「フラッシュファースト」時代におけるストレージ選択、“自社に向いている”のは一体どれか:フラッシュストレージ徹底解剖 セミナーレポート(2/3 ページ)
一口に「フラッシュストレージ」といっても、特徴はさまざまだ。オールフラッシュの効果はある程度分かっているつもりでも、どの製品が自社に向いているのかは分かりにくいかもしれない。@ITが主催したセミナーでは、楽天のフラッシュストレージ活用の裏側が明かされるとともに、各ベンダーそれぞれの特徴と、選定と選択、活用のポイントが紹介された。
アレイの情報に基づいて「故障の予兆を事前に告知」するNimble製品
これまで主にハイブリッドストレージ製品を提供してきたが、SSD価格の低下を踏まえ、2016年にオールフラッシュ製品をリリースしたのがNimble Storageだ。
ニンブルストレージジャパン セールスエンジニア ディレクターの川端真氏は、同社製品のポイントは、「データを圧縮してかたまりとして管理できる独自ファイルシステム“CASL”と、クラウドベースの管理システム“InfoSight”にある」と述べる。
特にInfoSightは「導入されたアレイの情報をクラウド上に集めてビッグデータとして解析を加え、故障の予兆などを事前に連絡することで、なるべくトラブルにならないように運用できる」のが強みだ。InfoSightのデータ解析から、実際にどのくらいSSDが必要かについての統計データも持っているため、そのとき、その状況に応じて最適なハイブリッドストレージ構成を提案できるとした。
川端氏はまた、会場に実機を持ち込み、ボリューム作成やファイルコピーといった操作のデモンストレーションも実施し、会場を沸かせた。フラッシュとHDDを併せて構成するハイブリッドストレージにおいても、「最近のハイブリッドストレージは、オールフラッシュと同じくらい簡単に操作できる」と説明し、コストパフォーマンスの面で、ハイブリッドストレージもオールフラッシュと比べても遜色ない実力があると述べた。
SSD単体だけでなく、「システム全体の信頼性向上」に取り組むPure Storage製品
オールフラッシュストレージ導入の理由として、アプリケーションの高速化を第一に挙げる企業は多い。ただし、「高速化の課題は解決できたとしても、信頼性の確保、パフォーマンスや重複排除の効果を最大限発揮するために必要なパーティションアラインメントの確保、ストレージリプレース時のデータ移行といった、新たな課題も浮かんでくる。導入においてはこれらも考慮する必要がある」と注意を促したのが、Pure Storage製品の扱いに長ける東京エレクトロンデバイス CN技術本部 ストレージソリューション・エンジニアの町野高哲氏だ。
町野氏は、Pure Storageの利点を「こうした課題を先取りして解決している製品である」と説明する。例えば同社の製品は、SSDそのものの信頼性向上に加え、ストレージコントローラーの構成を工夫することによって、ストレージシステム全体としての信頼性を高めているという。
また、チューニングやボリュームサイズなどを意識することなく、パーティションアラインメントも常に取れる状態になるという。さらに、3年おきに最新のコントローラーを提供することによって、コストを平準化しつつ、システム移行時のデータ移動や買い直しをするといった課題も解決できるのが大きな強みだと説明する。
「オールフラッシュストレージは、データベースなどの構造化データだけでなく、非構造化データにも広がっていく」(町野氏)。Pure Storageは、そのための仕組みも既に整えているという。
「ストレージに関して悩まずに済むようになる」をもたらすティントリ製品
ティントリのパートでは、同社の製品を採用したインターネット広告代理店 アドウェイズのサービスデベロップメントグループ インフラストラクチャーDiv チーフシステムエンジニアの伊藤正之氏が登壇し、採用の経緯を紹介した。
アドウェイズは、もともとストレージ専門のエンジニアがいたわけではなく、それでもますます高まるビジネス要求への対応に迫られる葛藤から、一種の「ストレージアレルギー」もあったという。
しかし、「VMware」との親和性が高く、LUNパーティショニングといった細かな設定を考える必要がなかったティントリ製品と出会い、そうした悩みが解消されたと伊藤氏は述べる。QoS(Quality of Service:ネットワーク上で提供するサービス品質を一定以上の水準で確保する機能)によるパフォーマンスの確保や、コスト効果に優れた10GBASE-Tをサポートすることも大きなポイントになった。
2016年6月現在、アドウェイズでは、2台のティントリ製品を活用し、約25台の物理サーバで約700台の仮想マシンを稼働させている。「仮想マシンの移行作業は、私1人で、およそ3日で終わった。その後の管理も、大きな障害はなく、チューニングも不要。ラックスペースを節約できたことによるランニングコストの削減効果も大きい。何よりも、もうストレージに関して悩まなくて済むようになった安心感を得られたことが一番大きい」と評価している。
その後に登壇したティントリジャパン SEマネージャーの八木下洋平氏は、ティントリ製品の強みを、ストレージ構成を工夫し、最大の特徴であるQoSやスケールアウト構成を活用できるとうたう。
「数年後にやって来るかもしれない“ストレージのボトルネック”を解消できる。こういった安心感を提供できることがティントリの強みだ」(八木下氏)
「次世代型アプリには、次世代型ストレージを」、豊富な製品で適材適所に対応できるEMC製品
規模や需要に応じて多種多様なストレージ製品をラインアップしているEMCも、オールフラッシュ市場に強くコミットするストレージベンダーの1社だ。
フラッシュはまだ高価と思われがちだが、同社の試算によると、「HDDとフラッシュの単価は、2015年が転換点。今後5年のトータルコストを算出すると、既にフラッシュのコストメリットが上回っている」という。
「もうフラッシュを使うのが当たり前の時代になる。あと2、3年ならばまだしも、それ以上のスパンで考えれば、もうオールフラッシュという選択肢になると推奨している」と、EMCジャパン システムズエンジニアリング本部 エバンジェリストの山原陽一氏は述べた。
その背景には、アプリケーションの変化がある。“第二のプラットフォーム”などと呼ばれる、既存システムのコスト効率を高めるための「従来型IT」で使われてきたアプリケーションから、“第三のプラットフォーム”と呼ばれる、モバイルやクラウドを前提に、企業競争力の向上を追求するための「次世代型アプリケーション/次世代IT」への変革が求められている。これに伴い、企業に迫られるストレージのワークロードも変化し、これまでとは桁違いの容量、低遅延性が求められる。「だからこそ、必然的にオールフラッシュストレージが選択されることになる」と山原氏は説明する。
ただし、「1つのアーキテクチャで、全てのワークロードをカバーできるかというとそうではない。既存のアプリ、これからのアプリ、それぞれに合わせて複数のアーキテクチャを用意し、適材適所で選択していく必要がある」とも山原氏は提言する。EMCでは、ソフトウェアデファインドソリューションも含めて、顧客に適切な提案とそれを的確にカバーできる商品力で支えていきたいと本パートを締めた。
まずフラッシュありきが前提、「ストレージがビジネスを変える」とうたうHPE製品
日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE) ストレージ事業統括本部 エバンジェリストの高野勝氏は、「これまでVDI(Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップ仮想化)やデータベースシーンに限られていたオールフラッシュストレージの適用領域が、2015年あたりから急速に広がっている」と昨今の背景を説明し、いくつかの導入事例を挙げた。
興味深いのは、日用品大手 ライオンの導入例だ。ライオンでは、これまで1週間に1回、約19時間もかかっていたバッチ処理が、基幹システムの仮想化とフラッシュストレージへの刷新によって、約3分の1となる8時間未満まで短縮できたという。「システムの制約で週に1回しか取れなかったデータを日次で取れるようになれば、前日の売り上げをベースに次の日の予定・予測を立てられる。業務部門への情報提供スピードを劇的に速くできる」(高野氏)。つまり、ストレージを変えることで、ビジネスの躍進を図れる可能性があるというわけだ。
高野氏はまた、これまでSSDは「高額なので、必要なところにだけ、仕方なく入れる」という使い方だったが、昨今の性能・機能の向上と価格がこなれてきたことを背景に、「まずフラッシュありきになってきている」と、企業の考え方も変わりつつある状況を説明する。
そして、フラッシュ自体のさらなる高速化によって、「今後、ストレージのボトルネックは、ディスクから、コントローラーに移るだろう」とも予測し、HPEのコントローラーは各種処理をASICによって高速化できると説明した。
その一方で、「SSDは確かに速く、安くなってはいる。しかし、バックアップやアーカイブ、ディザスタリカバリー(DR)のニーズには、まだ高額すぎて向いていない」とも述べる。つまり、「用途に応じて、二アラインストレージやSASを組み合わせることも検討してほしい。また、どれが向くかについても、ぜひベンダーや販売パートナーに問い合わせてみてほしい」と締めくくった。
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