Adobe Flash Playerの緊急のセキュリティ更新をサーバにインストールできない?:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(78)
Windows Server 2012以降のWindows Serverに「Adobe Flash Playerのセキュリティ更新が来ないのはなぜ?」「手動でもインストールできないのはどうして?」と疑問に思っている管理者の方はいないでしょうか。Adobe Flash Playerが入っていれば更新されるし、入っていなければ当然、更新されません。そして、脆弱性の影響を受けないのだから、入っていないに越したことはありません。
2017年2月の更新は3月に延期されたが、2月22日に緊急1件配布
マイクロソフトの定例の「Patch Tuesday(毎月第二火曜日、日本はその翌日の水曜日)」、2017年2月は何やら重大な問題があったそうで、3月の更新に含める形で延期されました。その影響は、Office 365 ProPlusの更新にも及んでいることから、特定の更新プログラムの問題ではないような気がしていますが、真相はやぶの中です。
- 2017年2月のセキュリティ更新プログラムリリース(日本のセキュリティチーム:マイクロソフト TechNet)
私たちの最優先事項は、お客様のシステムを維持し、保護する際に最良の体験をお客様に提供することです。今月、更新プログラム公開の直前に問題を発見しました。その問題は一部のお客様に影響を与える可能性があり、本日予定していた更新までに解決に至りませんでした。……2017/2/15更新:3月の月例セキュリティ更新プログラム公開(2017年3月14日(米国日付))の一部として更新プログラムを配信する予定です。
- Office 365 client update channel releases[英語](Office TechCenter)
The Deferred Channel release scheduled for February 14, 2017 has been delayed. We apologize for any inconvenience this may cause.(※こちらは2017年2月23日までに正常化したようです)
筆者としては、2月のPatch Tuesdayに予定されていた「Adobe Flash Player」の更新が提供されないことで、他のプラットフォームは更新されているのに「Internet Explorer」と(Windows 10の)「Microsoft Edge」のプラグインの脆弱(ぜいじゃく)性が3月中旬まで放置されるのではどうしたものかと、気になっていました。
しかし、ちょっと遅れましたが、2017年2月22日に「緊急のセキュリティ更新プログラム」として無事配布されました。このセキュリティ更新プログラムで、Internet ExplorerとMicrosoft EdgeのAdobe Flash Playerのバージョンは「24.0.0.221」に更新されます(画面1)。
- Adobe Flash Playerのセキュリティ更新プログラム(4010250)(公開日:2017年2月22日)(セキュリティ TechCenter)
サーバに更新をインストールできないのはなぜ?
ご存じの方も多いと思いますが、Windows 8以降、Internet Explorer(およびWindows 10のMicrosoft Edge)のAdobe Flash Playerは“Windowsに同梱される”形で提供され、Windows Updateを通じて更新されるようになりました。Windows Server 2012以降も同様です。
しかし、サーバ管理者の中には、Windows Server向けのAdobe Flash Playerのセキュリティ更新が、Windows Updateで検出される場合と、されない場合があることに疑問を持っている人もいると思います。
セキュリティ更新が検出されないのは、単に“Adobe Flash Playerのコンポーネントが存在しない”からであって、正常な動作です。全く問題はありません。無理に手動でセキュリティ更新をインストールしようとしても、「この更新プログラムはお使いのコンピューターには適用できません」というメッセージが表示されるだけです(画面2)。
「Windowsに同梱される」と話が違うじゃないかと思うかもしれませんが、Windows Server 2012以降の既定のインストールには、Adobe Flash Playerのコンポーネントは含まれません。
Windows Server 2012/2012 R2では「GUI使用サーバー」のインストールオプションでインストールされた環境で、オプションの機能である「ユーザーインターフェイスとインフラストラクチャ」の「デスクトップエクスペリエンス」がインストールされている場合に、Adobe Flash Playerのコンポーネントがインストールされます(画面3)。
Windows Server 2016では「Windows Server 2016(デスクトップエクスペリエンス)」のインストールオプションでインストールされた環境で、「リモートデスクトップサービス」の「リモートデスクトップセッションホスト」の役割サービスがインストールされている場合に、Adobe Flash Playerのコンポーネントがインストールされます(画面4)。
ちなみに、Windows Server 2016からは「デスクトップエクスペリエンス」の機能の追加や削除ができなくなりました。また、Windows Server 2012やWindows Server 2012 R2では可能だった、GUI環境と「Server Coreインストール」のインストール後の切り替えもできなくなりました。
なお、当然のことですが、Internet ExplorerがインストールされないServer Coreインストールと、Windows Server 2016の「Nano Server」には、Adobe Flash Playerのコンポーネントは含まれないので、Adobe Flash Playerのセキュリティ更新は不要です。
Windows ServerにInternet Explorer用のAdobe Flash Playerがインストールされているかどうかは、コントロールパネルの「すべてのコントロールパネル項目」を開き、「Flash Player(32ビット)」が存在するかどうかで、簡単に判断できます(画面5)。
画面5 コントロールパネルに「Flash Player(32ビット)」があれば、Adobe Flash Playerの脆弱性の影響を受けるため、Adobe Flash Player用のセキュリティ更新が検出される
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 進化を続ける“高機能タスクマネージャー”「Process Explorer」を使いこなせ
本連載では、システム管理やネットワーク管理、トラブル解決に役立つフリーソフト/シェアウェアを紹介します。よく知られたツールを取り上げることもありますが、ちょっとした使い方の具体例を紹介していきます。 - 新しい仲間「Sysmon」はトラブルシューティングの必携ツールになりそうな予感
本連載では「Windows Sysinternals」の便利なツールをいくつか紹介してきました。2014年8月、新しい仲間となる「Sysmon」が追加されたので紹介しましょう。なかなか使えそうなヤツですよ。 - 一瞬で消え去る怪しいウィンドウ、「ウソクライアント(usoclient.exe)」のホントの仕事は?
今回は「Windows 10版スカイフィッシュ」のお話です。Windows 10を使用中、「C:\Windows\System32\usoclient.exe」と書かれたウィンドウが一瞬表示されるのを目撃したことはありませんか。この不思議な現象は何でしょうか。また、怪しげな名前の実行ファイル「usoclient.exe」の正体は……。それでは、調査報告といきましょう。 - なぜ、Windows 10のWindows Updateは嫌われているのか?
前回に続き、今回も「Windows Update」に関する話題です。Windows 10のWindows Updateはなぜ不評なのか、良いところはないのか。そして、現状の問題点について取り上げます。