日本型シェアリングエコノミーのカタチ:ものになるモノ、ならないモノ(68)(2/3 ページ)
「Airbnb」「Uber」に代表されるシェアリングエコノミー型サービスは、日本ではまだ発展途上にある。その成長において、何が障壁となっているのか。課題を掘り下げながら、「日本型シェアリングエコノミー」の形を探る。
法律の枠組みの中で合法的に運用されているシェアリングエコノミー
二つ目の要因と思われる、既存業界や法律との軋轢という視点で日本の現状を見ると、むしろこちらの方が根は深い。例えば、Uberを標的にしたタクシードライバーのデモや抗議が各地で発生していることは有名だ。また、同サービスは、2015年2月から福岡市で「みんなのUber」というライドシェアの実証実験を行った。結果的には、許可を得ずに自家用車で営業する“白タク行為”を禁ずる「道路運送法」に牴触する恐れがあるという理由で国交省から中止の指導が行われたようだ。また、Airbnbにしても、「旅館業法」に抵触する可能性を指摘して、「自宅の部屋を有料で他人の宿泊に提供するのは限りなく黒に近いグレー」とする意見もある。
ただ、全てのサービスが法的問題を抱えているというわけではない。例えば、前出のAnycaの場合、道路運送法に明記された「共同使用契約」という枠組みの中で合法的に運用されている。いわゆる「わ」ナンバーのレンタカーは、事業者としての当局の許可が必要だが、「共同使用契約」であれば、個人間の有料シェアも許されている。また、後述する「ショップカウンター」という空きスペースや物件を期間限定で仲介するサービスも、「一時使用賃貸契約」という枠組みの中で合法的に運用されている。「一時使用賃貸契約」は、イベントなど期間限定で不動産を借りる場合に適用される法律だ。
また、シェアリングエコノミーを意識した規制緩和を目指す動きもある。政府は「インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅、別荘などを活用した宿泊サービスの提供」について、2016年に結論を出すという閣議決定を行った。Airbnbのような仕組みを視野に入れた「民泊」の規制緩和を検討しているということだろう。ただ、これはうがった見方をすると、宿泊施設の不足が決定的な東京オリンピック/パラリンピックに向けた場当たり的な動きと見えなくもないが……。
お店の一角だけ、あるいは壁面や鏡だけをシェアする
このように個人間という視点では、十分に普及しているとは言いがたい日本のシェアリングエコノミー界隈において、ビジネス利用を前提とした、事業者をターゲットにしたハイブリッド型のサービスも登場している。ハイブリッド型というのは、シェアリングエコノミー的な仕組みを取り入れつつ、従来型の仲介業的な性格も兼ね備えたサービスのことだ。空きスペースや物件を期間限定で仲介する「ショップカウンター」がそれだ。
このサービスが主に狙うユーザーは、店舗を持たずに営業しているEコマースサイトなどの中小事業者だ。そのようなユーザーに対して、1日数千円で借りられるスペースから1日数十万円のイベント専用スペースまで、さまざまな「場所」のマッチングを行っている。無店舗事業者からすると、期間限定ながら最低限のリスクで実店舗を出すことができ、顧客とのリアルな接点を持つことができる。
ショップカウンターに登録されている「場所」を見ると、表参道エリアにある美容室の鏡や壁面、訪日外国人の滞在が多いホテルロビーのラウンジスペースといったものがあり、実にユニークな展開を行っている。ホテルロビーのラウンジスペースは、他では買えないオシャレでカラフルなスリッパをネットで販売する事業者が利用して、好評を得たという。
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