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「Foursquare」や「Uber」が採用したユーザーエンゲージメント手法とは?アプリ開発者「だけ」でもグロースハックは実現可能

大人気スタートアップサービスが続々出現する一方で、良いプロダクトを作ったつもりなのに沈んでいくアプリも多数。人気アプリと沈むアプリ、両者の違いはプロダクト品質だけではない可能性がある。多くの人気プロダクトが採用することで知られるインフラサービスから、その理由を探る。

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アプリを普及させるために必要なのは“意外な生命線”

 より多くのユーザーに愛用してもらえる人気アプリを企画・開発するには、一体どのようなポイントに留意すればいいのだろうか? アプリ開発者であれば誰もが知りたいテーマであり、事実ネット上にはその手のノウハウやTipsを公開したサイトやブログが山ほど存在する。

 「魅力的な機能を搭載する」「人目を惹きつけて使い勝手に優れたUIを備える」。こうした点は、アプリ開発の「基本中の基本」として、既にほとんどのアプリ開発者が実践していることだろう。では、メール機能の重要性について、一度でも考えたことがある開発者は、果たしてどれだけいるだろうか?

チャンスと機会損失のリスクは枯れた技術に潜む


構造計画研究所 SendGrid エバンジェリスト 中井勘介氏

 「今さらメール?」。ほとんどのアプリ開発者は、こう聞き返すに違いない。確かに、コミュニケーション手段としてのメールは今やすっかり枯れた技術であり、それ自体でユーザーを惹きつけることはできない。しかし、現代のアプリにおいても、ユーザーや顧客を集め、つなぎとめ、そして増やしていくためには、メールの機能は極めて重要な役目を果たしているのだ。

 構造計画研究所で、メール配信サービス「SendGrid」のエバンジェリストを務める中井勘介氏によれば、現代のアプリビジネスやECサイト運営においては、「トランザクションメール」の機能が欠かせないばかりか、その優劣が直接ビジネスの成否を分けるという。

 「トランザクションメールとは、もともとは商取引のためにやりとりされるメールのことを指す用語だったが、今ではアプリやサービスを使うユーザーに何らかのイベントが発生した際に、それをトリガーにユーザーに送信するメールのことを指す。例えばECサイトであれば、注文や決済の確認メールなどがそれに当たる。もしこうしたメールが正常にユーザーに届かなかったとしたら、取引が正常に行われなくなる可能性が高くなり、最悪の場合はビジネスそのものが止まってしまう」(中井氏)

クラウド時代ならではの「届かないメール」問題

 送信したのに届かない、という問題は、実は頻繁に発生すると指摘する調査資料もある*。というのも、多くのメールサービスで「迷惑メール対策」が進んだ結果、送信元の認証(送信ドメイン認証)やコンテンツそのものの性質によって「迷惑メール」「プロモーションメール」など、多くの一般ユーザーが目にする「受信トレイ」に乗ることなく振り分けられる場合があるからだ。

 まっとうなドメインからメールを送信したとしても、例えばパブリッククラウド上の共有IPアドレスを利用していると、隣のホストが悪質なスパムを送信したり、大量の不達メールを送りつけたりしていたら、影響を受ける可能性がある。

 近年のソーシャル型アプリの場合は、「あなた宛のメッセージが届きました」「友達申請のリクエストが届きました」といったメールも、サービスの重要なパーツの一つとして位置付けられている。これもトランザクションメールの一種だが、こうしたメールがユーザーに正常に届かなかったり、あるいは配信が遅延していたりすると、やはりビジネスの足を引っ張ってしまう。

*調査資料 メールマーケティングの専門企業である「Return Path」が2013年に実施した調査資料「Email Intelligence Report: Placement Benchmarks 2013」による。この資料によると、英・仏・独の各国内アドレスに充てられたメールのうち17.8%が「届かないメール」であったという。また、欧州全体では、正当なマーケティングメールのうち、82.2%しか利用者の「受信トレイ」に到達しておらず、2009年の調査結果85.4%よりもポイントが下がっている。



ユーザーの「受信トレイ」にたどり着くメールは意外と少ない

 さて、現代のネットビジネス、アプリビジネスにおいてメールが極めて重要な位置を占めていることは、お分かりになったかと思う。こうしたことを踏まえ、では皆さんが開発している、あるいは開発しようとしているアプリやサービスは、果たしてメールを滞りなく配信できているだろうか?

 恐らく、多くの方は「できている」と答えるか、もしくは「分からない」と答えることだろう。逆に、「できていない」と答える方は、少数派かもしれない。というのは、実はアプリやサービスのユーザーに、果たしてメールがきちんと届いているかどうか、そもそも検証することが少ないためだ。取りあえずメールサーバーを立てて、ユーザーのメールアドレス一覧に宛てて片っ端からメールを送る。つまり「送りっぱなし」というケースがほとんどなのではないだろうか。

 中井氏は「送りっぱなし」のリスクについて、「ユーザーアカウントリストの整備をせずに一斉配信を続けていると、多くのアドレスが無効になっていることにも気付かず、Bounceメールとして戻ってきてしまう。Bounceメールを大量に送信するサーバーはスパム送信者と認識されてしまうことがあるため、そのまま送信し続けていると送信元IPアドレスが『ブラックリスト』に載ってしまい、その後は何度送信を試みてもメールがユーザーの『受信トレイ』に届くことはなくなる。あるいは、送信ドメイン認証を行っていないために、宛先ドメインのスパムメールポリシーに引っ掛かってしまうようなケースもある」と説明する。

 単にメールを「送りっぱなし」では、かなりの数の機会損失が発生している可能性がある。そしてその結果メールの送信元としての自社の評判(レピュテーション)がどれだけ損なわれているのか、評価する術がないのだ。

「Postfixか何かを立てればいいや」では通用しない世界

 メール送信に関する「お作法」ともいえる手続きが正しく取れているかどうかが、ユーザーのメールボックスへの到達には必須の条件なのだが、従来こうしたメール配信の手続きは大規模なサービス事業者らが、専任の技術者を介して配信していたもの。

 多くのインフラがAPI経由で利用できるようになり、プログラマブルになったことで、アプリやサービス開発のハードルはぐんと下がった。それゆえ、若いスタートアップ企業は必要最小限の人員で、場合によってはアプリエンジニア一人でサービスを立ち上げられるようになった。このことは、一方で、従来インフラ担当者が実施してきたメールなどのインフラの「お作法」にも精通しなければならない、ということになる。

 前述のようにクラウドインフラを利用する場合、メールサーバーを立てて設定・稼働させるまでは比較的容易だ。だが、送信ドメイン認証や「隣のスパム事業者」回避のための対策、配信リストの定期クリーニングにまで手を回すことはできるだろうか?

 アプリ開発者の中で「フルスタックエンジニア」を目指す傾向が強まっているが、サーバーを立ち上げて設定・運用するだけでは、スキルとしては不十分なのである。

「Foursquare」「Uber」「Pinterest」……、人気スタートアップはどうしているか?

 では、トランザクションメールやマーケティングメールを、単に「送りっぱなし」にするだけに済まさず、ユーザーや顧客とのエンゲージメントを確実に深めるために活用するには、一体どのような施策を講じればいいのだろうか? こうしたニーズを満たすために開発されたのが、先ほどもちらりと名前が出た、メール配信サービス「SendGrid」だ。

 SendGridは、一言で言えばトランザクションメールやマーケティングメールなど、大量のメールを配信する機能をクラウドサービスとして提供するものだ。メール配信に関わるあらゆる機能を、SMTPだけでなく、Web UIやWeb APIを通じてユーザーに提供している。日本ではまださほど知名度が高くないSendGridだが、海外では実は既にかなり普及しており、特に「Foursquare」や「Uber」「Pinterest」といった新興ながら多くのユーザーを獲得するネットサービスにおいて数多く採用されていることで知られている。既に世界で18万ものユーザーに利用されている。

 中井氏によれば、こうした新興ネットサービス企業において広く採用されていることには、れっきとした理由があるという。

 「スタートアップ企業は、限られた開発リソースをできるだけアプリやサービス本体の企画・開発に投入したいため、メールインフラの構築や維持にはできるだけリソースを割きたくない。また、新規サービスが成功し、急成長した際には、自前で構築したメールインフラではビジネスの成長スピードに追随してキャパシティを拡張していくのが難しい。その点SendGridは、メールインフラの構築・運用に関するほぼ全てをクラウドサービス側に任せることができ、かつサービスの急成長や一時的な負荷急増にもスケーラブルに対応できる」(中井氏)

一般的なメールサービスにない利便性を追求

 「メール送信のためのシステム」というと前述のようにPostfixを使ってメールサーバーを立てればよい、とイメージする方は多いと考えられるが、開封やクリックをトラッキングしてマーケティングにも生かそうと思うと、さらにそれらを記録・集計するための環境を構築する必要がでてくる。

 「例えば、代表的なクラウド型のメール配信サービスの一つに『Amazon SES(Simple Email Service)』がある。大規模送信も可能な、高信頼・低コストなサービスで簡単にメールを送信することができる。ただし、Bounceメールへの対処の仕組みや、開封確認などの仕組みは自前で準備する必要があるので、メールの“お作法”の部分に関する知識が十分でない場合は導入の敷居が多少高くなってしまう」と中井氏は指摘する。

 中井氏によると、こうしたメール周りの実装の煩雑さをきらってSendGridの利用を検討するユーザーが少なくないという。SendGridでは送信ドメイン認証の設定も一瞬で終わり、メールがBounceして戻ってきた場合は自動的にBounceリストに反映、以後送信をしないなど、メール送信の“お作法”を知らなくても簡単、安全にメールを送信できるからだ。


他のクラウドサービスでBounceメールへの対応を盛り込んだ配信機能を用意する場合の構成例 図はAmazon SESを使って自前でBounceメール処理を実装する場合の例。実装の自由度は高いが、複数の機能を組み合わせて自力で実装する必要がある(図はAmazon Data Services JapanによるSlideShareアカウント「Amazon Web Services Japan」が公開する資料を参考にアイティメディアで制作したもの)

 SendGridでは、こうした機能に加えて、配信メールの効果測定を支援する機能も備えている。配信したメールのうち、どれだけ正常に宛先まで到達したか、そのうちどれだけ開封されたか、さらにメール本文中に記載されたURLはどれだけクリックされたか、といった情報を自動的に集計し、グラフなどの形で提示してくれる。メールマーケティングのノウハウがなくとも、シンプルなUIで集計や計測が可能であることから、マーケターでなくとも配信メールの効果測定を基にPDCAを回していくことも難しくない。より高度なメールマーケティングを支援する機能として、一部の宛先に対してA/Bテストを実行し、より効果の高い内容のメールを残りの宛先に配信する、といった機能もある。

 スタートアップの多くは、拡大するかどうか分からない中、最少人員でサービスを立ち上げる。しかし、だからといって、できることに限界を設けては良いプロダクトであってもユーザーに受け入れられない。サービス立ち上げ当初から、インフラ技術のプロを囲い込むことが難しいからこそ、多くの開発者がフレキシブルなクラウド環境を利用しているはずだ。そうであれば、なおさら、マーケティングの知識やサービスデザインのノウハウについても、インフラ同様にクラウドサービスを利用していくことが、限られた人員で立ち上げることを至上命題とするスタートアップが選ぶべき手法といえるだろう。

AzureもSoftLayerもOK。主要PaaSからAPI経由で呼び出せる、Webhookが使える

 SendGridは、それ自体で豊富な機能を備えていることはもちろんだが、さらに外部のサービスと容易に連携できることも大きな特徴の一つだ。全ての機能はAPIで公開されているため、自身で開発したアプリから直接APIを呼び出して全ての機能にアクセスできるほか、マイクロソフトやIBM、Google、HPといった大手ベンダーとのパートナーシップや、また、HerokuやEngineYardなどのメジャーなPaaSとの高度な連携も実現している。

 例えば、Microsoft Azureで開発したアプリにメール配信機能を組み込む際には、SendGridがデフォルトの選択肢になっている。Azure MarketplaceからSendGridのサービスを購入し、アカウント登録を行えば、あとはMicrosoft Azureの開発環境から容易にSendGridのメールインフラ機能をアプリに組み込めるようになる。同様に、IBM SoftLayerにおいても、コンソール画面からメール配信サービスを追加すると、自動的にSendGridのアドインが利用可能になる。

 このように、世界中のメジャーなIaaSプロバイダーがこぞって採用していることからも、SendGridがメール配信サービスとしていかに広く支持されているかが、うかがい知れよう。

Webhookでのイベント処理

 SendGridでは、Webhookが利用できることも大きな特徴だ。Event Webhook機能では「送信完了」「メール開封」などのイベント情報を指定URLにPOSTすることができるため、送信したメールに関するイベントを簡単にフックできるようになっている。


Event Webhook機能 配信/Bounceや、開封などのイベントを扱える

 これだけでなくSendGridではParse Webhook機能を利用してメール受信をフックすることも可能だ。例えば、ブログサービスなどでメールを介して投稿できる機能などがあるが、こうした仕組みを実装する際にも、非常に効率よく開発できるようになっている。既存のSendGrid利用ユーザーの中には、こうした開発者に親しみやすい機能を活用したサービスデザインを行っている例も少なくない。


Parse Webhook機能 ユーザー登録などでよく使われる「空メールを返信してユーザー登録を行う」といった仕組みも簡単に構築可能だ

豊富なライブラリ、ドキュメント

 SendGridでは、ライブラリも豊富に用意されている。PHPやPython、Perl、Node.jsだけでなく、JavaやC#、Go言語にも対応しており、それぞれGitHubで公開している。また、APIチュートリアルは、米SendGridのWebサイトだけでなく、日本語ブログにも解説があり、デモアプリなども独自に紹介している。以下に、幾つかの使い始める際に有用な日本語のドキュメントを挙げておこう。


中井氏らが運営するSendGridに関する日本語ブログ。技術情報や開発支援ツールの紹介など、日本語で読めるドキュメントが充実している

構造計画研究所が提供する「日本人による日本人のための」サポートサービス

 サポートサービスが充実している点も、世界中でSendGridが支持されている理由の一つだ。

 「米国では24時間・365日のサポート体制を敷いており、電話、メール、チャットの窓口を設けている。対応が極めて速い点が開発者に高く評価されており、メールへの回答も速く、チャットであればすぐその場で回答が返ってくる。このサポート対応の高さに感激してSendGridのファンになったという開発者も多い」(中井氏)

 ちなみに、日本国内においては構造計画研究所がSendGridのサポートサービスを無償提供している。サポート受付時間は24時間とはいかないが、日本人スタッフによる日本語でのきめ細かいサポートサービスを展開しているという。「米国でのサポートの評判を、われわれが落とすわけにはいかない」というのが中井氏の考えだ。

日本語のドキュメントやサポートが充実

 また構造計画研究所では、前述のブログ上での技術解説だけでなく、SendGridユーザー向けに日本語版技術ドキュメントの提供も行っている。利用料金の支払いもクレジットカードだけでなく、Silverプラン以上の契約であれば円建ての請求書払いができるため、スタートアップや個人ユーザーだけでなく、日本国内のエンタープライズユーザーにとってもメリットが大きいだろう。

スタートアップが無償でほぼフル機能をトライできる料金体系

 同社が提供するSendGridのサービスプランは、月間送信メール数4万通まで/月額1180円の「Bronze」、月間10万通まで/月額9480円の「Silver」、月間30万通まで/月額2万2980円の「Gold」、月間70万通まで/月額4万5980円の「Platinum」の4種類と、大規模ユーザー向けの個別見積もりプランがある。

 このうち、Bronzeプランには一部機能の制限があるが、実は一日400通までなら無償で利用できる「フリートライアル」プランも提供されている。こちらはほぼ全ての機能が無償かつ無制限で利用できるため、開発者が“お試し”で使ってみるには打って付けだ。本稿を読み、興味を持たれた方は、ぜひ一度気軽に試してみてはいかがだろうか。


提供:株式会社構造計画研究所
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年3月31日

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