オラクルのクラウドサービスは互換性維持を重視、パートナープログラムの拡充も:AWS、Google Cloud同等の価格帯でのクラウドサービス提供を明言
オラクルがクラウドサービスを強化、自社顧客/パートナーにとって、クラウド選定の第一の選択肢となるべく、IaaSを含むサービス群を発表した。
2014年9月29日(現地時間)、米オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2014」が開幕した。基調講演に登場したCTO兼取締役会長のラリー・エリソン氏は、2014年が「オラクルにとってターニングポイントになる年だ」と、同社がクラウド分野で本格的な攻勢に出ることを示し、そのクラウド戦略がSaaS、PaaS、IaaSの同時展開が柱になることを明らかにした。また、同社のIaaS型クラウドサービスはAmazonやマイクロソフト、Googleなどの競合と同じ価格で提供するとも明言した。
「2014年はオラクルにとってターニングポイントとなる年だ。われわれはセールスフォース・ドットコムのようなSaaS専門でも、AWSのようなIaaSの専門でもなく、30年以上前から顧客を持ち、顧客との約束を守るために、SaaS、PaaS、IaaSを統合的に提供する」(ラリー・エリソン氏)
オラクルのIaaS・SaaSは顧客向けに互換性を重視したものに
基調講演でエリソン氏は「30年以上前に顧客と約束したことを実現するためには、(SaaS、PaaS、IaaSの)3つを統合して提供しなければならない」と発言。エリソン氏が言う「顧客との約束」とは、互換性のことを指している。
オラクルが現在提供しているERPなどのソフトウェア、WebLogicなどのミドルウェア上で稼働するアプリケーションやOracleデータベース、それ以外のアプリケーションを、全てそのまま変更せずにクラウドへ移行できるようにするためには、アプリケーションをサービスとして提供するSaaS、ミドルウェアなどソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS、そして仮想マシンのレベルで実行環境を提供するIaaSの3つが必要になるとエリソン氏は説明。
「ボタン一つで、あらゆるOracleデータベースをオンプレミスのデータセンターからクラウドへ移行できる。ボタン一つで、あらゆるアプリケーションをクラウドへ移行できる」(エリソン氏)
IaaS型クラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」
ここでは新しく登場したIaaS型クラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」について見ていこう。
オラクルがIaaSを提供することで、非Javaアプリケーションであってもクラウドへ移行できるようになる、とエリソン氏は既存Oracle CloudではないIaaSを提供する意図を説明する。Oracle Cloudでは既にOracle DatabaseやWeblogicを使ったJavaアプリケーションを移行するための環境が整っているが、Oracle Cloud Infrastructureは、それ以外のアプリケーションを利用している顧客にもクラウドの選択肢を提供するものになる。
コンピュートノードである「Compute Cloud」は、エラスティックかつ高可用性のものであり、汎用インスタンスだけでなく、大容量メモリを持つインスタンスも提供するという。
一方のクラウドストレージである「Storage Cloud」は、JavaやREST API(OpenStack Swift互換)でアクセス可能なものであるという。いずれのサービスも、現在IaaSサービスの価格競争をけん引するAWSやGoogle Cloudと同等の低コストで提供していくことを明言している。
「Oracle Cloud Platform」
次はアップグレードした「Oracle Cloud Platform」だ。
従来提供してきたサービスでは、Oracle Databaseを核に、WebLogic Java Cloud Serviceや、その上にソーシャル、モバイル、アナリティクス、アイデンティティ管理の4つの重要なサービスをプラットフォームに組み込んでいる。
「Oracleデータベースも、あらゆるJavaアプリケーションも、ボタンを押すとクラウドへ移行できるだけでなく、モダナイズされる。Javaアプリケーションでなくとも、あらゆるアプリケーションはIaaSへボタンを押すことで移行できる。しかも魅力的なのは、元に戻せるということだ。われわれは選択肢を提供し、クローズではない。これを実現することは非常に難しかったが、それを実現してきた」(ラリー・エリソン氏)
「Oracle Cloud Platform」の新サービスは六つ
Oracle OpenWorld 2014で新たに発表したサービス群は下記6つだ。
- Oracle Big Data Cloud:Hadoopサービス
- Oracle Mobile Cloud:モバイルバックエンドサービス
- Oracle Integration Cloud:統合運用監視サービス
- Oracle Process Cloud:ビジネスプロセス設計
- Oracle Node.js Cloud:「Oracle Cloud」上でのNode.jsサービス
- Oracle Java SE Cloud:Java SE 7/8実行環境
なお既に提供しているサービスには、Oracle Database Cloud(データベースサービス)、Oracle Database Backup Cloud(データベース用クラウドバックアップサービス)、Oracle Java Cloud(Javaアプリケーション実行環境全体のマネージド型サービス)、Oracle Messaging Cloud(メッセージングサービス)、Oracle Developer Cloud(ALMサービス)、Oracle Business Intelligence Cloud(BIサービス)、Oracle Documents Cloud(ファイル共有サービス)がある。
パートナー販売を促進する「Oracle Cloud Applications」Release 9
さらに、SaaS領域としてはOracle Cloud Applications Release 9を発表している。
ERPを含む全てのアプリケーションについて、「お客様とパートナーは、『Oracle Cloud Platform as a Service』(Oracle Cloud PaaS)を使って『Oracle Cloud Applications』を簡単にパーソナライズして新しい機能を作成したり、先進のクラウドおよびモバイルSaaSアプリケーションを独自に作成」(日本オラクルプレスリリース)できるとしている。
具体的には、サプライチェーン管理やマーケティング向けのデータ管理に関するサービス群を提供する。これらを利用者やパートナーが独自にカスタマイズして利用、SaaSとして展開することを許容するものになるようだ。
DBaaSサービスの機能拡充、エンジニアドシステムの発表も
さらに「Oracle Database as a Service」では、今後RAC(Real Application Cluster)構成の自動プロビジョニングなどが予定されているという。
この他、「Oracle Database」の保護に特化したエンジニアドシステム「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」の提供開始や、1台当たり最大3TBのメモリを搭載できる「Oracle Exalytics In-Memory Machine X4-4」の発表も行われた。
(文責/編集部)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.