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