【 sed 】コマンド(基礎編その3)――行を追加する/挿入する:Linux基本コマンドTips(55)
本連載は、Linuxのコマンドについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回も、「sed」コマンド基礎編の第3弾です。
本連載では、Linuxの基本的なコマンドについて、基本的な書式からオプション、具体的な実行例までを分かりやすく紹介していきます。前回に続き、今回も「sed」コマンドの基礎編を解説します。
sedコマンドとは?
「sed」は「Stream EDitor」の略で、「sed スクリプトコマンド ファイル名」で、指定したファイルをコマンドに従って処理し、標準出力へ出力します。ファイル名を省略した場合は、標準入力からのデータを処理します。sedコマンドでは、パイプとリダイレクトを活用するのが一般的です。
sedコマンドの主なオプション
sedコマンドの主なオプションは次の通りです。
短いオプション | 長いオプション | 意味 |
---|---|---|
-r | --regexp-extended | スクリプトで拡張正規表現を使用する |
-e スクリプト | --expression=スクリプト | スクリプト(コマンド)を追加する |
-f スクリプトファイル | --file=スクリプトファイル | 実行するコマンドとしてスクリプトファイルの内容を追加する |
-i | --in-place | ファイルを直接編集する |
-i拡張子 | --in-place=拡張子 | ファイルを直接編集し、指定した拡張子でバックアップする(※「-i」と「拡張子」の間には空白を入れない) |
--follow-symlinks | -iで処理する際にシンボリックリンクをたどる | |
-n | --quiet,--silent | 出力コマンド以外の出力を行わない(デフォルトでは処理しなかった行はそのまま出力される) |
-l 文字数 | --line-length=文字数 | lコマンドの出力行を折り返す長さを指定する(※「-l」と「文字数」の間には空白を入れる) |
-s | --separate | 複数の入力ファイルを一続きのストリームとして扱わずに個別のファイルとして扱う |
-u | --unbuffered | 入力ファイルからデータをごく少量ずつ取り込み、頻繁に出力バッファを掃き出す |
-z | --null-data | NUL文字で行を分割する(通常は改行で分割) |
--posix | 全てのGNU拡張を無効にする |
sedのスクリプトコマンド
sedでは、「アドレス」と「コマンド」の組み合わせで処理を指定します。
アドレスには行番号や正規表現による指定が可能で、省略した場合は全ての行が処理の対象となります。
コマンド | 意味 |
---|---|
= | 現在の行番号を出力する |
a テキスト | テキストの追加。指定した位置の後ろに[テキスト]を挿入する(挿入するテキストに改行を含める場合は、改行の前にバックスラッシュを置く) |
i テキスト | テキストの挿入。指定した位置の後ろに[テキスト]を挿入する(挿入するテキストに改行を含める場合は、改行の前にバックスラッシュを置く) |
c テキスト | 選択した行を[テキスト]で置換する(挿入するテキストに改行を含める場合は、改行の前にバックスラッシュを置く) |
q | これ以上入力を処理せずに終了する(未出力分があれば、出力してから終了する) |
Q | これ以上入力も出力もせずに終了する |
d | 指定した行を削除する |
p | 処理した内容を出力する(「-n」オプション指定時は「p」コマンドがないと何も出力されなくなる) |
s/置換前/置換後/ | [置換前]で指定した文字列にマッチした部分を[置換後]に置き換える。複数マッチした場合は先頭のみ置換、全てを置換したい場合は、「s/置換前/置換後/g」のように「g」オプションを指定する |
y/元の文字列/対象文字列/ | [元の文字列]にあるものを、対象文字列の同じ位置にある文字に置換する(「tr」コマンドのように使用できる) |
# | コメント(スクリプト中、「#」以降がコメントとなる) |
行を追加する/挿入する
sedで新しい行を追加するには、「i」コマンドまたは「a」コマンドを使用します。「i」コマンドの場合は指定した行の前に挿入(insert)され、「a」コマンドの場合は指定した行の後ろに追加(append)されます。
追加する場所は、「行番号」または「/パターン/」で指定します。例えば、先頭に「LIST」という行を追加する場合は、“1行目の前に挿入”なので「1iLIST」と指定します。
最終行は「$」で指定します。例えば、最終行の後ろに「END」という行を追加する場合は、「$aEND」と指定します。ただし、コマンドラインでは「$aEND」が“変数「aEND」の参照”という意味になってしまうので、「\」を付けるかシングルクオート(')で囲みます。
※ダブルクオート("〜")の場合、「$」が展開されるので使用できません。
「1iLIST」と「$aEND」の両方を実行したい場合は、「-e」オプションで指定するか、スクリプトファイルを使います(実行例5参照)。
コマンド実行例
cat /etc/shells | sed 1iLIST
cat /etc/shells | sed \$aEND
cat /etc/shells | sed '$aEND'
cat /etc/shells | sed -e 1iLIST -e \$aEND
(先頭に「LIST」という行、末尾に「END」という行を追加する)(画面1)
間隔を指定してコマンドを実行する
行番号は「開始行,終了行」のような指定の他、「開始行~行数」で指定行数ごとにコマンドを実行させることができます。このような行指定は「s」コマンド(置き換えコマンド)など、他のコマンドでも使用できます(「p」コマンド、「d」コマンドでの指定例:本連載第54回を参照)。
コマンド実行例
cat /etc/shells | sed 1,2i----
(1行目と2行目の前に「----」を挿入する)(画面2の赤枠部分)
cat /etc/shells | sed 1~2i----
(1行目から、2行ごとに「----」を挿入する)(画面2の青枠部分)
複数行を追加する
「i」コマンドや「a」コマンドで複数の行を追加したい場合は、追加する行を「\n」で区切って指定します。
コマンド実行例
cat /etc/shells | sed "1iLIST\n----"
(行の先頭に「LIST」と「----」を追加する)(画面3)
行頭や行末に文字列を追加する
行の追加や挿入ではなく、行頭や行末に文字列を追加したい場合は、「s」コマンドを使います。行頭は「^」で表すことができるので、「s/^/--/」で行頭に「--」という文字列を追加できます。
また、空白を含みたい場合には、「引用符(")」を使用します。「s/^/"-- "/」のように置き換え後の文字列に指定することもできますが、「s」コマンド全体を囲む方が分かりやすいでしょう。
コマンド実行例
cat /etc/shells | sed "s/^/-- /"
(行頭に「-- 」を追加する)
行末は「$」で表します。また、「行頭と行末に入れたい」という場合は、正規表現を使い、「"s/.*/-- & --/"」のように指定します。
「.*」は任意の文字列で、この場合は行全体にマッチします。置換後の文字列の「&」は、マッチした行全体を取り出すという意味になります(「$」を使って改行コードを変換する例:本連載第53回参照)。
コマンド実行例
cat /etc/shells | sed "s/$/ --/"
cat /etc/shells | sed "s/\/.*/-- & --/"
(行頭に「-- 」、行末に「 --」を追加する)(画面5)
スクリプトファイルで処理を指定する(2)
スクリプトは別のファイルに書いておくこともできます。この場合、「$」や空白のためのエスケープは不要です。
スクリプトのファイルはテキストで、1コマンド1行で記述します。複数の行に分けて書きたい場合は行末に「\」記号を入れます。
ファイル名や拡張子は自由です。ここでは「line.sed」というファイルを使用しています。
コマンド実行例
cat /etc/shells | sed -f line.sed
(「line.sed」に書かれているスクリプトコマンドを実行する)(画面6)
筆者紹介
西村 めぐみ(にしむら めぐみ)
PC-9801N/PC-386MからのDOSユーザー。1992年より生産管理のパッケージソフトウェアの開発およびサポート業務を担当。のち退社し、専業ライターとして活動を開始。著書に『図解でわかるLinux』『らぶらぶLinuxシリーズ』『はじめてでもわかるSQLとデータ設計』『シェルの基本テクニック』など。2011年より、地方自治体の在宅就業支援事業にてPC基礎およびMicrosoft Office関連の教材作成およびeラーニング指導を担当。
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