業務支援データベースの高速化のカギは発想の転換 アットホームの実践例:データベース高速化のいま(2)(1/2 ページ)
データベースパフォーマンス改善の取り組みでは、システム全体の中でどこに着目するかで、その後のコストや運用工数は大きく変わる。企業におけるデータベースパフォーマンス改善の取り組みから、「発想の転換」の実例を見てみよう。
特集:データベースパフォーマンス最大化の技術
組織の重要な資産の一つである「データ」を支えるデータベースシステム。特集ではハード・ソフトの両面からデータベースシステムを最適化、高速化する手法を紹介。データベース管理者が主導してデータ資産の価値を高める方法を考える。
今回は、事例からデータベースパフォーマンス改善の「発想の転換」のヒントを得てみたい。業務部門の利用者の利便性を高めるデータベースパフォーマンス改善の取り組みとして参考になるだろう。
ひと言で「データベースパフォーマンスを高速化する」といっても、バッチ処理高速化、オンライントランザクション処理高速化、分析処理高速化など、対象とするシステムによって採るべき手法は異なる。連載第二回となる本稿では、主に実績データの参照と分析に関わるシステムでのデータベースパフォーマンス高速化の事例を紹介する*。自社保有データを、広く事業部門向けに提供して業績に貢献しつつ、データ増やアクセス増に対処、効率化を実現した事例として参考になるだろう。
*注:本稿は2015年9月11日に開催した「DB高速化道場」におけるアットホーム株式会社講演『日本最大級の不動産総合情報サイト「アットホーム」のサービスを支える情報システム』の講演内容を基に本企画向けに編集部がまとめたものです。
情報のハブとして情報サービスをフックにした事業展開を進める
不動産情報サイト「アットホーム」は、本稿の読者にもよく知られていることだろう。5万3千店以上の加盟・利用不動産店から公開された不動産情報を集約し、コンシューマー向けサービスを展開しているため、われわれも目にすることが多い。このWebサイトを運営しているのがアットホームだ。従業員数は2015年8月末現在で1339名、日本国内に45カ所の事業所を持つ。
同社の事業は、われわれがよく知る一般向けの不動産情報サイトだけではなく、不動産業務支援事業の他、不動産会社間の情報流通事業である「ATBB(アットビービー)」も手掛けている。BtoCだけではなく、BtoBの事業を含めた三つの事業領域をカバーしており、企業向けのサービスの一部は、加盟店のみならず一般企業にも提供している。
同社が扱う物件数は、2014年度だけで「ATBB」で約830万件、「アットホーム」で約1930万件にも及んでおり、この数は年々増加しているという。また、ATBBは約4万の不動産会社が利用している。いずれの事業も、業界に特化したデータの流通が事業の根幹を担っているといえる。また、同社では社外の顧客向けの情報流通だけでなく、自社内での情報活用も積極的に推進しており、講演では特に自社のシステム利用者拡大を受けたデータベース高速化の実際を聞くことができた。
今回紹介するアットホーム 情報システム部 管理運用グループは、システム設計から構築・導入、運用までを全て自社で行い、サーバー/ストレージ選定に加え、ネットワーク設計や構築、データベース設計/構築はもちろん、運用管理ツールの組み込みや障害対応も担っている。講演で登壇したのは、同部の當間健太氏、宮之原秀雄氏だ。
同社は現在、要件・用途に応じた四種類のデータベース構成を採っている。
主要なシステムでは「Oracle Database」によるRAC(Real Application Cluster)構成と、「MySQL」とMySQL向けの冗長化ソフトウエア「HA Proxy」を使った構成を採用している。
また「不動産取引データの集計システム」ではOSS(オープンソースソフトウエア)の「PostgreSQL」とPostgreSQL向けのクラスタリングソフトウエア「pgpool」を採用。「ATBB(不動産業務総合支援サイト)」では2015年5月からNoSQLである「MongoDB」のクラスター構成による運用を行っている。
情報システム部 管理運用グループは、これらのシステムを運営し、日々改善することをミッションとしている。
選定は運用を考慮した三つの軸で、多様なデータベースシステムで高速化を検討
同社では、構成が異なる四種類のデータベースシステムのいずれにおいても、パフォーマンス向上を目的に社内協議を実施。各データベースシステムで、フラッシュストレージを導入することを決定した。
選定対象をフラッシュストレージとした上で、どの種類の製品をどう採用するかは、「導入を容易にする」「運用しやすくする」「コスト削減」という三つの"選定の軸"を設定して評価したという。
具体的には、以下の図で赤く囲ったフラッシュ製品を検討した。本稿では、これらのうち、フラッシュストレージアレイ製品を使った業務支援システム改善状況にフォーカスする。
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