いまさら聞けないOpenStack〜よく知られた「常識」と知っておくべき「常識」:特集:OpenStack超入門(2)(1/3 ページ)
日本OpenStackユーザ会の全面協力を得て、OpenStackを徹底的に深掘りする本特集。第2回はレッドハット クラウドエバンジェリストの中井悦司氏が「OpenStackでできること」「OpenStackを使う上で必要なこと」を分かりやすく解説する。
OpenStack活用のポイントは自動化の追求
前回のインタビュー記事では、OpenStackが求められるビジネス背景をお話ししました。今回は、OpenStackが提供する機能の活用ポイント、そして、OpenStackが今後のシステム開発・運用に与える影響について説明します。
OpenStackを活用する上で、何よりも大切なポイントは「自動化」にあります。OpenStackそのものが魔法のような自動化機能を提供するわけではありませんが、インフラ構築・管理の自動化を実現する「基盤」を提供するのがOpenStackの役割です。この点を理解しないまま、個別の機能だけを見ていても、本当の意味でOpenStackを使いこなすことはできません。ここでは特に、自動化の観点からOpenStackの役割を見直します。
ちなみに、インフラの構築・管理を自動化する取り組みは、これまでにも行われており、決して、OpenStackのようなクラウド基盤に特化した話ではありません。例えば、「本番サービスを提供するサーバーで、OSの設定変更を行う際の作業手順」を想像してみましょう。
伝統的な企業システムであれば、まずはテスト環境にインフラチームが設定変更を適用した後、アプリケーションチームがアプリケーションへの影響を一つ一つ手作業で確認していきます。そして、本番環境に設定変更を適用する際も、まずはアプリケーションチームがアプリケーションを停止した後、インフラチームが設定変更を行います。その後、アプリケーションチームがアプリケーションを起動して、サービスの正常稼働を決められた手順で確認していきます。本来の目的である設定変更作業は、ほんの数分で終わるにもかかわらず、対象サーバーが10台もあれば、作業全体としては、休日を返上して行う「一大イベント」となります。
一方、数千台規模のサーバーを管理するWebサービス系の企業では、このような管理は現実的ではありません。当然ながら、アプリケーションの稼働テスト、OSの設定変更など、あらゆる作業の自動化を図っています。「Webのシステムは仕組みが単純だから自動化できるんでしょ」と言う人もいるようですが、むしろ、「自動化のために徹底的に仕組みを単純化する努力をしてきた」という方が正しい見方でしょう。
しかしながら、ネットワークの構成やストレージの接続など、サーバー以外の作業(特に物理作業を含む部分)には、自動化が難しい部分もありました。OpenStackは、インフラの仮想化を通して、ネットワークやストレージなど、これまで手が出せなかったエリアにまで、自動化の対象を広げることを可能にします。
80%の作業が自動化された(つまり、20%は手作業が残っている)世界に対して、「100%、全ての作業が自動化された世界」を想像してみてください。インフラ管理に関わる作業が一気通貫で自動化されることにより、これまでとは異なるインフラ運用の世界が開けることが想像できるのではないでしょうか?
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