「Raspberry Pi 3」で早速チェック──「IoTハードウェア」を準備する:ラズパイ3&Toradex、Windows 10 IoT Coreで楽しみながら検証するIoT実践入門(1)(1/3 ページ)
ITエンジニアに向け、「ビジネスに貢献するIoT活用」の第一歩を踏み出す「今後のひらめき」を得てもらうための本連載。初回は、登場間もない「Raspberry Pi 3」を中心に、IoTハードウェアとWindows 10 IoT Coreを準備するまでを解説する。
はじめに
「IoT(Internet of Things)」が、ビジネスや社会にイノベーションを巻き起こすといわれている。このIoTをはじめ、「クラウド」「ビッグデータ」「モバイル」を軸にしたITシステムやサービスは、今やビジネスの生命線を握っているのは紛れもない事実だ。
人間が介在せずとも、モノ同士で互いに通信し合い、情報を蓄積し、自動化や自律化を実現するIoTの仕組みは、ビジネスにも、私たちの社会にも、これまでなかった変化をもたらす。そうした変化は、保守や管理などシステムの“お守り”が中心だったIT部門に対しても、「ITでビジネスに寄与する」意識や役割の変革を求めるものともいえるだろう。
しかし、ひと言にIoTと言っても範囲は広い。ITエンジニアとして、何がビジネスに結び付くのか、どれから手を付ければ良いのか分からないという人は多いだろう。ただ、範囲が広いだけに、さまざまな可能性があるともいえる。例えば、これまでできなかったこと、していなかったことを実践し、実現することも変革の一環である──と考えてもよいはずだ。
そこで本連載は、ITエンジニアに向け、「ビジネスに貢献するIoT活用」の第一歩を踏み出す「今後のひらめき」を得てもらうことを目的に展開する。数百円から1万円ほどで入手できるIoTボードコンピュータとIoT向けOS、そして、いつでも/どこでも/どれでも使えることを視野に入れた「ユニバーサルWindowsアプリ(UWP)」の活用をテーマに、プログラミングと業務アプリケーションの作成を想定したIoT活用の実践ノウハウをお届けしていく。
本連載で使う機材とソフトウェア環境
この連載では、ボードコンピュータの最新モデルである「Raspberry Pi 3」と「Toradex」にWindows 10 IoT Coreをインストールした「IoTハードウェア」の活用を主軸に、マイクロソフトの開発ツールである「Visual Studio 2015」(以下、VS2015)で作成したWindows 10デバイス向けの共通アプリケーション環境である「Universal Windows Platform(UWP)」を配置し、動作させていく。
さらにこの環境へ、プログラミングの参考として、WindowsとMac上で動作する統合型のゲーム開発環境である「Unity 5.3」のプロジェクトをUWPに書き出し、それをVS2015で読み込み、これらのIoTハードウェア上に配置して動作させる方法を解説する。
「Raspberry Pi 3」と「Windows 10 IoT Core」を準備する
「Raspberry Pi」は、英国のラズベリーパイ財団が開発、販売する小型のボードコンピュータシリーズだ。名刺ほどのサイズで、基板はむき出し。しかし、この中にPC本体と同等の、CPU、メモリ、ストレージや通信、入出力インタフェースの機能が一通りそろっている。今回のIoTシステムは、このボードコンピュータを核に構成して、実践していくことになる。
Raspberry Piは2016年3月現在、大きく4種類が存在する。シングルコアのプロセッサを中心としたSoC(System on a Chip)を搭載する初代の「Raspberry Pi」、クアッドコアのSoCを備えて性能を高めた「Raspberry Pi 2」、5ドル(約560円)で買えるローエンドモデル「Raspberry Pi Zero」、そしてRaspberry Pi 2より性能を50%向上させたという「Raspberry Pi 3」だ。
700MHz動作でシングルコアのSoCと、512MBのメモリを搭載していた初代Raspberry Piの最上位モデル「Raspberry Pi Model B+」に対し、より性能を高めたのがRaspberry Pi 2だ。「Raspberry Pi 2 Model B」では、プロセッサがクアッドコア/900MHz動作のCortex-A7に刷新され、メモリも1GBに増強された。ローエンドモデルのRaspberry Pi Zeroは、基板サイズが幅65×奥行き30×厚さ5ミリと、Raspberry Piシリーズでもっとも小さいサイズを実現した(2016年3月時点)他、新しいモデルなだけに、性能も初代のRaspberry Piと遜色ないものとなっている。価格のインパクトと相まって発売当初から大変な人気があり、2016年3月現在も入手しにくい状況だ。
本連載では、登場間もない最新モデルである「Raspberry Pi 3 Model B」を使って解説していくことにする。Raspberry Pi 3 Model Bは、2012年2月29日に発売された初代Raspberry Piから、ちょうど4年目に登場した新モデルだ。Raspberry Pi 2に対し、性能の向上とともに、 Model Bには無線LANやBluetooth LEといった無線通信機能も内蔵された。
Raspberry Pi 3 Model Bの主な仕様を順に確認しよう。
- プロセッサ:64bit対応になった。クアッドコア/1.2GHz動作のARM Cortex A53を搭載し、Raspberry Pi 2 Model Bより高性能になった
- メモリ:1GB/450MHz動作のDDR2 SDRAM(本評価機では、ELPIDA「B8132B4PB-8D-F」が実装)
- 無線LAN:最大150Mbps/2.4GHz帯 IEEE802.11n準拠の無線LAN機能を内蔵した
- Bluetooth:Bluetooth Low Energy(LE)を含む、最大1Mbps/Bluetooth 4.1準拠の機能を内蔵した
- ボードサイズ:幅85×56(奥行き)×17(厚さ)ミリ
- 電源:前モデルに対し、推奨される電力が5ボルト/2.5Aに増大した
- OSインストーラ:NOOBSのVer1.7.0以降。2016年2月29日にVer.1.8.0が公開された。このバージョンからRaspberrry Pi 3がフルサポートされている。Raspberry Pi 3をサポートしたWindows 10 IoT Core Insider Previewも公開されている(後述)
- サポートされるOS:Raspbian(Debianベース)、Ubuntu MATE、Snappy Ubuntu Core、OpenELEC、OSMC、Arch Linux、PiNet、RISC OS、Windows 10 IoT Core
筆者が入手した個体の技術基準適合証明等のマーク(技適マーク)は、取扱説明書に記載されていた。
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