クラウドでDR対策の常識が変わる! Microsoft Azure復旧サービスの全機能が正式公開:Microsoft Azure最新機能フォローアップ(2)(1/2 ページ)
2014年10月3日、マイクロソフトは「Microsoft Azure Site Recovery」でプレビュー提供していた一部の機能の正式提供を開始しました。正式提供された機能は、オンプレミスのシステムを直接クラウドへレプリケーション/フェイルオーバーする機能になります。
Microsoft Azure復旧サービスの最新情報アップデート
マイクロソフトは2014年10月3日(日本時間)、「Microsoft Azure Site Recovery」サービスで6月からプレビュー提供していた機能の一般提供を開始しました。
6月にプレビュー提供を開始した際、以下の記事でいち早くレビューしましたが、本稿ではプレビューとの違いやプレビュー時点では明確になっていなかったライセンスについて、「Microsoft Azure復旧サービス」(Microsoft Azure Recovery Services)の最新情報と併せてフォローアップします。
Microsoft Azure復旧サービスは、企業や組織のBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)/DR(Disaster Recovery:災害復旧)対策に利用できる、次の二つのサービスを提供します。
- Azure Backup
- Azure Site Recovery(旧称:Hyper-V Recovery Manager)
Microsoft Azure復旧サービスのほとんどの機能は、すでに一般提供されています。今回、プレビュー提供から正式な一般提供へと移行したのは、Azure Site Recoveryのサービスの一部になります。
Azure Backupサービスはサイズ制限と保存期間を大幅拡張
「Azure Backup」サービスは、Windows Server、Windows Server Essentials、System Center Data Protection Manager(DPM)向けのクラウドバックアップサービスで、データボリューム、仮想マシン(DPMが必要)、SQL Serverデータベース(DPMが必要)を対象に、パブリッククラウドの記憶域を利用したスケジュールバックアップとクラウドからのデータ回復を可能にします(図1)。対応製品は以下の通りです。
- Windows Server 2012 R2
- Windows Server 2012
- Windows Server 2008 R2 Service Pack(SP)1
- Windows Server 2012 R2 Essentials
- Windows Server 2012 Essentials
- System Center 2012 R2 Data Protection Manager
- System Center 2012 SP1 Data Protection Manager
パブリッククラウドをバックアップ用のオフサイトとして利用できるため、災害の影響の及ばない遠隔地での確実なデータ保護を、自前で準備するよりも低コストで実現できます。
これまでAzure Backupサービスは、バックアップ対象のボリュームや仮想マシン、SQL Serverデータベースについて「1回のバックアップは最大850Gbyteまで」という制限がありましたが、8月末にこれを1.6Tbyteまで拡張するエージェント更新が利用可能になりました。また、9月には最長9年(3360日)の保存期間に対応するエージェントの更新が利用可能になっています(画面1)。
- A backup to Azure Backup fails if the data source is larger than 850 GB[英語](Microsoft Support)
- Update for Azure Backup for Microsoft Azure Recovery Services Agent[英語](Microsoft Support)
画面1 Azure Backupサービスは、最新のエージェントで最大1.65Tbyteのボリュームのバックアップと、最長9年(4週間に1回のスケジュールで最長3360日)のバックアップデータの保存が可能になった
現在、Azure Backupサービスからダウンロードできるエージェントは、上記の更新を含む最新バージョンですので、これから導入する場合はエージェントを展開した直後から新しい仕様に対応します。
Azure Backupは正式サービス(GA)から間もなく1年になります。サービス開始当初は月額41.52円/Gbyteでしたが、2014年4月には月額単価28.56円/Gbyteに、そして9月25日(米国時間)には20.40円/Gbyteに値下げされました。約1年で半額になったことになります。
Azure Site Recoveryには二つの新サービスが追加
もう一つの「Azure Site Recovery」サービスは、オンプレミスの仮想化インフラストラクチャに対する保護を、次のいずれかの方法で提供します。
- オンプレミスの二つのHyper-Vサイト間の保護(オンプレミスからオンプレミスのサイト回復)
- オンプレミスのHyper-VサイトとAzure間の保護(オンプレミスからAzureのサイト回復)
- オンプレミスの二つのVMwareサイト間の保護
「オンプレミスの二つのHyper-Vサイト間の保護」は「Azure Hyper-V Recovery Manager」という名前で2014年1月から一般提供が開始されたサービスで、System Center 2012 SP1以降のVirtual Machine Manager(VMM)で構築されたプライベートクラウド(VMMの管理単位であるクラウド)上で稼働するHyper-V仮想マシンを、「Hyper-Vレプリカ」の機能を利用して別の拠点にあるもう一つのVMMクラウドでレプリケーション保護します(図2)。
Azure Site Recoveryはパブリッククラウド側からレプリケーションを構成し、VMMクラウドの正常性を監視して、プライマリのVMMクラウドが利用できない場合に、もう一方のVMMクラウドにフェイルオーバーして仮想マシンを復旧します(画面2)。
「オンプレミスのHyper-VサイトとAzure間の保護」は、2014年6月にプレビュー提供が開始された新しいサービスです。今回、正式提供となったのは、このサービスです。このサービスは、System Center 2012 R2のVMMクラウドの保護に対応し、オンプレミスのセカンダリサイトの代わりに、Microsoft Azureストレージに対してレプリケーションを行います(図3、画面3)。フェイルオーバーには、Microsoft AzureのIaaS機能(Azure仮想マシン、Azureストレージ、およびAzure仮想ネットワーク)を利用して、仮想マシンを復旧します。
DR対策はセカンダリサイトの構築と維持にコストが掛かり、これが導入を阻む大きな要因になっていました。「オンプレミスのHyper-VサイトとAzure間の保護」は、パブリッククラウドを自社のセカンダリサイトとして活用できるので、DR対策のコストの課題を解消します。
最後の「オンプレミスの二つのVMwareサイト間の保護」は、マイクロソフトが2014年7月に買収を完了したInMage Systems社の「InMage Scout」ソフトウェアによる保護を提供するものです(図4)。7月に試用版として追加され、8月1日から一般提供が開始されました。
InMage Scoutは、VMwareサイトや物理サーバーを、セカンダリサイトのVMwareプラットフォームに対してV2V(仮想−仮想)またはP2V(物理−仮想)でレプリケーションを行い、フェイルオーバーやバックアップを可能にするDRソリューションです(画面4)。このソフトウェアを利用するには、後述するMicrosoft Enterprise Agreement(EA)のAzure Site Recoveryサブスクリプションライセンスの購入が必要です。
ライセンス購入者は、Microsoft Azure管理ポータルからInMage Scoutソフトウェアのインストーラーとドキュメントをダウンロードして使用することができます(画面5)。なお、現時点ではライセンスの提供だけで、InMage ScoutソフトウェアがAzure Site Recoveryのサービスと連携することはありません。
東日本/西日本リージョンからのサービス提供も開始
マイクロソフトは2014年2月に日本国内に東日本リージョンおよび西日本リージョンの2カ所のデータセンターを開設しました。これまで、Microsoft Azure復旧サービスはこれらのリージョンでは提供されていませんでしたが、8月22日から利用可能になっています(画面6)。
Azure Backupのバックアップおよび回復操作、およびAzure Site RecoveryのオンプレミスからAzureのサイト回復のレプリケーションでは大量のデータ転送を伴うため、日本国内のデータセンターを利用できるようになったことはうれしいニュースです。Azure Site RecoveryでAzure側にフェイルオーバーした場合も、ネットワークレイテンシの影響が少なくて済みます。バックアップデータや仮想マシンのレプリカを国内に置いておけるという安心感も大きいでしょう。
なお、東日本リージョンはキャパシティの関係で、新たにMicrosoft Azureにサインアップしたユーザーは、いくつかのサービスで選択肢に東日本リージョンが表示されない場合があるようです。キャパシティの問題が解決し、制限が解除されるまでは、西日本リージョンを選択するようにしてください。Azure Site RecoveryのオンプレミスとAzure間の保護を利用する場合は、Azure Site Recoveryの資格情報コンテナー、Azure仮想マシン、Azureストレージ、Azure仮想ネットワークの全てで同じリージョンが利用できる必要があることに注意してください。
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