Amazon Alexaの世界を、Echo Dotで実体験する:AWS re:Invent 2016
AI音声アシスタント機能「Amazon Alexa」を搭載したスマートスピーカーの「Amazon Echoシリーズ」は、500万個以上が販売された推定されている。ここにどのような世界が広がっているのか。エントリ機種の「Echo Dot」で試してみた。
米Amazon.com(以下、Amazon)が製品に組み込んで提供しているAI音声アシスタント機能「Amazon Alexa」は、現在のところ大きな成功を収めている。Alexa搭載製品は、すでに500万個以上が販売されたと推定されている。500万個が家庭に普及したのであれば、ホームIoTの観点からもインパクトは大きい。
一方、Amazonのクラウドサービス子会社である米Amazon Web Services(AWS)は、2016年11月末に開催した年次カンファレンス「AWS re:Invent 2016」で、Alexa関連サービスを発表。参加者にAlexaを搭載した円筒型スピーカーのエントリ機種「Amazon Echo Dot」を配布した。
そこで本記事では、Alexaを紹介するとともに、これを日本人が試すとどうなるか、米国で試してみた。
Alexaは大まかにいえば、アップルの「Siri」、マイクロソフトの「Cortana」、グーグルの「Google Assistant」だ。だが、「人間臭さ」はあまりなく(自身に関する質問にはあまり答えない)、実務に徹した音声インタラクション機能を提供する。
大きな特徴の1つは、搭載している機器にある。Alexaは、Amazonが2014年にプライムメンバー向けに発売した円筒型スピーカーの「Amazon Echo」に搭載されてデビューした。Amazon Echoは2015年6月に一般販売を開始、さらに「Amazon Tap」、Echo Dotの登場で、3機種構成になった。また、Alexaは2016年9月、セットトップボックスの「Amazon Fire TV」にも搭載された。Amazonのタブレット端末であるFire HDへの搭載も発表されているが、こちらはまだ実現していないようだ。
つまり、Apple、Microsoft、Googleの音声アシスタントは携帯電話、タブレット、PCで展開されているが、Alexaはこれまで家庭用機器のみで普及してきたことになる。AmazonはEchoシリーズの販売数量を明らかにしていないが、米Geekwireは、2016年9月までに510万個が販売されたとのConsumer Intelligence Research Partnersの推計を紹介している。これが本当だとしても、510万世帯に普及したことを意味するわけではない。Echo Dotは各部屋に設置することを想定した機能と価格の機種だからだ。だが、少なくとも510万の部屋を「征服」したことになる。
Alexaは現在、米国、英国、ドイツでのみサービスが提供されている。言語についても米語、英語、ドイツ語にのみ対応している。言葉の壁があり、地域的な限定もあって日本人としては現時点で使いにくいが、あえて試し、どのような世界が広がっているのかを確認してみることにする。では早速、Echo Dotを設定し、どんなことができるのかを紹介したい。
Amazon Echoの初期設定は簡単
初期設定は「Alexa App」から行う。iOSおよびAndroidのアプリがあるが、いずれも日本で利用している端末にはインストールできなかったので、今回はWebブラウザ版(http://alexa.amazon.com)を利用した。
Amazon Echoシリーズを使うためには、米Amazon.comのアカウントが必要だ。Webブラウザ版のAlexa Appを起動し、Amazonアカウントでログインする。一方、Echo Dotに電源ケーブルを挿せば電源が入る。するとPCのWi-FiネットワークにEcho Dotのネットワークが表示されるため、これを選択してEcho Dotと接続し、Echo DotがつながるべきWi-FiネットワークのSSIDおよびパスフレーズを、Alexa Appから伝える。これで基本的な設定は終了する。あとはAlexa Appで、米国、英国、ドイツのいずれかの郵便番号を設定する。今回はラスベガスのホテルの郵便番号を設定した。Alexaは、これを時間帯の認識や天気予報に使う。
Alexaにより実現される機能は、Amazon Echoシリーズでほぼ共通であるため、以下の説明では「Echo Dot」と言わずに「Amazon Echo」と表現する。
タイマー、アラーム、ショッピングリスト、TO DOリスト、カレンダー連携
Amazon Echoでは、「Alexa」と呼び掛けた後に命令や質問を伝えることで、機能を呼び出す。デフォルトで使える機能と、「Alexa Skills」と呼ばれるサードパーティーが開発したアプリ(サービス)によって使えるようになる機能がある。
デフォルト機能でもっとも基本的なものとしては、タイマーやアラーム、ショッピングリスト、TO DOリスト、カレンダーがある。カレンダーでは、Googleアカウントを登録すれば、質問に応じて予定を読み上げたり、新しい予定を入力したりできる。
さまざまな質問を投げかけられる
これもオリジナリティーがあまり高いとは言えないが、Amazon Echoに対し、言葉の意味、天気予報、近くのレストランなどを問い合わせることができる。
Alexa, what is “cloud”?
Alexa, who is the president of the United States?
Alexa, what will the weather this weekend in Tokyo?
Alexa, will it snow today in Tokyo?
Alexa, tell me the best Chinese restaurants in San Francisco.
Siriなどと同様、Alexaにさまざまな変わった質問を投げかけてみた人がいて、例えばRedditにはこうした質問がリスト化されている。
試しに「Alexa, sing a song.」と言ってみたところ、「Who? Me? I couldn’t… I… Hit it!」(誰? 私が? できない… ええい、演奏して!)と言いながら、カントリー調でAlexaの日常を表現した歌を歌ってくれた。
音楽、書籍
AmazonにとってのAmazon Echoシリーズの大きな役割は、Amazonのデジタルコンテンツの消費および購入をしやすくすることにある。
Amazon Echoでは、Amazon MusicあるいはSpotify Premiumをデフォルトの音楽サービスとして設定できる。Amazon Musicでは、ユーザーのライブラリに登録された音楽から、ユーザーが指定した曲を演奏する。また、Amazon Echoのみで再生するAmazon Music Unlimitedのプランを月3.99ドルで契約できる(米国Amazon Primeユーザー用プランは月7.99ドル)。Amazon Music UnlimitedはPrime Musicに比べて曲数が多く、新しい曲も含まれている。これで聞きたい曲を、Amazon Echoに対し、曲名、アーティスト、ジャンルなどでかなり自由に指定して再生できる。
インターネット放送局を集めたサービスであるTuneInなどにも対応していて、「Alexa, play <放送局名> on TuneIn.」といえば再生する。放送局名は発音しにくいものがあるが、Alexa Appでリスト表示し、選択することもできる。放送局名を指定せず「Alexa, play TuneIn.」と言えば、最後に再生した放送局を再生する。
再生中の曲名やアーティストを確認することも可能。さらにこの曲をAmazon Echoで購入できる。
Amazon Echoでは、Audibleのオーディオブックを再生することもできる。さらに電子書籍サービスのKindle Booksについては、ライブラリ内の書籍を無償で読み上げてくれる。
Amazon.comやピザ、ライドシェアなどのオーダー
Amazon Echoは、日本で展開が始まった「Amazon Dash Button」と同様、Amazon.comでの買い物を容易にする役割も持っている。また、Domino’s Pizza、UberおよびLyftのライドシェアなどでは、それぞれのAlexa Skillを通じてオーダーができる。
スマートホーム
Amazon Echoから制御できるサードパーティーのスマートホームソリューションとしては、フィリップスのHueをはじめとしたスマートライト、TP-LINKなどのスマートコンセントから、テレビのユニバーサルリモコン、室内温度調節のサーモスタット、ガレージドアなどに至るまで、このページに多数の製品がリストされている。
これらは多くの場合、メーカーが提供するAlexa Skillを有効化することで、制御できるようになる。サムスンのSmartThingsは、他の複数メーカーのスマートホームデバイスにも対応している。
Alexa, turn the lights off
Alexa, turn on the TV
Alexa Skillは4000以上に拡大
サードパーティーによる、Alexaの音声インタフェースを活用したアプリ(サービス)であるAlexa Skillは、Amazon.comのAlexa Skillsガイドに掲載されているもので4300以上に達している。Amazon Echoユーザーは、これらから自由に選択して使える。明示的な有効化作業が必要なSkillがある一方、適切なトリガーワードさえ使えば即座に利用できるSkillもある。
Alexa Skillsでもっとも多いのは情報提供系だ。ニュースがいい例で、CNN、USA Todayをはじめとして、大小さまざまなニュース媒体が、音声によるニュースサマリーを提供している。それとともに多い印象を受けるのはトリビア系。猫、脳、子どもの病気、特定の国など、さまざまなテーマで、ランダムに豆知識を伝えるアプリが存在する。料理やカクテルのレシピを教えるものも比較的多い。
一方、ショッピングなど、取引に関わるようなものはまだ少数だ。多少面白いのは「Kit」というサービス。製品ジャンルを指定すると、専門家による製品のレコメンデーションを聞くことができる。金融のCapitalOneでは、個人のアカウントサマリーを聞けるサービスを提供している。
Alexa Skillsの数は増えているものの、ビジネス直結型のものはまだあまり多くない。これは、Amazon Skill開発ツールが、シンプルなアプリケーションの陣俗な作成を重視した作りになっていることが影響しているのかもしれない。ただ、2016年になって開発者への働き掛けが始まったことを考えると、Alexa Skillの世界は始まったばかりであり、すでに4300以上のアプリというのは驚くべき成果だといえる。
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