クラスタ環境でSQL Serverが起動しない(起動トラブル):SQL Serverトラブルシューティング(10)
本連載は、「Microsoft SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は「クラスタ環境でSQL Serverサービスの起動までに達せず、エラー1069が表示される場合の対処方法」を解説します。
本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブルについて、「なぜ起こったか」の理由とともに具体的な対処方法を紹介していきます。
トラブル 05(カテゴリー:起動):クラスタ環境でSQL Serverサービスの起動までに達せず、エラー1069が表示される
「Windows Server 2012」のクラスタ環境上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境を想定して解説します。
トラブルの原因を探る
Windowsのシステムログでは、エラー1069の「クラスター化された役割‘SQL Server (MSSQLSERVER)’の種類’IP Address’のクラスターリソース’SQL IP Address 1 (SQLNetworkName)’が失敗しました」というメッセージを確認でき、その直前にある「エラー1049」でも、「重複するIPアドレス’192.168.100.83’がネットワーク上で検出されたため、クラスターIPアドレスリソース’SQL IP Address 1 (SQLNetworkName)’をオンラインにできません。すべてのIPアドレスが一意であることを確認してください」というエラーメッセージが記録されていました(図5-3)。
このエラーは、クラスタのIPアドレスリソースで使っているIPアドレスがユニーク(一意)でないために発生します。今回の例では、「192.168.100.83」というIPアドレスが、クラスタ環境のアクティブノードのIPアドレスと重複していたのが原因でした。
パブリッククラウド上で構築した環境では、場合によって自身のIPアドレスと同一のIPアドレスがDHCPで割り当てられてしまうことがあります(*1)。IPアドレスが重複していると、クラスタIPアドレスのリソースをオンラインにできません。そのために、依存関係が結ばれているSQL Serverのリソースも起動できなかったということになります。
解決方法
原因からひも解くと、解決には「SQL Serverと依存関係を結んでいるリソース」をオンラインにできればよいことが分かります。
実作業は、フェールオーバー クラスター マネージャーから該当するリソースのプロパティを開き、「静的」にユニークなIPアドレスを指定します(*2)。重複がなくなれば、クラスタIPアドレスリソースがオンラインになります。この作業を行うことで、依存関係を結んでいるSQL Serverも起動できるようになります(図5-4)。
*2:(参考)フェールオーバー クラスターの IP アドレス変更手順
「SQL Serverサービスの起動までに到達しない」場合のチェック手順
- Windowsイベントビューアー(「Windows ログ」→「システム」)を確認して、エラーの内容や原因を調べる
- SQL Serverと依存関係が結ばれているリソースを、全てオンラインにする
- (本例の場合は)フェールオーバー クラスター マネージャーより、一意のIPアドレスを割り当てる
筆者紹介
内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)
ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP Data Platform(2011〜 )。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を行っていた。2016年4月よりIoTビジネス開発の担当となり、新しい仕事に奮闘中。ストレッチをして柔らかい身体を手に入れるのが当面の目標。
椎名 武史(しいな たけし)
ユニアデックス株式会社所属。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。
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