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日本型シェアリングエコノミーのカタチものになるモノ、ならないモノ(68)(3/3 ページ)

「Airbnb」「Uber」に代表されるシェアリングエコノミー型サービスは、日本ではまだ発展途上にある。その成長において、何が障壁となっているのか。課題を掘り下げながら、「日本型シェアリングエコノミー」の形を探る。

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 ショップカウンターを運営するカウンターワークス代表取締役の三瓶直樹氏は、「オンラインショップだけでビジネスを展開する事業者にとって、事業を拡大する過程で顧客とのリアルな接点が必要なタイミングが必ず訪れる」と力説する。そのような事業者にとって、いきなり常設店舗を構えることはリスクが大き過ぎる。そこで、期間限定で「場所」をマッチングするショップカウンターのようなサービスにニーズがあるとにらみ、今年の6月にサービスを開始したそうだ。


カウンターワークス代表取締役の三瓶直樹氏。実家が不動産業を営んでおり「不動産の仲介業を身近に見て育った」(三瓶氏)そうだ。

 登録してある「場所」は、同社の営業担当が「ドブ板営業的に足で稼いで見つけ、オーナーと交渉したものが多い」(三瓶氏)という。その「場所」が有料で貸せると意識している人はまずいないようで、話を持ち掛けると「驚かれる」そうだ。それはそうだろう。普通に営業しているお店の入り口付近の一角だけ、あるいは壁面や鏡などの「場所」を人に貸すという発想は生まれにくい。

 ただ、店の中に別の商品やサービスを扱う他人のお店が出店することになるので、お客さんが混乱するように思うのだが、その点については「場所」のオーナー側で「自分のお店の世界観やテイストを損なうような商品や展示物についてのオファーであれば断ることも可能」(三瓶氏)だという。このあたりは、レビューによる評価をチェックして、シェアを断ることができる個人間のシェアリングエコノミーと同様の考え方だ。

 ショップカウンターのような形態の不動産の仲介システムは、「一時使用賃貸契約」という枠組みの中で合法的に運用されていることは前に述べた。ただ、法律的には問題はなくても、従来型の不動産仲介業者との間に軋轢を生まないのだろうか。

 その点に関して、三瓶氏は「従来型の業者は、われわれが扱うような短期契約で、しかもお店の一角や壁面を貸すといったような、手間がかかる割には利益の少ない案件を扱うことはしないので、衝突することはないだろう」と話す。確かに、従来の不動産屋は、長期的な貸借契約の上で一定以上の利益を上げることを前提にした業務フローで運営され、コスト構造もそのように構築されている。ショップカウンターに登録されているような細かな案件を扱おうというインセンティブは働かない。

 聞けば不動産の分野は、IT化の遅れた業界だという。例えばこれまで、不動産契約時の重要事項説明は原則的に「対面」での実施が要求されていた。これに対して国土交通省は現在、スカイプなどのツールを使用したオンラインでの説明の実施に関する社会実験を行っている。ビジネスシーンにネットが浸透してから、かなりの時間が経過しているこのタイミングで「まだそこなの?」と驚きを禁じ得ないが、ショップカウンターのような新しい取り組みが、既存の不動産業界にフィードバックされることで、宅地建物取引の慣行を変えることにもつながるかもしれない。

「ものになるモノ、ならないモノ」バックナンバー

著者紹介

山崎潤一郎

音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。大手出版社とのコラボ作品で街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。音楽趣味はプログレ。近著に、「コストをかけずにお客さまがドンドン集まる!LINE@でお店をPRする方法」(KADOKAWA中経出版刊)がある。TwitterID: yamasaki9999


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