デジタルビジネス時代のCIOに求められる10の要件:Gartner Insights Pickup(45)
今後の企業には、デジタルビジネスの成功に必要なIT部門の変革を実行できるリーダーが求められる。優れたCIOが満たすべき10項目。あなたは幾つ当てはまるだろうか。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタルビジネスはCIO(最高情報責任者)の役割をより複雑なものにしている。従来型のリーダーは、デジタルビジネスの成功に必要なIT部門の変革を実行できないかもしれない。IT部門がプロジェクト指向からプロダクト指向に移行し、その役割が進化する中、CIOはビジネス部門とともに学び、ビジネス部門を起点に考えて行動する必要がある。
「これは組織の成熟度の高さや技術の選択の問題ではない。個々のリーダー資質の問題だ。リーダーがメンバーを育成し、組織の成功のために文化を変える必要性への対処が重要だ」。Gartnerのマネージングバイスプレジデントを務めるアルバーロ・メロ氏は、2017年10月にブラジルのサンパウロで開催されたGartner Symposium/ITxpoでそう語った。
デジタルビジネス時代のCIOに求められるのは、特定のスキルセットや技術の知識ではない。以下に挙げる姿勢や行動を取り入れ、積極的に実践することだ。つまり、以下の10項目を満たすことが、優れたCIOの要件ということになる。
1.ITリーダーとしてより、ビジネスリーダーとして行動する
役員会のメンバーとなっているCIOは全体の23%にとどまる。優れたCIOは、IT部門の管理も兼務するビジネスリーダーだ。つまり、CIOは単にビジネス部門からの要望に応えるのではなく、先見性のあるビジネスストラテジストの役割を果たす必要があるということだ。
2.ビジネス指標で評価される
ほとんどのCIOは、売上高との関連で見たIT予算やSLA、システムの可用性といった従来の技術的な指標で評価される。だが、優れたCIOはビジネス成果で評価される。評価基準となるビジネス成果には、コンバージョン率、オンライン訪問者数などが含まれる。こうした指標は、企業が進めるデジタルビジネスの成功度を示している。
3.業界ビジョンを持っている
優れたリーダーは、業界の先行きや自社の将来について非常に明確な意見を持っている。IT部門の外に目を向け、業界について単刀直入に見解を披露する。重要なのは正しい発言をすることではなく、意見を持つことだ。
4.必要なスキルを持った人材をIT部門の外部で探す
優れたCIOは必要に応じて、人事からマーケティング、物流まで、ビジネスのあらゆる領域で目的のスキルを持った人材を探す。求める人材の所属部署は気にせず、スキルセットの要件を満たしているかどうかに注目する。場合によっては、会社の垣根を越えたサービスプロバイダーや新興企業、大学、自社のエコシステムを構成する企業にも目を向ける。
5.感情的知性が高く、対人スキルを大事にする
感情的知性(心の知能指数:EQ)は重要だが、注意を払う人はほとんどいない。自らを知り、他者および他者との接し方を理解することが肝心だ。
6.ビジネス部門との対話に長けたバイモーダルリーダーである
バイモーダルリーダーは学習と探求を重視する。優れたCIOは全てを厳密に管理しようとするのではなく、ある一定レベルの曖昧さを受け入れようとする。ビジネス部門の役員とともに、結果から謙虚に学び協力して教訓を導き出す。
7.“命令し、管理する”よりも、コーチングやビジョナリーリーダーシップスタイルを適用する
ITリーダーの64%は“命令し、管理する”リーダーだ。だが、イノベーションやインスピレーションに関しては、そうしたリーダーシップは機能しないという問題がある。ビジョナリーリーダーシップの発揮を目指し、良きコミュニケーターとなり、部下に刺激を与えてコーチングを行い人材の育成に力を注ぐことで、IT部門がチームや組織として進化する。
8.戦略の一環として、何事にも対応できる文化を推進する
優れたCIOはチェンジリーダーでなければならず、リーダーシップスタイルの一環として変化を受け入れる必要がある。
9.イノベーションではなく、まずイノベーターにフォーカスする
アイデアやプロジェクトよりも人的側面にフォーカスする必要がある。これは、プロジェクトを優先的に実行することよりも、人材に重きを置くということを意味する。優れたリーダーは、適切な人材の選択に深く関与する。
10.価値を最も重視する考え方に立って、人々が自分の価値観に従って行動する“目的エコノミー(purpose economy)”の中で生み出される幅広い便益を認識する
自社の商品やサービスが、人々やその周囲のコミュニティーにどのような影響を与えることができるかを自問する。そのためにはまず、自分にとって会社で働く価値や理由は何かを考えてみるとよい。それらはこの自問を行う上で重要なヒントになるからだ。人々は商品の特徴だけを理由に商品を買うのではなく、その提供元が持つ価値観に共感して買っている。
出典:Are You A Master CIO?(Smarter with Gartner)
筆者 Kasey Panetta
Brand Content Manager at Gartner
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