ビッグデータ、機械学習を誰でも手軽にビジネス活用できるようにする、SI現場の知見が詰まったクラウドサービスで何ができるのか:ユーザーの状況・行動パターンを未来予測したレコメンドも
オープンストリームが、リアルタイムデータ収集・蓄積プラットフォーム「LogStream(ログストリーム)」を2015年11月から提供を開始。その概要や、開発の狙い、その活用例として、開発中のビッグデータのモデリング・解析・通知サービスについて担当者に聞いた。
デバイス/センサーの普及で大量のデータを取得可能になった現在、それをどう生かせばいいのか?
デバイス/センサーの普及で大量のデータをあらゆる企業が活用できる環境が現実のものになりつつある。今や誰でもスマートフォンやタブレット端末を持つのは当たり前になり、最近では、より生活に密着したウェアラブル端末や情報家電も続々と登場している。さらに、センサー技術の進展によって、自動車の走行情報や気象情報、消費者の行動情報など、今まで得られなかった情報もリアルタイムに収集できるようになってきた。
一方で、こうしたモバイルデバイスやセンサー端末から発生してくる多種多様かつ膨大な情報をどのようにして効率的に収集・蓄積し、効果的に分析・加工してビジネス価値へとつなげていくのかが、企業にとって重要な課題になっている。
「モバイルデバイスの普及やセンサー端末の技術進化によって、時間や場所を問わず、さまざまな情報をきめ細かく取得できるようになった。しかし、データを蓄積し活用するためには考慮しなければいけないことが多い」と指摘するのは、オープンストリーム システムインテグレーション事業部 ソリューション本部 テクニカルソリューション部 部長 ITアーキテクトの両角博之氏。
オープンストリームでは、いち早くビッグデータ関連のシステムインテグレーションに取り組んでおり、顧客企業のニーズに最適化したビッグデータソリューションを提案し、既に数多くの導入実績を持っているという。そして、今まで培ってきたビッグデータ技術と開発実績を基に、リアルタイムデータ収集・蓄積プラットフォーム「LogStream(ログストリーム)」を新たに開発し、2015年11月から提供を開始している。
両角氏は、「LogStream」を開発した経緯について次のように述べる。「当社では、広告系や家電系など業種を問わず、幅広い企業のビッグデータニーズに対応してきた。大量に発生するログデータなどの加工処理や集計処理を行うシステム基盤を構築。最近では、よりリアルタイムに状況を把握するために、リアルタイム処理基盤を構築しユーザーのニーズに対応した。昨今、データを収集・蓄積するだけではなく、そこから新たな価値を生み出し、ビジネスに活用できないかというニーズが高まってきた。こうしたニーズに対応するべく、大量データをリアルタイムに収集・蓄積するシステム基盤を短期間かつスモールスタートで実現し、企業のデータ活用を支援するプラットフォームとして『LogStream』を開発した」
ビッグデータ活用を支援するリアルタイムデータ収集・蓄積クラウドサービス
「LogStream」は、データ活用を行うためのデータをリアルタイムに収集・加工し、蓄積するためのクラウド上のサービス。任意のクラウドを対象にデータ蓄積をサポートする。スマートデバイス(スマートフォン・タブレット端末・ウェアラブル端末など)に搭載されているGPSの位置情報や各種センサー情報から得られるセンサーデータを収集して加工し、分析可能なデータとして蓄積する。
主な機能として、各種デバイスからデータを収集する機能、加工する機能、蓄積する機能を備えている。
データ収集機能では、さまざまなデータに対応したライブラリ/SDKを提供する。後述する「RecoBee(仮称)」を使用しデータ活用を行うためには、スマートデバイス用SDKが用意されている。SDKを使用することで、スマートデバイスのさまざまな動作情報から必要な情報を指定して収集することが可能となっている。
データ加工機能では、非構造化データを含めた大量データをリアルタイムに加工処理する機能を提供。具体的には、デバイスから収集される生データに識別情報を付けて取り込み、各種ツールに応じてデータを分析・可視化できるように一次加工する。
そして、データ蓄積機能により、収集した生データをクラウドストレージに蓄積するとともに、一次加工したデータをNoSQLデータベースに格納する。さらに、蓄積されたデータは、多様なフォーマットに柔軟に対応しており、レコメンドシステムやBIツールなどのデータ解析ツール、可視化サービスなどとのシームレスなデータ連携を実現。外部システムに向けて公開されたインタフェースを通じ、タイムリーかつ容易にデータ連携が行える。
また、「LogStream」は、これらの機能をクラウドサービスとして提供することで、企業のビジネス規模に合わせてスモールスタートできる点も見逃せない。「これにより、自社内にシステムを新規構築することなく、初期投資を最小限に抑えながら、短期間でビッグデータの収集・蓄積プラットフォームを利用開始することが可能になる」(両角氏)のである。
ビッグデータのモデリング・解析・通知サービスでユーザーの状況・行動パターンを未来予測したレコメンドを提供
さらにオープンストリームでは、ビッグデータを解析し、状況に応じたレコメンドを行うサービス「RecoBee(仮称)」を開発中だ。「RecoBee(仮称)」で活用するデータの収集と蓄積に、「LogStream」を使用している。
「『RecoBee(仮称)』は、『LogStream』によって収集・蓄積されたデータを基に、ユーザーの行動を解析し、状況に応じた情報をレコメンドするためのプラットフォーム。『LogStream』で蓄積したデータを利用し、当社が持つリアルタイムデータ解析や機械学習などと組み合わせることで、高度なデータ分析機能から、分析結果の通知機能、端末・ユーザーの管理機能、認証機能までトータルにサポートする環境をSaaSで提供する。
これにより、データを収集・蓄積するだけにとどまらず、実際にデータをビジネスに活用していくフェーズまで含めて、企業のニーズに最適なソリューションを提案していく」と、「RecoBee(仮称)」について説明するのは、オープンストリーム システムインテグレーション事業部 ソリューション本部 テクニカルソリューション部 アーキテクトの宮田友美氏。
データ分析機能では、機械学習技術などを利用したユーザー行動分析やレコメンド分析を行う。「例えば、スマートフォンから収集したセンサーデータを機械学習によってリアルタイムに分析することで、今ユーザーが座っているのか、立っているのか、歩いているのか、走っているのかなどのユーザーの行動を把握可能となる。また、大量に蓄積されたデータをバッチ処理することで、傾向分析や未来予測を行うこともできる」(宮田氏)という。
そして、この分析結果を踏まえて、ユーザーの行動パターンに適切なタイミングでレコメンドなどの通知を行う。通知機能としては、スマートフォンなどモバイルデバイスのプッシュ機能の他、HTTPやHTTPS、SMS、電子メールを利用することもできる。例えば、データを活用する家電製品のケースでは、特定の条件を満たしたときにHTTP/HTTPSを利用して家電製品側のAPIを呼び出すといった通知にも対応している。また、スマートデバイス向けに提供しているSDKではプッシュ通知受信をサポートしており、データ活用基盤を簡単に実現できる環境を提供する。
管理機能としては、プッシュ通知などを行う対象端末・ユーザーの管理基盤を用意。ユーザー認証や端末管理の機能、分析設計やプッシュ通知などのための各種APIを提供することで、端末・ユーザー管理に掛かる業務負荷を軽減し、分析モデルの開発に注力できるようにしている。
DM・クーポン、イベント、自動車、保険、農業、小売――RecoBeeの利用用途
同社では「RecoBee(仮称)」を、顧客企業のビジネスニーズに最適化したビッグデータ活用プラットフォームとしてソリューション提案していく予定だ。宮田氏は、「RecoBee(仮称)」の活用が見込まれるシーンとして、「DM・クーポンなどの電子化」「イベントの入退場」を挙げる。
「DM・クーポンなどの電子化では、『RecoBee(仮称)』を活用することで、利用者の属性や利用したタイミング、利用率などを詳細に分析し、より効果的な配信が可能となる。また、利用者にとっても紙媒体のクーポンを持ち歩く必要がなくなり、利便性が向上するメリットがある」という。「イベントの入退場では、紙のチケットを電子化してスマートフォン上で提供し、入退場にかかる時間を短縮できる。そして、『RecoBee(仮称)』によって、来場者のリアルタイムな位置情報を分析することで、人気のブースや空いているブース、興味がありそうなブースをタイムリーに紹介することが可能になる」としている。
この他にも、「自動車」「農業」「小売」といった業種においても「RecoBee(仮称)」の活用が期待できるという。例えば、「自動車」では、急ブレーキや急発進の有無、よく通る道の事故の発生率など運転の特徴を分析できるとともに、運転者の利用状況や能力によって保険の組み立てを見直したり、新たな保険商材の開発に役立てたりすることもできる。また、運転中の場所や時間などから、近くにあるお店の情報などを適切にレコメンドすることも可能だ。「農業」では、湿度・温度センサーなどのデータを分析して、水やりや肥料のタイミングの最適化、自動化を図れる他、収穫時期や生産量の予測にも活用できる。「小売」では、オンラインとオフラインの購買を連携するO2Oに有効活用でき、消費者の購買履歴や現在の位置情報などから、開催中のイベントを紹介したり、お勧め商品の売り場へと誘導していったりすることもできる。
オープンストリームでは、こうした幅広い分野への活用拡大を視野に「RecoBee(仮称)」の開発を進めており、特に機械学習プラットフォームを強化し、将来的には誰でも容易に機械学習を活用できるモデルの提供も計画している。また、収集したデータを基にリアルタイムに行動分析・レコメンデーションする機能の開発に取り組んでいる他、AWSだけではなく、Microsoft Azure上でも「RecoBee(仮称)」を提供できるようにしていくという。
オープンストリームは、ビッグデータ活用の中核として「LogStream」を、その活用例として「RecoBee(仮称)」を位置付けている。今後、同社が蓄積してきたビッグデータ、モバイル、クラウドなどの技術を統合することで、ますます加速するビッグデータ活用をリードし、顧客企業と一緒になって新たなビジネスチャンスを切り開いていく考えだ。
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提供:株式会社オープンストリーム
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年3月31日