「神エクセル」が役所ではびこる理由:ものになるモノ、ならないモノ(73)(1/2 ページ)
「神エクセル」問題はなぜなくならないのか? 内閣官房・CIO補佐官に疑問をぶつけた。
河野太郎衆議院議員が行革推進本部で文科省に対し「神エクセル」の全廃を指示したそうだ。河野議員本人がそれをツイートしたことで「神エクセル」問題が再燃した。「再燃」というのは、以前、2013年に三重大学の奥村晴彦氏が問題提起したことで、Twitterなどで盛り上がった過去があるからだ。
参考リンク:「『ネ申 Excel』問題」
「神エクセル」とは、紙へ印刷することを前提に、セルの結合や罫線(けいせん)機能などをフルに使い、見栄えを優先して作ったExcelファイルのこと。「紙」が転じて「神」と表記するようになったネットスラングである。「ネ申エクセル」などと表現される場合もある。
「神エクセル」は、国会議員が役所に全廃を指示するくらいの大問題なのだろうか。恐らくデジタル系の職業に就いている人の多い@ITの読者であれば、間髪入れずに「大問題だ!」と叫ぶことであろう。例えば、次のようなシチュエーションを想像してみよう。
Excelファイルを渡され、そこに入力された情報を他のプログラムから読み出して再利用しようとしたとき、図のように複数のセルが見てくれだけを優先して結合されていたり、異なる2つの表が1つのシート内に同居していたりするケースだ。多くの人は途端にやる気をなくすであろう。筆者も過去に一度やらかして、アプリ開発で組んだプログラマに注意されたことがある。逆に、被害者になったこともある。これが神エクセル問題だ。
紙に出力することを主たる目的としているため、データの再利用が考慮されておらず、効率化の面で「大問題」ということだ。上記の申請書などは「Excel方眼紙」などと揶揄(やゆ)されている直球ど真ん中の神エクセルファイルだけに、物は試しと適当な文字や数字を入力してみたが、入力作業自体非常にストレスが掛かるし、CSVに出力した結果については言うまでもない。
中央省庁に限らず他の行政機関や一般企業においてもこの「神エクセル」が幅を利かせているようで、Twitterで「神エクセル」と検索すると、それに悩まされている人のツイートが散見される。と同時に神エクセルの全廃を支持する人がたくさんいる。えらく嫌われたものだ。ただ、そこで別の疑問が湧いてくる。「なくせなくせ!」と言うのは簡単だが、対案はあるのだろうか。
役所、公的組織、企業などで扱う帳票や書類は、それ相応の要件を満たしている必要がある。現状の運用スキームや業務内容において、その様式や形式を満たすための“最適解”として、神エクセルがはびこっているのではないだろうか? 神エクセルの非効率性を日々体感している“中の人”だっているはずだ。変えたくても変えられない理由があるのではないか?
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