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Azure Site Recoveryは災害対策の“切り札”となるか?Microsoft Azure最新機能フォローアップ(1)(1/5 ページ)

マイクロソフトが「Microsoft Azure Site Recovery」のプレビュー提供を開始した。このサービスは、オンプレミスの仮想マシンのレプリカをMicrosoft Azure上に作成してバックアップする災害対策ソリューションになる。

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Hyper-V Recovery Manager改めAzure Site Recovery

 マイクロソフトは6月20日(日本時間)、それまで「Windows Azure Hyper-V Recovery Manager」として提供してきたクラウド復旧サービスを機能強化した「Microsoft Azure Site Recovery」(以下、Azure Site Recovery)の提供を開始した。従来のHyper-V Recovery Managerは2014年1月から正式なサービスとして提供されてきたが、Azure Site Recoveryから追加される新機能の部分についてはプレビュー提供になる。

 今回強化されたのは、オンプレミス(内部設置)のHyper-V仮想化基盤で稼働する仮想マシンのレプリカをMicrosoft Azureに作成し、クラウドでコールドスタンバイのバックアップを実現する災害対策(Disaster Recovery:DR)ソリューションである。サービス更新当日、早速、その機能と使い勝手を試してみたのでリポートする。

 なお、このサービスは現在、プレビュー段階(ただし、課金あり)であり、正式なサービス開始時期は明らかにされていない。正式版ではMicrosoft Azureの管理ポータルのUI(ユーザーインターフェース)や機能、システム要件、ライセンス要件などが変更される場合もあることを承知しておいてほしい。

 Azure Site Recoveryの前身であるAzure Hyper-V Recovery Managerは、2013年4月から限定プレビュー、2013年10月からパブリックプレビューとして提供され、2014年1月から正式なサービスが開始された。

 Hyper-V Recovery Managerは「System Center 2012 Service Pack(SP)1」および「System Center 2012 R2」の「Virtual Machine Manager」(VMM)と連携するクラウドサービスであり、VMMで管理されているオンプレミスのクラウド(VMMの管理単位)と、別の拠点にあるVMMのクラウド間でレプリケーション(複製)を構成および監視する。

 プライマリの拠点が電源障害や大規模災害などで利用できなくなった場合は、Azureの管理ポータルを使用して、あらかじめ定義しておいた復旧計画をワンクリックで開始するだけだ。セカンダリ拠点のクラウドに仮想マシンをフェイルオーバーして、最後に同期した仮想ハードディスク(VHDまたはVHDX)を使って仮想マシンを迅速に復旧することができる(図1)。なお、仮想マシンのレプリケーションには、Windows Server 2012 Hyper-Vから利用可能になった「Hyper-Vレプリカ」の機能が利用されている。

図1
図1 Azure Site Recoveryのオンプレミス・ツー・オンプレミスによる仮想マシンの保護。これは、前身のHyper-V Recovery Managerからの機能になる

 Azure Site Recoveryもまた、引き続きオンプレミス・ツー・オンプレミスの拠点間レプリケーションの機能を提供するが、新たにオンプレミス・ツー・クラウドでMicrosoft Azureにレプリケーションするシナリオがプレビュー機能として追加されている。この機能は、オンプレミスのVMMクラウドで稼働するHyper-V仮想マシンの仮想ハードディスクのレプリカをMicrosoft Azureストレージに作成し、レプリケーションで同期するものである。Microsoft Azureをオンプレミスのクラウドをバックアップする“第二のデータセンター”として利用することで、大規模障害や災害発生時でも事業の継続が可能になる。

 オンプレミスのVMMクラウドが利用不能になった場合は、Azureの管理ポータルからワンクリックで復旧を開始し、Microsoft Azure仮想マシンとMicrosoft Azure仮想ネットワークの環境にレプリカ仮想マシンを準備してフェイルオーバーする。オンプレミスの社内ネットワークとフェイルオーバー先の仮想マシンは、Microsoft Azure仮想ネットワークによるサイト間(S2S)VPN接続で相互接続できるので、クライアントは手動または自動(Dynamic DNSなど)でMicrosoft Azure側に復旧した仮想マシンのサービスに接続することが可能だ(図2)。

図2
図2 Azure Site Recoveryのオンプレミス・ツー・Azureによる仮想マシンの保護。自社で第二のデータセンターを用意する必要がない

 Hyper-V Recovery Managerの計画が発表された当時、多くの人はオンプレミス・ツー・クラウドのサービスを想像したようである。だが、ふたを開けてみて、それがオンプレミス・ツー・オンプレミスの拠点間レプリケーションをパブリッククラウドから調整、監視するものであったことに落胆した人も少なからずいたと思う。当時、多くの人が想像したであろうサービスが、Azure Site Recoveryでいよいよ利用可能になるのである(画面1)。

画面1
画面1 オンプレミスの拠点間レプリケーションは、VMMのクラウドを別のVMMのクラウド(復旧クラウド)で保護する。Microsoft Azureへのレプリケーションは、Microsoft Azureを復旧クラウドとして利用できる新サービスになる

 災害対策のために自社で第二のデータセンターを用意する場合、拠点の準備から考えると多大なコストがかかる。規模の経済が働き、俊敏性の高いパブリッククラウドを自社の災害対策用の第二のデータセンターとして利用できれば、固定資産を増やすことなく災害対策環境を素早く構築できるうえ、運用費用も抑えることができるだろう。

 Azure Site Recoveryのオンプレミス・ツー・Azureによる仮想マシンの保護は、仮想マシン1台当たり1カ月2754円で利用可能だ(本稿執筆時点)。この価格には仮想マシン1台当たり100GBまでのレプリケーション送受信トラフィックと、Azureストレージの料金が含まれている。なお、この価格にはプレビュー期間中の50%オフが適用されている。正式なサービス開始後はこの2倍の料金になる予定だ。この他、Microsoft Azure側に仮想マシンをフェイルオーバーした場合は、Microsoft Azure仮想マシンやMicrosoft Azure仮想ネットワークの利用料金も追加で課金されることになるだろう。

 上記の料金詳細ページには、クラウド・ツー・Azureの保護は「Microsoft Enterprise Agreement」(EA)を通じてのみ利用可能となっている。確認したわけではないが、筆者はこれを保護対象の仮想マシンのWindows ServerゲストOS、およびマイクロソフトサーバーアプリケーションのライセンスに関係する制約だと理解している。EAライセンスには「ソフトウェアアシュアランス」(SA)が付属するが、SA特典としてHyper-Vレプリカのような障害復旧を目的としたコールドバックアップサーバーライセンスを無償で使用できるからだ。こういったライセンス関連の話については、正式なサービス開始までに明確になっているはずだ。

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