Windows 10、クラウド、モバイル、IoT、そしてHoloLens──全方位で逆襲するマイクロソフト:de:code 2015基調講演(3/3 ページ)
日本マイクロソフトは2015年5月26〜27日にエンジニア向けイベント「de:code」を開催した。本稿では、近年のマイクロソフトを取り巻く市場環境と二つの大きな戦略を見ながら、de:code 2015の基調講演の模様を凝縮してお伝えする。
iOS、Androidも。多様なクライアントをユニバーサルWindowsアプリでカバー
基調講演の後半では、Giorgio Sardo氏(Microsoft, Senior Director in the Developer Experience & Evangelism group)が登壇。同社の「デバイスプラットフォーム」、すなわちクライアント側の戦略を語った。
Windows 10は、IoT向けデバイスをターゲットとするIoT Coreや、Surfaceのようなタブレット、それにスマートフォン、さらにはHoloLensと多種多様なデバイスを1つのOSでカバーする。それに伴い、多くの画面サイズを1個のアプリでカバーする必要が出てくる。デモでは、「楽天」のいくつかのサービスをサンプルとして、スマートフォンやタブレットで画面サイズに合わせ情報量を変化させるレスポンシブUIデザインを見せた。
こうした多様なデバイスをカバーする上で重要な役割を持つのが、「ユニバーサルWindowsアプリ」だ。ここで実施したデモでは、インテリアデザイン支援のアプリケーション「Fabrikam」をサンプルとして、ペン入力、3Dビュー、レスポンシブ、HoloLensのカメラオブジェクトの制御など、上位レイヤーの機能をごくシンプルなコードで記述できる様子を見せていった。
Giorgio Sardo氏(Microsoft, Senior Director in the Developer Experience & Evangelism group )。フライトシミュレーターのデモ時。左腕にはMicrosoft Bandを付け、そのジャイロセンサーで飛行機を制御していた
Sardo氏は、Windows 10に載る新たなWebブラウザー「Edge」も次のように紹介した。「EdgeはJetStreamベンチマークではIE 11の2倍も高速だ」また「ユニバーサルWindowsアプリ」の例として、「Hosted Web Apps」機能を使うと、WebサイトをWindowsストアアプリとして登録することができる様子を紹介した。デモでは、Webアプリのフライトシミュレーターを動かして見せた。
Raspberry Pi 2にWindows 10の「IoT Core」を載せ、LEDを光らせて見せたり、センサーからデータを収集したりするIoT(Internet of Things)を意識したデモもあった。
最後に「オープンソースとクロスプラットフォーム」を強調
ここで、基調講演の最後の20分間に注目したい。中長期的なビジョンというよりも、今現在実現できていることを中心に、日本で働いているエンジニアへのメッセージが語られたからだ。
最後の20分間では、伊藤かつら氏が再び登場した。再登場の「つかみ」は、Windowsストアアプリ「StaffPad」だ。楽譜をデジタイズして演奏までしてくれる。さらに、取り込んだ楽譜をペンでエディットして、伊藤氏好みのフルートのトリルを付け加える様子を見せた。なかなか素敵なアプリだ。Windowsストアアプリもなかなかやるな、と思わされる。
続けて伊藤氏が説明したのは、オープンソース、それにクロスプラットフォームへの取り組みである。それも、開発者向けにコードを見せるデモを用意した。
オープンソースの取り組みとして取り上げたのは、軽量コンテナー技術として人気が急上昇中の「Docker」である。「マイクロソフトはDockerプロジェクトに貢献し、アウトプットをAzureやWindows Serverに実装している」(伊藤氏)。
デモでは、ASP.NET上に作られたWebアプリケーションを、Windows Server上のDockerコンテナーに展開し、さらに同じアプリをAzure上で動くLinux環境のDockerコンテナーに展開して見せた。LinuxのDockerコンテナーとして動くアプリを、マイクロソフト系開発者にはおなじみのVisual Studioでエディットする様子も見せた。
伊藤氏は次のように話す。「DockerはすでにAzure上に実装されている。来年リリース予定のWindows Server 2016にも実装される。また、Windows ServerにはAzure Stackが載ってくるので、Azureのアーキテクチャをそのまま利用できる。言い換えると、オンプレミスとパブリッククラウドの差が何もなくなる」
Azureをターゲットに開発したシステムが、オンプレミスのWindows ServerでもパブリッククラウドのAzureでもどちらでも動くなら、いわばAzureを「お試し」に使ってみるアプローチも可能となる。これは、オンプレミスでWindows Serverを使いたいユーザーにとっては重要なことだ。
もう一つのテーマがクロスプラットフォームだ。新たに提供する開発環境「Bridge」では、Webアプリ、古い世代のWin32アプリ、Androidアプリ、iOSアプリを全てWindows上に持ってくることが可能となる。
最後に、Visual Studioの開発支援機能をLinuxやMac OS Xで実行可能とするコードエディター「Visual Studio Code」のデモでは、Mac OS X、そしてUbuntu Linuxの上で動く様子が見られた。
「何より大事なのはイマジネーションです。この新しい技術で何にワクワクして何をやろうとしているのか」
基調講演の冒頭と同じ言葉を使い、伊藤氏はセッションを締めくくった。マイクロソフトは、適用範囲を広げつつあるクラウドプラットフォームのAzure、クラウド適性を高めたオンプレミスのサーバーOS、IoT向けのOS、さらには実写に迫るグラフィックス、VRを活用したユーザー体験をもたらすHoloLensなど、挑戦的な製品/サービスを育てつつある。
これらをどう使いこなすかは、エンジニアたちの想像力に懸かっているのだ。
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