「OpenStackは難しくない」を製品にするとこうなる:Piston OpenStackはどう違うか
OpenStackを難しく考えればきりがない。結局のところこれはITインフラをツールとして使えるようにするための技術。アプライアンス的な製品で、サクッと仕事に生かそう!
OpenStackの利用を検討する企業が増えている。だが、さまざまな不安から、導入に至らないケースも多い。たしかに、OpenStackを全体として考えると、利用するソフトウェアコンポーネントの選択、動作検証、インストール作業、運用管理、拡張、バージョンアップと、すべてが複雑なのではないかという印象になりがちだ。
東京エレクトロンデバイスが国内展開している、米Piston Cloud Computingによる「Piston OpenStack」の製品としての目的と価値は、まさにここにある。OpenStackの利用にまつわる各種の面倒を解決し、導入する組織が利用に徹することができるようにすることだ。
Piston Cloudはハードウェア込みのアプライアンスにこそなっていないが、数台のサーバー機に簡単なインストールを行いさえすれば、すぐに使い始められる。OpenStackのエキスパートがいなくとも、日常業務の道具として使える。メンテナンス作業はほとんど要らない。
OpenStackには、複数のディストリビューションが登場している。オープンソースソフトウェアであるOpenStackのコンポーネントを検証してパッケージ化し、インストールを容易にしてサポートを提供するという点では、どのディストリビューションも程度の差こそあれ、工夫が見られる。だが、ノータッチで運用できることまでを目指していることが、Piston OpenStackの重要な特色となっている。
このため、欧米では情報システム担当スタッフがいないか、少ない組織における導入も進んでいる。もちろん、クラウドサービス事業者やコンテンツサービス事業者などでも、インフラを、低い運用負荷でスケーラブルかつ安定的に稼働し、担当者をより戦略的な業務に集中させたいという考え方を持っているところが活用している。
OpenStackのインストールは、こんなに簡単になる
Piston OpenStackは、低コストで即座に使えるインフラを目的としている。そのためにOpenStack、ストレージソフトウェア、ネットワークをパッケージ化している。ストレージソフトウェアには、OpenStack導入組織の間で人気の高い「Ceph(セフ)」を採用。これを含めて、すべてを一括インストールできるようにしている。
インストール作業は高度に自動化されている。このため、小規模導入でも、大規模導入でも、専門家なしに、短時間で済ませることができる。小規模なら、10分程度ですべてのインストール作業が終わる。
インストール作業は具体的にどれだけ簡単なのか。下記に説明してみよう。
用意するのはサーバーとして使う複数のコンピュータ(商用では5ノードからサポート)。調達したコンピュータに、遠隔管理/遠隔起動(IPMI/PXE)の設定だけをしておく。別途インストール用のコンピュータ(「ブートノード」)を1台用意。また、Piston OpenStackのコードと設定ファイルを入れたUSBメモリを用意する。これさえ終われば、あとはほとんどノータッチだ。
ブートノードにUSBメモリを挿して電源をいれると、それだけでブートノードに必要なソフトウェアがインストールされる。その後、ブートノードはネットワーク上に存在する他のコンピュータを自動検出し、これらを起動する。するとブートノード以外のコンピュータ(「クラスタノード」と呼ばれる)全てでKVMハイパーバイザが動き、OpenStackインフラが使えるようになる。「OpenStackはインストールすら難しくてできない」と言われてきたことが、うそのようだ。
手間なし運用を実現する仕組み
上記の簡単なインストール作業の裏で、実は高度な作業が行われている。OpenStackを動かすソフトウェアの構成は、本来複雑だ。どのOpenStack管理ソフトウェアコンポーネントをどのノードで動かすかを考えるだけでも頭が痛くなるところがある。
Piston OpenStackでは、ハイパーバイザが動くクラスタノード上で、OpenStackサービスソフトウェアコンポーネントを分散して動かすようになっている。どのノードでどのサービスコンポーネントが動いているかを、ユーザーは気にしなくていい。各コンポーネントは複数のインスタンスが、複数のクラスタノード上で稼働する。そして、ハードウェア障害、プロセス停止、ネットワーク障害などが発生した場合、障害の影響を受けるノードで動いていたサービスコンポーネントの機能を、他のノード上の同じコンポーネントが自動的に引き継ぐようになっている。このため、平常時の運用は楽でも、いったん障害が発生するとパニックになるといったことがない。
OpenStackのバージョンアップについても同様に容易だ。管理画面から「アップデート」を指示するだけで、自動的に1ノードずつ作業が行われ、再起動される。このため、クラウドの稼働を停止しなくて済む。
では、クラウドの拡張や縮退はどうか。これもあっけないくらい容易だ。拡張は、新しいコンピュータをネットワークに接続、管理画面からこれをクラスタに追加する指示を行うだけでいい。縮退も同様。あるクラスタノードを取り外す操作を管理画面で行うだけで、サービスや仮想マシンが他のノードに移行する。これは、ハードウェアのメンテナンスにも便利だ。
Piston OpenStackでは、下記のようなWebブラウザによる管理機能が提供されている。これにより、OpenStack運用の稼働状況をチェックし、ノード追加や取り外しをはじめとするアクションも同じツールを使って行える。Piston OpenStackはOpenStackであることには変わりがないので、エキスパートなら好みの管理用ツールを駆使することもできる。だが、クラウドインフラの運用自体に手間を掛けたくない人にとっても、十分に使えるものになっている。これがこの製品の最も重要なポイントだ。
プロも認める高速で安定的なプラットフォーム
Piston OpenStackは、使いやすいだけではない。OpenStackのベースを生み出したNASAとRackspaceの人々によって開発されたOpenStackディストリビューションならではの、パフォーマンスや安定性を向上させる高度な配慮や仕組みが与えられている。
まず、Piston OpenStackは、最新のOpenStackリリースに急いで追随することをしない。1世代前(時期によっては2世代前)のリリースに、検証、バグフィックス、セキュリティ対策などを施したコードをベースとしている。また、商用ソフトウエアなので、もちろんサポートも受けられる。
OS(仮想マシン動作基盤)には、Linuxをベースとしてモジュールを最小限のものに絞り込み、稼働、セキュリティの両面で強固な「Iocane MicroOS」を独自開発した。このOSは小型で、インストールせずにメモリ上で動かすことができる。従って、Iocane MicroOSのアップデートは、ノードの再起動を行うだけで済む。
「Virtual Memory Streaming」という機能も非常に特徴的だ。これは、複数の物理ノードで部分的にメモリを共有するのに近い動作をする。このため、仮想マシンのライブマイグレーション(別物理ノードへの移動)に掛かる時間が、大幅に短縮される。また、仮想マシンのクローン(複製)作成も高速化する。
ストレージについては、外部ストレージ装置を使わない。サーバーだけで、ストレージもネットワークも構成する。これがコストの低さ、およびインストールと運用の容易さにつながっている。専用ストレージ装置を使わないからといって、障害に弱いというわけではない。ストレージソフトウェアには、前述のようにCephを活用し、全クラスタノードを論理的に単一のストレージとしてアクセスできるようにしている。そして、ボリュームストレージでは、複数の物理ノードにまたがって、必ず3つのコピーが維持される。従って、いずれかの物理ノードあるいは記憶媒体に障害が発生しても、他の物理ノード上のデータを使えるようになっている。
難しく考えずに、試してみてほしい
OpenStackを難しく考えようとすれば、きりがない。どんなソフトウェアでも、高度な機能を果たすものは、多数のコンポーネントで構成されている。その構成を意識してしまうと、オープンソースでもクローズドソースでも、難しく感じてしまう。
「オープンソースは中身が分かるからいい」「自分たちで修正を加えたり、コミュニティととともに、よりよいものを作ったりしていけるからいい」という人がいる。こういう人々は、オープンソースソフトウェアをそのまま使うのに適している。また、「自分たちで運用ノウハウは蓄積したいが、すべてを自己責任でやるのは避けたい」という人には、一般的なOpenStackディストリビューションが適している。
だが一方で、「ノウハウなど蓄積したくもない。自分たちで自由に使える低コストなクラウド環境が欲しいだけだ」、あるいは「ノウハウは蓄積したいが、日常の運用作業はできるだけ簡略化したい」という人たちがいる。こうした人たちには、OpenStackをアプライアンス的に使えるPiston OpenStackが適している。
OpenStackは「クラウド」環境の提供を目的とするソフトウェアだ。そしてPiston OpenStackでは、クラウドインフラを社内に置いて迅速かつ簡便に、ユーザー主導で使える。しかも「利用に徹する」ことが可能だ。その意味で、OpenStackらしいOpenStackの使い方を実現する製品だといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:東京エレクトロンデバイス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年11月14日