徹底比較! 運用自動化OSSと商用ツール、両者の違いと使い分け、見極めのポイント:特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル(3)(1/4 ページ)
企業におけるITシステムの運用自動化を徹底的に深堀りする本特集。今回は運用自動化のオープンソースソフトウェア(以下、OSS)と商用ツールの違いを比較。ケーススタディも交えてOSSと商用ツールを賢く使い分ける観点を紹介する。
OSSと商用ツールを使い分け始めた企業ユーザー
サーバー環境は技術の変遷と共に変化し続けている。企業のIT基盤においては、現時点では「VMware vSphere」などによる仮想化サーバー群と、物理サーバー環境が混在していることが多いのではないだろうか。それに加えて、パブリッククラウドを利用するケースが増えつつある。
全てにおいて物理サーバーを調達・設置しなければいけなかった一昔前と比べると、迅速にサービスが開始できるようになったことは大きな進歩だ。しかしその反面、運用しなければならない仮想サーバー台数は急激に増加しつつある。社内業務用にサーバーを運用している一般的な企業でも、仮想サーバーが数百台というケースは多い。Webサービス系の企業では、一般的な企業に比べて台数が1桁多いことも珍しくない。運用自動化が求められる背景には、こうした事情があるわけだ。
図1 左は「単価50」のツールを全業務システムに適用した例。右は「ツール標準化の対象を9業務でよし」として、高い非機能要求レベルが求められている1システムを除き、「単価20」のツールを適用した例。つまり、非機能要求が高いシステムに照準を合わせて運用管理ツールを選択すると、他の全システムにそのツールを「標準ツール」として適用した際、非常に高コストになってしまう
また、こうした環境では運用自動化ツールに限らず、運用管理ツールの選び方も問題になってくる。例えば10種類の業務サービスを運用していたとする。そのために使用する運用管理ツールが全部バラバラでは運用作業の効率は当然ながら悪くなる。運用現場としても何種類ものツールを使い分けたいわけではなく、「できれば少数のツールで多くの管理対象をカバーしたい」と考えるのが当然だ。
ところが、ある特定の業務サービスの運用条件が、他の平均的な業務サービスよりも非常に厳しいものであることが多い。例えば「障害発生時でも無停止が要求される」などだ。その最も条件の厳しい業務サービスに合わせて運用管理ツールを選択し、その他の全サービスにもそのツールを適用しようとすると、非常に高コストになってしまう。
OSSへのニーズの高まりと企業の不安
仮想サーバーが増加しつつある中で、そうした商用ツールのライセンス費用が足かせになり、「何のツールも導入していないサーバーがたくさんある」という企業も少なくない。われわれも日ごろのSI業務の中で、「問題発生を即座に把握するために、稼働状況の監視だけでもできれば、ひとまずはOKなのだが」という声を聞くことがある。
もちろん場合によっては、問題の対処としてバッチジョブ実行が必要なケースもあるし、処理量の増加に合わせてサーバー追加を頻繁に行わなければならないといった、商用ツールに任せたくなる、あるいは任せるべきシステムもある。だが「稼働状況の監視だけでも」というニーズは多い。オープンソースソフトウェア(以下、OSS)の運用監視ツールを導入する企業が増えていることには、こうした背景があるようだ。
とはいえ、自社の用途に最適なものがOSSでは見つからない場合もある。それに運用管理者であれば、無理をしてOSSを採用し、後で「失敗した」と言われたくはないし、そもそも失敗が許されないケースも多いはずだ。実際、OSSを本番の運用環境で稼働させることに不安を感じる向きは現在も多いようだ。
われわれがこれまでのセミナーなどで、SIerやユーザー企業にアンケートを取った結果からも、次のような声が上がっている(本稿に関連のある項目だけピックアップしている点をご容赦いただきたい)。
- 「未経験のツールはリスクがあると感じるため、使用経験のあるツールばかりを選択してしまう」
- 「脆弱性対応や、バージョンアップ、障害時対応などがOSSでも大丈夫だろうかという不安がある」
- 「SIでOSSの採用を提案すると、しっかりとした製品保守が提供できなければ、顧客企業によっては強く抵抗される」
では、こうしたOSSと商用ツールをどのように使い分ければよいのだろうか? 次のページでは運用を自動化するOSSと商用ツールを使い分ける観点を解説しよう。
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