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ドミノピザにあって、ピザハットにないものとは?Go AbekawaのGo Global!〜Udacity編(前)(2/4 ページ)

ビジネスマンが生涯学び続けるためにテクノロジーは何ができるか――オンライン講座の雄「Udacity」のVP、クラリッサ・シェン氏に話を聞いた。

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“How”ではなく“Why”

阿部川 MOOCという言葉が登場したのは、おそらく2011年から2012年にかけてかと思いますが、現在では「Khan Academy」や「Coursera」「Edx」「Codeacademy」など、Udacityの競合相手が多く存在します。Udacityの一番の強み、特異性は何でしょうか?

シェン氏 それらのサービスも素晴らしいものだと思います。実はCodeacademyとは、協力して講座を実施したりもしています。Khan Academyのサービスの対象は、K-12(kay-through-twelve:幼稚園から高校卒業まで)であり、CourseraやEdxが提供しているのは大学の講義です。それらとの大きな違いは、UdacityはGoogleやFacebookといった企業とパートナーシップをもって講座を開発し、提供しているということです。カリキュラム全体が、専門分野に特化して構成されていますし、パートナーの各企業もそれを望み、サポートしています。

 もう一つ重要なことは、Udacityは単なる「やり方(How)」だけではなく、「なぜそうなるのか(Why)」を提供しているということです。例えば動画を多用して「ステップ1はこれをやりなさい、次はステップ2をやってください」と進めれば、コードの書き方は分かります。しかし「なぜそうするのか」や「なぜそうなるのか」は学べません。

 Udacityのクラスの多くは、実際に手を動かしながら学習するスタイルです。プログラミングは手を動かして書いてみないと学べません。代表のセバスチャンがよく言うのは、「他人がエクササイズしているのをどんなにビデオで見ても、自分の体重は減らない」です(笑)。自分でやらない限りはできるようにはならないわけです。

 実際にどんなに多くノウハウを知っていても、なぜそうなるかを理解していなければ、新しいテクノロジが生まれたときに、自身の持てる知識を応用して対応できなくなります。企業は常に、価値ある仕事をしてくれる人、仕事に付加価値を付けられる人を求めています。いつも指示を待って、やり方を教えないと出来ない従業員では困るわけです。

 またUdacityは、大学と共同して講座を提供しています。Udacityの戦略的な提携大学の一つ、ジョージア工科大学とは、博士課程をオンラインで、通学するよりもずっと低い価格で受講し、修士号を得られます。アカデミックで言えば大学院レベルのコンピューターサイエンスに関する講座を多く提供しているのは、Udacityにとって大切なことです。ジョージア工科大学は全米でもトップ5に入る優れた大学であり、世界でも有数の大学院レベルの授業を行っています。そのような大学の講座を誰もが受けられることは、Udacityが提供する価値の根幹部分です。

阿部川 なるほど。ではUdacityは、企業寄りの即実践につながる教育と、アカデミックな原理原則のどちらを目指しているのでしょうか?

シェン氏 どちらか片方ということではなく、両方をうまくミックスすることが必要だと思います。これは新しい学び方、あるいは大学レベルの教育に対する新しい考え方だと思います。あるいは新しい職業訓練、テクノロジについての教育と言ってもいいでしょう。

 米国では職業訓練の多くが入門レベルの魅力のないものというイメージですが、私たちはそれをいま一度、皆がワクワクする内容にする必要があると考えています。21世紀以降の技術に関する教育は非常に大切なものです。私たちは、学問と実業の橋渡し役として、全く新しい大学レベルの教育を提供する役割を担っているのです。

 2012年にサービスを開始してから、多くの学生からフィードバックをもらいました。私たちはこれらのフィードバックを企業にも伝え、企業からもフィードバックをもらって、私たちが提供する講座が、Udacityの目的である「学生のテクノロジスキルを高めて、ビジネスキャリアを高め、人生を豊かにできる機会を提供する」ことに合致しているかどうかを常に検証しています。また、Udacityを終了して望む企業への就職を果たした学生にも、「カリキュラムはどうだったか」「何か要望はないか」、就職先の企業にも「Udacityの卒業生はどうか」といった質問を定期的に行っています。そのフィードバックを検討することによってより良い講座を提供できるように、継続的な改善を行っています。

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