vCloud Airのどこが他と違い、われわれはどう使っていけるのかを整理しよう:vCloud Air入門(1)(2/2 ページ)
ヴイエムウェアが提供するパブリッククラウド「vCloud Air」が日本でも利用可能になりました。特徴的な利用体系や企業利用を念頭に置いたサービスなどが注目されています。本連載では基礎情報から、具体的な使い方までを順を追って紹介していきます。
標準機能/オプション機能はどうなっている?
次に機能面の特長を見ていきましょう。
1:標準機能でできるもの
vCloud Airでは他のパブリッククラウドに比べて標準機能が充実しており、以下の機能が追加料金なしで利用できます。
- 標準実装
- 高可用性
- ゼロメンテナンス
- 安定したパフォーマンス提供
- 標準機能
- ファイアーウォール
- VPN
- DHCP
- NAT
- ロードバランサー
高可用性についてはVMware vSphere HA(以降、vSphere HA)が使われており、万が一クラウド内の物理サーバーに障害が発生した場合はvSphere HAの機能によって、自動的に別の物理サーバーで再起動されます。
vCloud AirはvSphere HAだけではなく、vSphere vMotion、vSphere DRSが標準実装されており、ゼロメンテナンス(ダウンタイムなしでのメンテナンス)や安定したパフォーマンス提供を実現しています。
また、ファイアーウォール、VPNなどの機能は標準で利用可能となっており、vCloud Airのダッシュボードから簡単に設定ができます。
2:追加契約で利用できる機能
以下の機能は追加契約することで利用可能になります。
追加機能 | 概要 |
---|---|
ダイレクトコネクト | 企業とvCloud Air間を高速な専用線で接続するサービス |
Data Protection | vCloud Air上で稼働する仮想マシンを対象としたデータ保護。容量単位で契約する |
オフラインデータ転送サービス | vCloud Airへ転送したいデータを物理的に運送し、ヴイエムウェア側がアップロードするサービス。大量のデータを転送したい場合に利用する |
3:今後予定されている追加機能は?(2014年12月時点)
現在はまだ提供されていませんが、ヴイエムウェアが公表しているロードマップでは「DaaS」「PaaS」「DBaaS」など各種のサービスも今後展開される予定となっています(海外では一部でサービスを開始しているものもあります)。
認証機関によるセキュリティなどの認証取得状況は?
vCloud Airは情報セキュリティおよびコンプライアンスの各種認証を受け、厳密なセキュリティ基準に従い安全なサービスを提供しています。情報セキュリティ管理システムISO/IEC 2700:2005認証の他、SOCおよびHIPAA/HITECH審査もクリアしています。このため、パブリッククラウドであっても一定の要件を満たす必要がある機密データの保管先として利用できます。
共用型サービスは、論理的に分割されたマルチテナント環境として提供されます。共有利用者とは論理ネットワーク上も隔離された構成になっています。
サービスロケーションは?
ヴイエムウェアでは、クラウドサービスを提供するデータセンターの地理的な拠点を「サービスロケーション」と呼んでいます。サービスロケーションは契約時に一つまたは複数の選択が可能です。
vCloud Airでは、欧州、アジア・パシフィック、北米に複数のサービスロケーションを持ちます。大規模災害などに対するBCP対策として、システムの稼働地域とは異なるサービスロケーションにDR先を構築する構成が可能です。
サービス提供エリアが全世界となる場合、EUなどでは個人情報の地域外への持ち出しを厳しく制限する法令があるので注意が必要です。
どう使っていけるサービスか? 3つのユースケースを考えてみる
vCloud Airは今まで見てきたような特徴を持っています。既存のvSphere環境などを利用しているユーザーにとっては、同じ機能で運用可能な環境であり、かつ複数の認証を受けていることから、利用しやすいものになっているといえるでしょう。
では、vCloud Airはどのような活用方法が考えられるでしょうか。ここでは、代表的な3つのユースケースを紹介しておきましょう。
ユースケース1:既存仮想環境の拡張
基本サービスの共有型クラウドサービス(VPC)を利用し、既存のオンプレミス環境の拡張として利用することができます。
クラウドとの接続は「VMware vCloud Connector」を用いて行います。この「VMware vCloud Connector」はお使いのvSphere ClientやvSphere Web Clientのプラグインとして提供されているため、vSphereを利用している企業にとってはなじみやすいものとなっています。
既存環境を拡張して利用する際に、突発的に必要となるコンピューターリソースをvCloud Airで用意することで、リソースの準備期間やコストを大幅に抑えることが可能となります。
ユースケース2:BCP対策
基本サービスの災害対策サービス(DR)を利用し、オンプレミスのvSphare上で稼働するサーバーを定期的にクラウド上へレプリケーションできます。
リカバリー先のデータセンターや機器を準備する必要がなくなり、安価かつ簡単に災害対策が行えます。
また、切り替えテストも実施できるため、実際の災害に備えた高い運用レベルを維持することが可能です。
ユースケース3:開発環境
基本サービスの共有型クラウドサービス(VPC)を利用しオンプレミスの開発環境をクラウド上で構築することが可能です。
従来の開発環境は都度用意が必要で時間がかかってしまい、マシンスペース、コストに関しても課題となっていました。vCloud Airを利用することで迅速にクラウド上に開発環境を構築でき、かつコストを大幅に削減できます。また、vCloud AirやvSphere環境を本番で利用する場合は、開発環境との親和性の高さも一つメリットとなります。
連載第一回となる今回は、vCloud Airのサービスの全体像を紹介しました。第二回以降では、実際の使用方法や使用感などの具体的なテーマで、引き続きvCloud Airの特長をお伝えしていきます。お楽しみに。
著者プロフィール
富士ソフト 山本祥正
当初はシステム開発志望だったが、2006年に仮想化技術に出会ってから方向転換し、仮想化一筋。数多くの仮想化の提案・案件を遂行し、最近では記事の執筆や講演活動も数多く行っている。
「仮想化/クラウド技術 日本一」を目標に日々励んでいる。
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