Red Hatの業績は、新世代アプリケーションプラットフォームの普及を示しているか:ホワイトハースト氏とコーミエ氏に聞いた
Red Hatにおける新興製品群の売り上げの伸びは、新世代のアプリケーションプラットフォームが普及しつつあることを示しているのか。来日したRed Hat CEOのジム・ホワイトハースト氏と、エグゼクティブバイスプレジデントで製品および技術担当プレジデントであるポール・コーミエ氏に聞いた。
Red Hatは2017年10月20日、Red Hat Forum Tokyoを開催した。これを機に来日したCEOのジム・ホワイトハースト(Jim Whitehurst)氏と、エグゼクティブバイスプレジデントで製品および技術担当プレジデントであるポール・コーミエ(Paul Cormier)氏が、同社の事業動向について説明した。
興味深いのは、Red Hatが「アプリケーション開発および新興テクノロジー(Application Development and Emerging Technology)」と呼ぶ分野の売り上げが、大幅に伸びていることだ。2017年第2四半期は、前年同期比で44%成長したという。同社の売り上げ全体に対する比率も、21%になった。この分野に属する主な製品は、コンテナアプリケーションプラットフォームの「Red Hat OpenShift Container Platform」、インフラプラットフォームの「Red Hat OpenStack Platform」、構成自動化ツールの「Red Hat Ansible」だ。
Red Hatは過去数年にわたり、同社のLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」へのビジネス面での依存度を低減するため、新分野を積極的に開拓してきた。その成果が出てきているという点でも印象的だが、OpenShiftが伸びているのであれば、コンテナベースの、新世代アプリケーション基盤が普及し始めているという解釈もでき、技術普及トレンドの点でも意味がある。
そこで筆者は、OpenShift Application Platformの売り上げ成長の文脈を聞いた。
新興製品群は、業種を問わずに導入されている
ホワイトハースト氏は、上記3製品を取り上げ、いずれも多様な業界に幅広く採用されていることを説明した。伝統的に金融機関および通信事業者に強いRed Hatだが、下の図に見られるように、3製品は確かにこれらに極端に偏ることなく採用されている。OpenStackが特に通信事業者の間で積極的に採用されているのは、NFV(Network Function Virtualization)の基盤として使われていることを示している。
新興製品分野において、OpenShiftはどれくらいの比率を占めているのか
新興製品分野において、OpenShiftはどれくらいの比率を占めているのだろうか。ホワイトハースト氏は次のように説明した。
「44%の成長を遂げた主要な理由は、新しいプラットフォーム製品であり、OpenShiftも確実にその一部を成している。OpenShiftについては、世界中で強い引き合いがある」
ではその理由は何なのか。
「理由は2つあると考えている。1つは、当社がKubernetesベースのプラットフォームにおいて、製品を世に送り出した最初のベンダーであり、リーダーであり続けているということだ。多くの企業がKubernetesベースの製品を発表しつつあるが、当社はかなり初期の段階から、Kubernetesに関わっており、既に複数のバージョンを提供している。Kubernetesがメインストリームになっていくに連れて、人々は当社を『選択すべきベンダー』と認識するようになるだろう」
「もう1つは、多くの企業が当社のコンテナプラットフォーム上で、ステートフルなアプリケーションを動かしているということだ。当社ではOpenShift上で幾つかのJava EEアプリケーション用サービスコンポーネントを提供している。また、ストレージのGlusterでも、ステートフルアプリケーションをサポートしている。当社のOpenShiftは、企業が既存のステートフルなJava EEアプリケーションを、近代的な環境で動かす場合には、他よりはるかに使いやすい」
「これら2つの点が、OpenShiftの採用を後押ししている。つまり、Kubernetesの世界におけるリーダーであること、そして私たちは製品を企業のために設計しており、Java EEアプリケーションを稼働しやすくしていること、だ」
OpenShiftはどのような基盤で動いているのか
OpenShiftはどのような基盤で動いているのか。ホワイトハースト氏は、次のように答えた。
「大まかにいって、約3分の1がOpenStack、3分の1がクラウド、残りの3分の1はベアメタルサーバあるいは既存の仮想化環境で動いている」
OpenShiftの採用とコンサルティングサービスの関係は
OpenShiftを採用した企業は、クラウドネイティブなアプリケーション開発などに関するワークショップ/トレーニングや利用支援などのコンサルティングサービスを同時に購入するケースが多いのだろうか。
ホワイトハースト氏の答えは次の通りだ。
「ほとんどの顧客は利用し始めの段階で、何らかのコンサルティングサービスを利用する。それは数日に限ったコンサルティング的な支援であることもあるし、プロジェクト全体を請け負うこともある」
また、コーミエ氏は次のように表現した。
「コンサルティングサービスの観点で見ると、その多くが新プラットフォームを対象としたものに移行している」以前はRHELやミドルウェア単体を対象としたものが多かった。今ではOpenShift、OpenStack、そして管理製品を対象としたものが多い」
「66の案件で100万ドルの売り上げ」の理由
Red Hatは、第2四半期に100万ドル以上の売り上げを66の案件で獲得したと報告している。こうした大規模な取引につながる要因は何なのか。これについても聞いてみた。
ホワイトハースト氏は次のように答えた。
「新興製品群は、率直に言ってLinuxに比べ、マージンが大きい。また、オープンソース製品は、以前はソフトウェアのコストを低減するために利用されたが、今ではイノベーションを加速するために導入されている。私たちは最近、CIOやアプリケーション開発のトップと話すことが増えている。ビジネスに関わることであるため、取引額は自然に大きくなる」
コーミエ氏は、「RHELライセンスの標準価格は年間1000ドルだが、デュアルコアのOpenShiftは1万5000ドルだ。価値にはこれだけの差がある」と補足した。
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