ITについてビジネスの言葉で語るには:Gartner Insights Pickup(43)
情報システム部長などのITリーダーがIT投資について経営陣に打診する場合、どのような説明をすべきか。ビジネスへの貢献を軸に、説得力のある指標を3つのステップで用意すべきだ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
3つのステップでITのビジネス価値を同僚に伝える
経営陣に投資を求める2人のITリーダーのプレゼンテーションを比べてみよう。1人は、「ネットワークのアップグレードが必要になっており、そのために350万ドルの費用がかかる」と述べ、ネットワークの能力増強に必要な機器と部品を全て事細かに説明する。
もう1人は、2018年度に2桁の事業成長が見込まれることから話を切り出し、「市場拡大も予想される中、2018年度はネットワークが限界に達する」との見通しを示した上で、このままではネットワークの能力が事業のボトルネックになるので、そうなる前にIT部門は350万ドルを投じて、ネットワークをアップグレードする必要があると訴える。
前者のITリーダーは経営陣から「なぜそんなに多額の費用がかかるのか」と質問され、後者のITリーダーは「どこにサインすればいいのか」と質問される。
ITリーダー、とりわけ中堅企業のITリーダーは、結果から逆算する発想に切り替えなければならない。「買い手の立場に立って考える必要がある。『ビジネス部門は何が必要か』と自問することが重要だ」。Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるロバート・ネーグル氏は、2017年10月に米国のオーランドで開催されたGartner Symposium/ITxpo 2017でそう語った。
ビジネス部門は、ビジネスを成長させるのに必要な価値をもたらす個々の要素にはさほど関心がない。ところが、ITリーダーはビジネス部門との対話の中で、データセンターやサーバ、ルーターの詳細に踏み込みがちだ。ITリーダーは“ビジネスの話をする”ことを学ぶ必要がある。
ビジネスの言葉で話すには、第1に「顧客とは誰か」を理解し、ITがどのような価値をもたらすかを明確にする必要がある。さらに、その価値を伝える上で重要な指標を体系化することも必要になる。
現場から上がってくるデータを再構成
ITのビジネス価値を表す適切な指標を作成するには、オペレーションからビジネス価値の実現に至るまでのプロセスを追跡し、指標として伝える3つの階層を使用する。
最下位の階層であるオペレーション指標は、IT部門内に関するもので、接続性、セキュリティ、コンプライアンス、ハードウェア、ソフトウェアといった主要分野のパフォーマンスを測定し、向上させるために使われる。
中間階層であるIT管理指標は、ある種ハイブリッドなものだ。オペレーション指標をモニタリングして、ITおよびビジネスリーダー双方にとっての価値を実現する指標へと翻訳して橋渡しをする。
指標階層の最上位を占めるのは、ビジネス成果へのITの貢献を示すために使われるビジネス価値指標だ。
だが、オペレーション指標を単にビジネスの観点から絞り込んで提示しても、ITのビジネス価値はビジネスリーダーには伝わらない。その価値を伝えるには、現場から上がってくる指標データをビジネスの成果と価値の観点から捉え直し、階層を逆転させて再構成する必要がある。
説得力のある指標を3つのステップで用意
ITが実現するビジネス価値を測定し、伝えるための3つのステップは、終着点を意識して進める。
ステップ1.ビジネスにとって重要なことにまず焦点を当てる
ビジネス部門の関心が高い事項を反映した3〜4つ以下の指標を選ぶ。これらは通常、売上高、コスト、リスクに関わるカテゴリーに属する。これらの指標をビジネスに合わせてカスタマイズする。例えば、ヘルスケア企業は、患者のケアをリスクと同じくらい重要視する可能性がある。自社が投資しようとしている分野に着目する。
ステップ2.価値マップを検証する
ビジネスリーダーと時間をかけて協力し、価値指標をビジネスリーダーにとっての優先順位を正確に反映したものにする。価値指標がビジネス目標を表しているか、あるいはカスタマーエクスペリエンス、患者リスク、顧客照会、イノベーションなどについて検討した上で、価値指標を設定したかをチェックする。
ステップ3.IT部門が管理する領域に光を当てる
個々の価値領域の中で、IT部門が管理していて影響を与えられる項目を3つから5つ挙げる。そのためには、例えば、IT部門がコスト削減、リスク管理のために何を行っているかに注目する。収益に関しては、ショッピングカートやCRMシステム、受注処理といった領域からこうした項目を探る。コスト削減に関しては、効率向上や資産最適化、リスク軽減に関しては、データセキュリティやデータ損失防止といった領域から、それぞれ項目を洗い出すとよい。
「これは人による作業になるが、重要な項目に焦点を当てた最小限のアプローチを取るべきだ」(ネーグル氏)
出典:How IT Learns to Talk Business(Smarter with Gartner)
筆者 Chris Pemberton
Writer and marketing strategist
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