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Tableau創業者:あらゆるビジネス担当者がデータを分析できなければならない理由ようやく時代が追い付いてきた

ユニークなBI(Business Intelligence)ツールで急成長する米Tableau Softwareの共同創業者で、チーフサイエンティストのパット・ハンラハン氏にインタビュー。その前編として、同氏のBIおよびビッグデータについての考えを聞いた部分をお伝えする。

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 「データの視覚化」というテーマを具現化した、ユニークなBI(Business Intelligence)ツールで急成長する米Tableau Software。その共同創業者で、チーフサイエンティストのパット・ハンラハン(Pat Hanrahan)氏へのインタビューを、2つの記事に分けてお届けする。本記事では、その前編として、同氏のBIおよびビッグデータについての考えを聞いた部分をお伝えする。

2014/06/23 追記:後編として、「アカデミー賞受賞者がつくったBIツールの昨日、今日、明日」を公開しました。

実は「新興企業」ではないTableau Software

 Tableauは、米IT調査会社ガートナーが2014年2月に発表した「Magic Quadrant for Business Intelligence and Analytics Platforms」でリーダーに分類された。パット・ハンラハン氏は、「2、3年前ははるかこちらのほうにいた」と、左下を指して笑う。

 Tableauは、アカデミー賞受賞者であるハンラハン氏が、ビッグデータや新世代BIが注目されるはるか前の、10年前に設立した企業だ。同社が当初から掲げてきた「人々がデータを見て、理解することを助ける」という考え方が、ようやく浸透し始めていると感じている。「われわれが持ち込んだアイデアの多くが、認められるようになったのだと思う」。

 これまでの約4年間における最大の変化は、いわゆるビッグデータから価値を引き出すことが重要だという認識が広がったことであり、そのための技術が進化したことだとハンラハン氏は話す。

 「アマゾン、アップル、LinkedIn、eBay、Twitterなど、新世代の重要な企業はすべて、根本的にデータ指向の企業文化を持っている。そこには、勘だけでビジネス判断はできない、データを使って業務を継続的に改善していくべきだという認識がある。一方で、企業活動を効率化し、競争力を向上させる手助けをするデータ活用の実例やテクニックが急増してきた。これがビッグデータの本質だ。

 一部の人々は、たくさんのデータを1つの釜に入れて火にかければ、生命がつくり出せると思っている。だが、これはちょっとした幻想だ。これを使って何をしたいのかの考えもなく、データに何らかのストラクチャを与えることもしないのなら、その人たちはビッグデータで成功することはない。

 Tableauが伸びてきた理由の1つはここにある。多くの組織が大量のデータを集め、巨大なHadoopクラスタに入れたところで、さあこれをどうしようかと悩んでいる。だが、データを適切な人々に届け、この人々がデータを可視化し、理解できるようにすべきだ。ツールとトレーニングを提供することで、人々はデータに関する幻想を抱くことなく、効果的に扱えるようになる」(ハンラハン氏)。

 ハンラハン氏は、ビジネスをするすべての人にデータを提供し、自身でデータを分析できるような環境を整えなければならない、と力説する。「しかし、ビジネスの最前線にいる人に、突然データ分析をしろといっても、何をどう分析すればいいか分からない人も多いのではないか」と聞くと、そんなことはない、特定の分野やプロダクトラインについての知識がある人にとって、何をなすべきかは明白だ、こうした人たちは、ちょっとした情報が必要なだけだ、と答える。

 「例えば当社の顧客であるeBayでは、カテゴリマネージャーと呼ばれる人たちが、コイン、ラジオ、アンティーク人形といった分野のそれぞれについて、マーケットを運営する。当然ながら、アンティーク人形のマーケットはコインのマーケットとはまったく異なる、それ自体が複雑なダイナミクスで動いている。アンティーク人形のカテゴリマネージャーは、著名な人形収集家はだれか、どこで調達できるのかなど、この市場のことをよく知っている。この人が、eBayのアンティーク人形市場で何が起こっているかを、データによって毎日確認することで、例えばバービー人形の取引価格が突然上昇したのを見て、その原因を探り、アクションをとることができる。


パット・ハンラハン氏(右)と日本法人社長の浜田俊氏(左)

 ビジネスに関する知識を備えた人々に情報を提供すれば、この人々は短期間に、市場で何が起こっているかに関する洞察を得て、これまでは解けなかった命題を解くことができる。そして、即座に行動を起こせる」(ハンラハン氏)。

これまでの「BI文化」を変えていかなければならない

 ハンラハン氏は、「組織内のエンドユーザー自身がデータにアクセスし、分析できる環境を整えるのが有効な戦略」だと考え始める企業が増えていると言う。

 「例えばLinkedInでは、専門アナリストを5人雇っていたが、1人当たりで1日平均1件、年間200件の分析しかできないことにある時気付いた。5人では年間1000件が処理の限界だ。だが、LinkedInが競争力を維持するには、年間10万件の分析をしなければならないことが分かった」(ハンラハン氏)。

 従来型のBI製品やその運用体制では、このような爆発する潜在的分析ニーズに応えられない、とハンラハン氏は続ける。

 「従来型のBIでは、社内ユーザーが申請書を提出すると、これが専門部署に回されて順に処理されていく。答えが返ってくるまでに数週間、下手をすれば6カ月も掛かる。これでは年間に数件の分析しかできないことになる。一方(ユーザーが必要なデータにアクセスできるようにし、)当社のツールを使えば、20秒で答えを得られることもある」。

データサイエンティストは要らないのか

 「データサイエンティストは要らないと言っているのか」とハンラハン氏にわざと聞いてみた。

 「私自身、生物物理学で博士号を取得したこともあり、ほとんどの人にできない高度な分析ができるという点で、データサイエンティストの1人だと考えている。データサイエンティストは素晴らしい価値を提供できる人たちだ。また、Tableauはデータサイエンティストにも人気がある。しかし、データサイエンティスト1人当たり、1000人、1万人、あるいは10万人の一般的な人々が、何らかの形でデータを扱っている。マイクロソフトがExcelユーザーを対象として実施した調査では、単純な表計算よりもデータ処理に使われていることが多いという結果が出ている。つまり、すでにだれもがデータを扱っているということだ。

 この事実は重要だ。(Excelを使ってデータ分析をしているのは)一般的なビジネスユーザーで、この人たちは自分の担当しているビジネスについて、何が大事なのかを知っている。これに対し、データサイエンティストは直接ビジネスに携わっているわけではない。データサイエンティストにばかり頼り、一般の社員がデータを日常的に活用できるような社内文化の醸成を怠るなら、本当の可能性を見出すことはできない」(ハンラハン氏)。

 だが、IT部門が一般社内ユーザーによるデータの活用を十分に促進できない背景には、データに関するセキュリティやガバナンスの確保という、もっともな理由もある。また、前出のガートナーによるリポートでは、Tableauに関し、データガバナンスなどの企業向け機能に欠けているとの記述も見られる。

 ハンラハン氏は、「実際には、Tableauは多数の企業向け機能を搭載している。ガートナーは、もっと根本的な問題を指摘しているのだと思う。集中管理と個人レベルのアクセスのジレンマは、Macintoshやクラウドでも見られるように、IT業界では古典的な問題だ。企業や業種によっても、両者のバランスは異なる。この難しいパズルを解いたベンダはまだいない。そしてTableauは、ユーザーのデータアクセスを極力制限しないような形で、また柔軟性を失わないような形で、この問題を解決していくつもりだ」と話す。

 「当社は、ユーザーを喜ばせることで知られるようになってきた。一方で、IT部門の人たちを喜ばせることにも力を入れている。なぜならこの人たちは、とてつもなく重要だからだ」。

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