「ブロックチェーン技術」でさくらインターネットが実現したいこと:IoTインフラの形を変えるかもしれない実証実験中
バズワード的に注目を集めるブロックチェーン技術について、さくらインターネットのフェローでもある小笠原治氏がその可能性をブログで言及している。
最近、Fintech(フィンテック)分野で注目を集めているブロックチェーン技術について、さくらインターネットのフェローである小笠原治氏がその可能性についてブログで言及している。
小笠原氏のブログによると、ブロックチェーン技術の応用範囲は、ビットコインなどの仮想通貨術やFintechといった狭い分野にとどまらず、クラウド会計サービス基盤やスマートコントラクトの認証、シェアリングエコノミーでの貸借と鍵管理など、さまざまな用途が考えられるという。
小笠原氏がフェローとして所属するさくらインターネットは先日、ブロックチェーン技術の実証実験に参加することを明らかにした。その際には、同社が運営するクラウド環境で、テックビューロが開発するプライベートブロックチェーンのクラウド化技術「mijinクラウドチェーン」の実証環境を2016年1月から半年間、無償で提供することのみが発表された。
だがその先には、小笠原氏がブログで述べているような技術分野での利用に向けても、さくらインターネットのデータセンターリソースを提供することを見据えているようだ。先日の発表は、そのための実証実験環境を無償提供するという一面もあったようだ。
センシングデータの連続性や非改ざん性の担保
小笠原氏のブログによると、さくらインターネットのインフラ上にIoT(Internet of Things)向けのプラットフォームを作ろうとしているという。そこでは、IoTに取り組むに当たって検討すべきポイントをいくつか挙げており、その中の1つである「デバイスをインターネットに適切につなぎ、データの保存・活用方法を想定」することが、これからIoTを手がけようとしている企業にとって欠如していると指摘した。
ブログでは、センサー(IoT)によって収集した個人データを、それを処理・加工する業者に橋渡しするビジネスの可能性について、具体例を挙げて述べている。その際のセキュリティ確保の方法について、小笠原氏は「実証実験を経て実用的だと判断できれば」という前提だが、ブロックチェーン技術で、センシングデータの連続性や非改ざん性の担保ができると考えているという。
つまり、さくらインターネットは単にFintech分野で利用しようということではなく、IoT分野で取得したデータのトランザクション処理に必要だろうということが、ブロックチェーン技術に取り組み始めたきっかけであるようだ。
さらに、小笠原氏はIoT分野の基盤インフラを担う「技術者や事業者、モジュールが希少だと感じている」としており、これを担うサービスはさくらインターネットが手がけるべきだと考えているという。そして「やるなら徹底的に通信からモジュールのコストまで、同社に期待される水準に持っていくべきであり、できるはずだ」と自負しているようだ。
なお、クラウドサービスプロバイダーでのIoTインフラ参入という意味では、ヤフーが提供する「myThings」と自作IoTデバイスとの接続サービスを展開するIDCフロンティアや、Amazon Web Services(AWS)を利用して閉域網を構築できるサービスを展開するソラコムのような企業が出現している。ビジネスモデルの落とし込みに際して「デバイスをインターネットに適切につなぎ、データの保存・活用方法を想定」したインフラ基盤の基礎技術として、ブロックチェーン技術が利用できるかどうかは、実証実験の成果を待ちたい。
小笠原氏が参考として挙げているテックビューロ 代表取締役社長 朝山貴生氏のブログでは、ブロックチェーン技術について「処理の負荷を分散することが主目的ではない」とし、「あくまでも主目的は物理的分散によるダウンタイムの払拭」にある、とその目的を説明している。ITシステム投資の削減に加え、「データの出所が暗号署名として必ず伴い、改ざんすることができない勘定機能を、低コストかつゼロダウンタイムのワンストップソリューションとして、ネイティブの基本機能だけで提供できることがブロックチェーンの強み」だという(ここでは、現在のコンピューターリソースで改ざんを試みることが不可能に近い仕組みを持つことを指して、実質的な特性として「改ざんできない」としている)。
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