False! True!! ヨヨイのヨイ! 開発合宿でプレイ☆ボール:激務な職場を辞めたいが、美女が邪魔して辞められない(13)
ぼく、エンジニアの梧籐 剛。上司のリナさん、可愛過ぎる後輩椎子ちゃんと、部下のアンドロイドたちを引き連れて、野球の交流試合にやってきました。でも、あんまりにもアンドロイドたちが独創的過ぎて、ぼく、また職場を辞めたくなってきちゃったよ……。
ここは都内のとあるベンチャー企業。27歳のエンジニア梧籐剛(ごとう ごう)は、忙し過ぎる業務に嫌気がさし、思い切って上司に辞意を伝えた。しかし、それは受け入れられず、代わりにアンドロイド開発チーム(物理)のマネジャーに任命され、あいかわらず山ほどの業務を全力でこなしていた。アンドロイド3体を率いて日々奮闘しつつ、果たして転職は……?
True! いまのはぜったいTrue!
いや、Falseです!
くやしーっ、せっかく1塁まで行けたのに!
この「1塁」っていうのは、一般的な野球でいうところの「2塁」ですよね。
0塁、1塁、2塁って数えるからね。……この、野球にプログラミングのお約束を中途半端に持ち込むの、やっぱりやめた方が良かったんじゃないかな? 「アウト/セーフ」を「False/True」と呼ぶとか、「ファウル」を「例外」と呼ぶとか……。
いいのよ、お祭りなんだから! 同業他社チームとの交流試合だもんね。
(スカイプ越しに)いや、真剣勝負だ! 大きな声では言えないが、この試合の勝敗と、某社の案件を当社と相手の会社のどちらが受注できるかが、偶然かもしれないが、シンクロする蓋然(がいぜん)性が高いような気がするのだ! 気がするだけだが!
あ、社長。お疲れさまです……というか、それ、法的に大丈夫なんですか??
おつありでーす! 輝く汗がバッファオーバーフローでーす!
イエス、サー。バッターボックスが半ドアです。
Null
ちょっとまって、3体まとめてバッターボックスに入っちゃったよ?
3体で1つの選手みたいな雰囲気を出してますけど、そういうのもルール的にいいんでしたっけ、せんぱい? 「引数として配列も渡せる」みたいな感じなのかな?
えーと、そういうローカルルールあったかな……。
ストライーク!
あっ、ちょっ、空振りなんだから走るなー!
しかも、1体ずつに分かれて3つの塁ぜんぶに向かってる! みんな、戻って戻ってー! そういうメソッドじゃないから!
(再びスカイプ越しに)そうそう。すまないが、業務の方も合間合間に進めておいてくれ。知っての通り、納期が繰り上がったので、急がなければ。
私は出張なので参加できないのが残念だ! うーん、残念!
は、はい……。
グラウンドにノートPC持ち込んで試合してるのって、世界初かもですね。ボール見てる時間よりもPCの画面みてる時間の方が長いから、エラー続出だし。
あっちのチームの会社も、おんなじ状況みたいじゃない? ピッチャーなんか、1球投げるたびに脇のノートPCで何か入力してるよ。
これは、交流試合じゃなくて、ある種の開発合宿なのでは……?
さあ攻守交代だ! よーし、すっごい魔球投げちゃうぞー!
あっ、リナさんの腕が、8本に増えた!!
……アンドロイドが後ろに隠れてるよね?
うりゃーっ!!
野球のボールだけじゃなくて、テニスボールとミカンとぐっすり眠ってるハリネズミが一緒に投げられて、どれを打ったらいいか分からない!
シンタックスエラーッ!!
やっぱりダメか。エヘヘ。
うーん、当然予想できたことだけど、野球のプレイにも業務にも集中できない……。
ちょっとターイム!
(ピッチャーマウンドに集合)
ねえねえ、むこうの選手がさ、塁に出ると、かならず0塁手のしーちゃんにひそひそ話してるよね。あれ、何なの?
あのですね……ナンパされてます。
ナンパ!!!
「うちの会社に転職しませんか」っていうオファーなんですけど、まあ、実質ナンパですよね。ケータイ番号とかSNSのIDとか聞き出そうとしてますし。
あ、でも、念のため言っておくと、みなさん礼儀正しいですよ。給与とか休暇とか、率直に教えてくれて。あんなに熱心に誘われると、まんざらでもないかなー(ちらっちらっ)。
ちょっと、梧籐くん! 頑張らないとしーちゃんをあっちの会社に取られちゃうよ!
野球をやりつつ、仕事しつつ、ナンパだかスカウトだかもするなんて、何だかすごく優秀な人たちのような……。
あっ、また自信をなくしてきた! もう、そこで奮起してくれなくちゃダメなんですってば、せんぱい!
(かきーん!!)
アンドロイドBーっ! 走って走って!!
イエス、サー。走行中は座席から立たないようお願いいたします。(打球を取りそこねる)
(かきーん!!)
アンドロイドC! そっち行ったよー!!
Null(動かない)
あああ、アンドロイドの方が気を取られなくてしっかり守備をやってくれるかと思ったけど、ぜんっぜん役に立たない……。
ちょっとそんな気はしたのよね。うーん、さすがにアタシも連投できびしくなってきたわ、ごめんねー。
これが、いわゆる「采配ミス」か……。
野球の采配には組織マネジメントの神髄があるというし、やっぱり、ぼくにはマネジメント全般が向いてないのかも……。これはもう、アレ、つまり、転職を……。
あーもうっ! せんぱい、しっかりしてください!!
わたしも以前の職場で、自分が適材じゃないのかなと思って悩んだことがあります。会社が大きな配置換えをやって、社長室で飼ってるトドの世話をすることになったんですよ。「TODOの管理」って聞かされてて、マネジメント的な仕事かと思ってたら、重さ1トンの海棲哺乳類だったんです。ひどいですよね。毎日のエサの準備がすっごく大変でした! でも、わたしもまだよく分かってなかったから、魚を上手に釣れない自分を責めたりしちゃったんです。
釣ってたの……?
でも、よく考えてみたら、動物園の飼育員と同じレベルの仕事をいきなりやれといわれて、できるわけないんですよね。別にわたしに問題があったわけじゃないんだって、振り返って思います。
それとおんなじで、そもそも、野球の監督をうまくやれないからって、クヨクヨすることないんですよ。それって、本来、まったくべつの訓練と素養を必要とする仕事なんですから。
ちなみに、トドは社長に愛情表現し過ぎて圧迫死寸前までいっちゃって「こりゃ、あかん」って動物園に引き取られたから、わたしも元の部署に戻れました。
なるほど(トドの行く末をやや案じる顔で)。
そうだよね、野球とエンジニアリングは通じるものがあるっていうのも、面白いけど、真に受け過ぎちゃうと大変よね。
せんぱい、ちょっとは気が楽になりましたか……ん? どうしたんですか、敵チームをちらちら見て。
さっきからどうも気になっていることが……。
おっ、サインを盗み見るみたいに、双眼鏡で敵チームのPC画面をのぞいて……?
……分かりました。衝撃的な事実を発表します。
敵のチームも、当社と同じ案件を手掛けています!!
なんですってーー!??
見たところ、当社とあちらの会社、どっちも同じ某社の開発業務の下請けを今やってるらしいんですよ。
となると、うーん、うーん……よし!
アンドロイドたち、ここの作業を優先してやってくれ!
(かたかた かたかた ッターン)
仕事はわりと素直にやるのね。
……何だか、敵のチームがざわざわしはじめましたよ。
あ、完全にPCに気を取られてる!
敵チームにテスト要件が発生する開発項目がこっちにあったんですよ。今それを投げたから、しばらく向こうの動きが止まるはずです。
せんぱい、双眼鏡でのぞいただけでよくそこまで分かりましたね……。やっぱりすごい! じゃあ、今回はこのタイミングで発表しますね。
ひとーつ! 自分が何に向いているのか分からなくなったら、「キャリアの棚卸し」をすべし。
せんぱい、キャリアの棚卸しってご存じですか? これまで携わってきた全ての仕事内容ややってきたこと、できることを書き出して、整理することです。転職を考えたりキャリアの次のステップを模索したりしているときは、「うまくいっていないこと」や「できないこと」だけではなく、「自分には何ができるのか」「強みは何か」を把握することが大切なんです。
自分のセールスポイントを生かせるキャリアの方向性が分かったら、そのキャリアを築ける会社に転職すればいいんです。
敵チームの弱みを見つけて、的確な対処、指示ができるのは、せんぱいの強みじゃないですか? ここ、もっと自信を持っていいんですよ!
小布施さん……(感涙)
よーし、相手の守備が上の空になってるうちにどんどん点を取り返していくぞー!
(かきーん!) (かきーん!) (かきーん!)
やった、アンドロイドで満塁! 小布施さん、ここで1発頼んだよ!
責任重大だけど、やりまーす! よーしこいっ!
打ったあーーー!!
やったあーーっ!!
……ん?
Null
ちょっ……わたしがかっとばしたの、アンドロイドCの頭じゃないですか!!
ヌルポインタ例外ーッ!
(そして、社長室では……)
試合には負けたが、とてもすがすがしい気持ちだ……。やはりスポーツはいい。今度は温泉卓球大会を企画してみようかな。そして、結局納期がやばいままのこの業務はどうしようかな。
(続く)
イラスト:鳴海マイカ/ad-manga.com
激務な職場を辞めたいが、美女が邪魔して辞められない バックナンバー
IT企業で働く平凡なエンジニア梧籐 剛、27歳。美人上司と可愛い過ぎる後輩に挟まれて日々開発にいそしむ彼には、誰にも言えない悩みがあった……。
第2回 壁ドンされたって、ドキドキなんかしない……んだから……ね……
ここは都内のとあるIT企業。退職を希望する27歳のエンジニア梧籐 剛は、上司に辞意を伝えたのだが、なぜか今日も山ほどの業務(アンドロイド開発、ただし人型の)を全力でこなしていた……。
第3回 せんぱいにだけ伝えちゃう! わたしの素直な気・持・ち
27歳のエンジニア梧籐 剛は、忙し過ぎる業務に嫌気がさし、思い切って上司に辞意を伝えたが、あいかわらず山ほどの業務(アンドロイド開発、ただし人型の)を全力でこなしていた。早く辞めたいと焦りはつのるが、本人の心にも一抹の迷いが……?
第4回 ハートに火を付けて! 燃えさかる案件の中心で辞意を叫ぶ
思い切って上司に辞意を伝えた27歳のエンジニア梧籐 剛。しかし状況は変わらず、今日も山ほどの業務(アンドロイド開発、ただし人型の)を全力でこなしていた。早く会社を辞めたいと焦りはつのるが、後輩の椎子に「まずはキャリア設計が必要だ」と言われ……。
第5回 「false」を返すと「null」で上書きする、そんな上司と働いています
一日も早く辞めたい27歳のエンジニア梧籐 剛。「ぼくのやりたいことはこれだったんだ!」と気付いたものの、後輩の椎子に、まだまだキャリア設計が甘いと指摘され……。
第6回 右手に椎子、左手にリナ。僕、ほんとはしあわせなんじゃ……
ついに転職先を探し始めた27歳のエンジニア梧籐 剛。「僕、ようやく進むべき方向がつかめてきました」ところが社長にバレて……?
相変わらず辞められずに激務をこなす27歳のエンジニア梧籐 剛だったが、今日のアンドロイドのバグは……草?不可避wwwww?
可愛過ぎる後輩 椎子のサポートで、27歳のエンジニア梧籐 剛の転職に関する知識はだいぶ増えたのだが、肝心の転職活動がなかなか進まず、焦りはつのるばかり……。
業務(アンドロイド開発、ただし人型の)が小康状態に入り穏やかな日々を送っていた梧籐たちに社長から告げられたのは、まだ仕様があやふやなところが山ほどあるアンドロイドの緊急リリース命令だった。
第10回 アンドロイド(人型の)開発から、アンドロイド(人型の)による開発へ!
梧籐はあいかわらず山ほどの業務(アンドロイド開発、ただし人型の)を全力でこなしていた。しかし、ここへきて案件に異変が……?
山ほどの業務に追われ続ける梧籐。しかし、新しく部下(ただし人型アンドロイド)ができて順風満帆!?
第12回 そのしぐさが心変わりのサインだなんて、ボク知らなかったよ……
アンドロイド駆動開発プロジェクトのマネジャーである梧藤、流行に乗り遅れまいと夏風邪をひいて会社を休んでいたら、何やら異変が……。
ドS美人面接官 VS モテたいエンジニア 転職十番勝負! シリーズ
野望を胸に秘めて転職を志す、とあるエンジニア(28歳)がいる。今日は一番の本命企業、X社の面接だ。準備万端、張り切って面接会場に向かうが……。
本命のX社の面接に落ちた彼が今回向かったのは、第2志望のY社。今度こそ、面接を突破することができるのか……。
2回連続で面接に落ちた彼だが、わずかな望みを失わず、今日も雨の中を面接会場に向かう。しかしそんな彼を、またしても試練が待ち受けていた……。
季節は夏へと移り変わるも、彼の転職活動はまだまだ続く。たとえ最高気温が35度を超えても、スーツで面接会場へと向かうのだ。そんな彼を今回襲うのは、果たしてどのような試練なのか……。
転職活動を始めて10カ月。遅々として進まぬ状況にちょっとセンチメンタルになりながら、枯れ葉舞い散る街中を面接会場に向かう彼であった。
果敢なトライにもかかわらず面接に落ち続け、気が付けばもう12月。クリスマスを前ににぎわう街を横目に見つつ、今日も会場へやってきたが……。
面接に落ち続けたまま新しい年を迎え、焦りも募るばかり。そんな折、友人に誘われた婚活パーティにふと参加してみたのだが……。
世間はすっかりお花見のシーズン。いまだに転職先が決まらず、焦る気持ちを抱える一方、うららかな陽気につい心が緩んでしまうことも抑えられないのだった。この日も、青空の下で舞い散る花びらに見とれつつ、面接会場に向かったのだが……。
必死の転職活動にもかかわらず、いまだに採用通知を手にできない彼は、今日も梅雨空の下、どんよりと湿りがちな心を奮い立たせて面接会場へと足を運ぶのだった……。
何度も挑戦しては敗退し、面接もついに10回目。今回こそは! と意気込みつつ、気になるのはやっぱりあの人のこと……?
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