仮想化専用ストレージのティントリ、「あまり使ってほしくない」QoS保証機能を発表した理由:VMstoreの新OS 3.2を国内発表
ティントリジャパンは、仮想化専用ストレージの「Tintri VMstore」で、仮想マシン復旧とQoS保証の新機能を発表した。QoS保証は、「誤った使い方をしてほしくない」機能なのだという。
ティントリジャパンは2015年6月4日、同社の仮想化専用ストレージ「Tintri VMstore」用OSの新バージョン、「Tintri OS 3.2」を国内発表した。Tintri OSの機能は、VMstoreユーザーすべてに対し、無償で提供される。ただし、後述の仮想マシン復旧機能はオプションソフトウエアであるため、有償だ。
ティントリジャパン 職務執行者社長の河野通明氏は新OSについて、「これはティントリにおける第1章の最後の発表」と話した。同社の創業時に、ストレージとしてこういう機能があればいいと考えていたものすべてが、バージョン3.2で実現されたのだという。
Tintri OS 3.2における目玉機能は、仮想マシンのパフォーマンスの上限値/下限値を設定し、適用できる「VMパフォーマンス保証(VM-level QoS)」と、仮想マシン復旧/複製作成の「タイム トラベルVMリカバリー(SyncVM)」だ。
パフォーマンス保証とVMstoreの自動QoS制御との関係
VMパフォーマンス保証とは、アプリケーション(仮想マシン/仮想ディスク)単位でIOPSの最大許容値あるいは最小保証値、またはその両方を設定し、適用できる機能。VMstoreでは、仮想マシン単位でI/Oの状況をリアルタイムでグラフィカルにモニターできる管理インターフェイスを備えているが、このインターフェイスで状況を見ながら、上限値、下限値を示すバーをドラッグして上げ下げし、設定を変更することもできる。
例えばクラウドサービス事業者が、ストレージI/Oについて、利用料金の異なる複数のサービスレベルを提供するために、この機能を利用できる。また、一般企業では、VMstoreの利用がひっ迫している状態で、突発的に大量のストレージI/Oを発生させるアプリケーションが、他のアプリケーションの性能に悪影響を与えることを防ぎたい、あるいはその逆に、どうしても一定の性能を確保したいという場合に、利用できるという。
VMパフォーマンス保証機能について、米ティントリのテクノロジーVPであるレックス・ウォルターズ(Rex Walters)氏は、「誤った使い方をしてほしくない」という。その理由は、同社の製品VMstoreが、当初から仮想マシン単位(すなわちアプリケーション単位)の自動QoS制御機能を備えていて、これがVMstoreの最大の特色だからだ。
VMstoreは、従来のストレージと異なり、LUNやボリュームという概念がない。仮想マシン単位でデータとそのI/Oを管理する。QoSについては、VMstore上のすべての仮想マシンについて、IOPSやレイテンシといったパフォーマンス値、およびVMstoreの各種リソース(コンとローラCPU、メモリ、ネットワーク帯域など)の消費状況をモニターし、それに基づいて定期的にリソースの割り当て直しを行っている。突発的にリソースを必要とする仮想マシンは、別途リザーブされていたリソースが割り当てられるようになっている。こうした形で、ストレージI/O要求の高いアプリケーション(仮想マシン)が、他のアプリケーション(仮想マシン)のI/Oを押しつぶさないようになっている。
アプリケーションごとにRAIDを構成するなどでなく、仮想マシン単位でリソースを割り当てる仕組みによって、仮想化環境において性能を担保する一方、オーバープロビジニングを回避し多数の仮想マシンを集約できるという意味での効率を向上する、というのがVMstoreの基本的なコンセプトだ。
ウォルターズ氏は、ほとんどの場合、上記の自動QoS制御機能に任せてもらうのが最適な方法だという。例えば極端な話、VMstoreに収容する全ての仮想マシンに上限値/下限値を設定したのでは、この製品を使うメリットがなくなってしまうという意味だ。
開発・テストのためのコピー作成が瞬時にできる
一方、オプションソフトウエアの仮想マシン/仮想ディスク復旧SyncVM)は、仮想マシン単位で、差分のスナップショットコピーを用い、任意の仮想マシンを更新できる機能。
ティントリは「タイムマシーンVMリカバリー」とも呼んでいるが、タイムスライダーを使って、任意の時点の仮想マシンのデータに復旧できる。いったん復旧した後に、別の時点のデータを復旧したくなったら、改めて復旧時点を選択し直せばいい。当初の復旧時点から過去にさかのぼることもできるし、未来の時点を選択し直すことも可能だ。これを何度でも行えるといいう。数クリックで即座に復旧・同期が行えるとしている。
任意の仮想マシンを更新できるという点は特色でもあり、本番アプリケーションの稼働を止めることなく、コピーを容易に取得できるため、アプリケーションの開発・テストに有効だと、ティントリは話している。
SyncVMに関する今後の機能拡張として、例えば仮想デスクトップ(VDI)において、ユーザーがセルフサービスでファイル単位のデータ復旧を行える機能を、バックアップソフトウエアとの連携で提供したいと、ウォルターズ氏は話した。
オールフラッシュストレージも提供?
ティントリのVMstoreは、フラッシュとハードディスクドライブのハイブリッド構成だが、データは全てまずフラッシュに保存され、最もアクセス頻度が低いデータから(LFU:Least Frequently Used)、ハードディスクドライブに書き出される形になっている。これにより、99%のフラッシュヒット率を達成しているという。
そうはいっても、世の中にはオールフラッシュストレージしか選択肢として考えない人がいる。オールフラッシュでも、仮想マシン単位のQoS制御は有効なはずだ。そこでウォルターズ氏に、VMstoreのオールフラッシュストレージ版を提供する考えはないのかと聞いてみた。ウォルターズ氏は、「すぐにではないが、近い将来提供できるだろう」と答えている。
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